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第二章 最果ての星
05 モニカ・サクラ・ヤマダの宮仕え生活 下
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後宮の女官には勤続年数、仕事の内容等により一等から六等までの等級があり、それぞれ給与や待遇が違っている。
モニカは一年目の女官なので、六等女官である。六等女官は後宮内の女官用宿舎の10平米ほどの個室に住む。トイレ風呂付なので、一般の住み込み奉公人に比べて恵まれているものの、食堂の食事は品数も量も少ない。幸いモニカには実家からの支援があった。食事が足りない時は自室でレトルトの食品を食べた。時には同僚を招いて父の所有する百貨店の地下食品売り場で人気の菓子を食べながらおしゃべりに興じることもあった。
三年勤続して五等になると部屋は広くなり、食堂の食事の質はかなりよくなる。肉が毎日食べられる。そうなる前に食事や待遇への不満による退職や、後宮の男性役人に見初められての結婚退職で約三割の女官がいなくなっている。
十年勤続、あるいは功績があれば四等に昇進できる。この段階で残っているのは当初採用の一割から二割。ほとんどが結婚退職である。
以降は仕事の能力によって昇進が決まる。
女官長は唯一の一等女官であり、大臣級の給与と待遇が与えられる。住まいは後宮内だが、宮殿の外にも屋敷を与えられる。
現在の女官長カサンドラ・スアレスは女官長就任12年目。清廉潔白と噂され、後宮の誰もが尊敬する存在だった。皇帝の信任厚いカサンドラには宮内省大臣も一目おいていた。彼女に文句を言うのは七兄弟だけである。
六等女官モニカの仕事は給仕である。貴人の食事の際に厨房から運ばれてきた料理を上役の五等女官の指示に従ってテーブルまで運ぶのが役目である。ただし皇帝陛下の給仕は四等女官の仕事だから、モニカの出る幕はない。
この日は元々皇帝一人だけの晩餐だったので、四等女官及び夜番の女官で十分だった。ところが、急に第八皇子が後宮で皇帝と食事をするということになり、昼番のモニカまで残業をすることになったのである。
モニカはこれまでゲバラ侯爵夫人や七人の兄弟、カルロス・グラシア皇子に給仕をしている。サカリアス皇子の給仕は初めてだった。
直接の上司である五等女官フランカはモニカと同僚のコンチャを呼んで注意事項を説明した。
「第八皇子殿下は軍人ゆえ、他の殿下に比べて大食です。公の晩餐ならば他の方々と同じ量の食事になりますが、今回は私的な晩餐です。陛下の指示により一般的な晩餐よりも大型の食器を使用し、料理も倍の量となります。心してかかりなさい」
今まで聞いたことのない注意事項だった。
が、皿が重くなるとわかっただけでよかった。知らなければ大変だった。
さらにフランカは続けた。
「殿下は女性に素っ気ない態度をとられます。不満があるわけではないので心配せぬように。もし本当にご不満があれば直接その場で仰せになります」
そのほうがいい。A皇子のように女と見れば声を掛けるよりはましだった。だが、殿下は26である。独身である。少しは女性に優しくできそうなものだが。
「おそれながら何故、殿下は女性に素っ気ないのですか」
「詳しくは存じませんが、私が思うに、軍隊は男性が多く、中でも男性の多いH・F・M部隊のパイロットをなさっていますからでございましょう。あまり女性に慣れておいでにならないのでしょう」
モニカの母方の従兄は軍人だが、女性に素っ気ないとは聞いたことがない。どうも納得がいかない。
とはいえ、これは仕事である。個人的感情を離れて集中しなければならない。皿の重さはいつも以上なのだ。
モニカとコンチャは厨房に行き、第八皇子専用の皿を持たせてもらった。
一回り大きくずっしりと重かった。これにいつもの倍の量の料理が載るのだ。
什器を担当する女官は言った。
「これは陛下が特別に殿下のために作らせたものです。頑丈なセラミックで作成し念のために同じものを五枚ずつ用意してありますが、できるだけ落とさぬように」
陛下が食器を作らせるなんて、陛下は第八皇子を可愛がっておいでなのだとモニカは思った。やはり皇配ラウル・エルナンド公の血を引かれるからなのだと。
これは粗相はできぬとモニカもコンチャも気を引き締めた。
晩餐前の6時過ぎに、殿下は後宮に現れた。
厨房の隣の間に控えていたモニカ達の耳に女官らの声が聞こえた。
「またお体が大きくなられたみたい」
「大胸筋鍛えてらっしゃるのね」
「お湯殿の係になりたい」
筋肉大好きの先輩女官たちのときめきが怖かった。一体どれくらい大きい方なのか。
すぐに皇帝も後宮に入った。
食前酒の係が動き出した。今日の食前酒はウメ酒である。味見係の老女たちが今日使う瓶の酒をまずは味見をし、異常がなければ出されるのだ。
異常なしということで食前酒が食事の間で振舞われた。
料理の味見も始まった。老女たちは味見というには多いのではないかと思われる量を口にした。
異常がないと確認され、給仕が始まった。
モニカは軍服姿の殿下の斜め後ろの姿を見た。確かに胸板が厚そうだった。横から見ると分厚かった。顔を見ることは許されないので俯いて給仕をする。
宮殿では晩餐のメニューの呼び方はかつて祖先が暮らしていたという故郷の星のフランスという国での呼び方が用いられている。
アミューズ、オードブルの皿は少し大きいくらいで、楽だった。
だが、パン、スープと次第に重くなってきた。
魚料理のポワソンを見た時、モニカは目が眩みそうになった。皇帝のは切り身のムニエルだが、皇子のものはほぼ丸ごと一匹分だった。かけられているソースの量も三倍余りだった。
モニカは慎重にワゴンから皿を持ち上げた。落としてはならないと思ったが、腕が震えた。
突然背後から腕が伸びたかと思うとすっと軽くなった。
「え?」
「後は俺がする。貴官はワゴンを運んでくるだけでよい」
低く響きのよい声だった。皿を片手で持っているのは殿下だった。
「おそれおおうございます」
モニカは声の大きさに自分で驚いてしまった。
「皿を落として料理が台無しになっては困る。俺はマトウダイが好物なんんだ」
たぶん本当の理由は違う。モニカに粗相をさせないためだ。
モニカは思う。アマンダへの苛めを止めたこの殿下は情け深い方なのだ。女性に素っ気ないなんて見かけだけだ。
だが、緊張の余り、それを言葉にできなかった。
「おそれいります」
それしか言えず、ワゴンを押して食事の間を出た。
控えの間に戻ったモニカはわなわなと震えていた。殿下に皿を持たせるなんて、皇帝陛下も御覧になっていたというのに。
ソルベを運んだコンチャが戻って来る頃には落ち着きを取り戻した。
アントレの鹿のソテーを運ぶと、またもサカリアスは皿を持った。
アントルメのケーキとフルーツの盛り合わせをコンチャと運んだ時もサカリアスはワゴンから大皿を取った。
そこまでがモニカとコンチャの仕事だった。
コーヒーと焼き菓子は別室で四等女官が運ぶことが決まっている。
「どうしよう、殿下に皿を持たせてしまった……」
「まずいわよね」
控室でモニカとコンチャは顔を見合わせた。
味見の老女は言った。
「昔もそういうことはあったが、罰せられた女官はおらぬよ。安心おし」
本当にそうならいいのにと二人は顔を見合わせた。
いくら殿下が情け深い方でも皇帝陛下は違う。女官の失態を見ていないようで見ている。先週、ベッドのシーツが3センチずれていることに気付き女官長に係を替えるように命じていた。
二人が絶望的な表情でいるところへフランカが来た。なんとなく顔色が悪い。
「モニカ、何も言わずについて来て」
「え?」
きっと皇帝陛下のお叱りだ。いや、女官長だ。
コンチャが泣きそうな声で行ってらっしゃいと背を押した。
泣きたいのは私だとモニカは思う。養成学校での苦労が水の泡だ。採用されて一年たたないのに退職勧告だなんて。両親になんと言えばいいのか。
モニカはとぼとぼとフランカの後をついて行った。それでも後宮の奥に向かっているのがわかった。奥には皇帝陛下の部屋があるはずだった。陛下じきじきのお叱りだろうか。そんなことになったら女官の歴史に残るのではないか。
「ここよ」
そう言われて顔を上げると、中庭に面した渡り廊下だった。道理でさっきから寒いはずである。
「あとで迎えをよこします」
フランカはそう言って、立ち去った。
モニカは一人にされ慌てて周囲を見回した。
大きな影が中庭からこちらへ向かって来た。
「ええっ!」
「モニカ・サクラ・ヤマダ、貴族女学校初等科5年1組だったな」
サカリアス殿下その人だった。
「は、はい」
驚きの余り、電話の礼をすることも忘れていた。あの電話以降、アマンダはアルマ達三人組に苛められなくなったのだ。
「女官長に名を聞いてわかった。アマンダの級友だな」
「はい」
「アマンダの居場所を知らないか?」
「いいえ。新学期が始まっても出て来ないし、先生方は何もおっしゃらないし。父はアギレラ大公がアゴスト少将の一件に関わったからと申してました」
モニカは知っていることをすべて話した。
「馬鹿な! 少将の一件は濡れ衣だ」
モニカにとって初めて聞く話だった。
「濡れ衣でアゴスト少将は死罪に?」
「ああ。詳しい話はできぬが。だから大公にも罪はないのだ。心当たりはないか」
「さように仰せられても。何の連絡ももらっていないのに」
「なんたることだ」
「何故、殿下はアマンダを探しているのですか」
モニカは尋ねた。電話をもらった時からずっと抱いていた疑問があった。その答えがわかるかもしれないと思った。
「それは……」
サカリアスの顔に軍人らしからぬとまどいの色が見えた。
「わからん」
「は?」
「わからん。が、スーシェ基地の部屋の窓から月を見たら、アマンダのことを思い出したのだ。一体アマンダは何色の月を見ているのか気になって仕方なかった」
月の色? なんだかわかりにくいが、要するにそういうことかとモニカは察した。
モニカは一年目の女官なので、六等女官である。六等女官は後宮内の女官用宿舎の10平米ほどの個室に住む。トイレ風呂付なので、一般の住み込み奉公人に比べて恵まれているものの、食堂の食事は品数も量も少ない。幸いモニカには実家からの支援があった。食事が足りない時は自室でレトルトの食品を食べた。時には同僚を招いて父の所有する百貨店の地下食品売り場で人気の菓子を食べながらおしゃべりに興じることもあった。
三年勤続して五等になると部屋は広くなり、食堂の食事の質はかなりよくなる。肉が毎日食べられる。そうなる前に食事や待遇への不満による退職や、後宮の男性役人に見初められての結婚退職で約三割の女官がいなくなっている。
十年勤続、あるいは功績があれば四等に昇進できる。この段階で残っているのは当初採用の一割から二割。ほとんどが結婚退職である。
以降は仕事の能力によって昇進が決まる。
女官長は唯一の一等女官であり、大臣級の給与と待遇が与えられる。住まいは後宮内だが、宮殿の外にも屋敷を与えられる。
現在の女官長カサンドラ・スアレスは女官長就任12年目。清廉潔白と噂され、後宮の誰もが尊敬する存在だった。皇帝の信任厚いカサンドラには宮内省大臣も一目おいていた。彼女に文句を言うのは七兄弟だけである。
六等女官モニカの仕事は給仕である。貴人の食事の際に厨房から運ばれてきた料理を上役の五等女官の指示に従ってテーブルまで運ぶのが役目である。ただし皇帝陛下の給仕は四等女官の仕事だから、モニカの出る幕はない。
この日は元々皇帝一人だけの晩餐だったので、四等女官及び夜番の女官で十分だった。ところが、急に第八皇子が後宮で皇帝と食事をするということになり、昼番のモニカまで残業をすることになったのである。
モニカはこれまでゲバラ侯爵夫人や七人の兄弟、カルロス・グラシア皇子に給仕をしている。サカリアス皇子の給仕は初めてだった。
直接の上司である五等女官フランカはモニカと同僚のコンチャを呼んで注意事項を説明した。
「第八皇子殿下は軍人ゆえ、他の殿下に比べて大食です。公の晩餐ならば他の方々と同じ量の食事になりますが、今回は私的な晩餐です。陛下の指示により一般的な晩餐よりも大型の食器を使用し、料理も倍の量となります。心してかかりなさい」
今まで聞いたことのない注意事項だった。
が、皿が重くなるとわかっただけでよかった。知らなければ大変だった。
さらにフランカは続けた。
「殿下は女性に素っ気ない態度をとられます。不満があるわけではないので心配せぬように。もし本当にご不満があれば直接その場で仰せになります」
そのほうがいい。A皇子のように女と見れば声を掛けるよりはましだった。だが、殿下は26である。独身である。少しは女性に優しくできそうなものだが。
「おそれながら何故、殿下は女性に素っ気ないのですか」
「詳しくは存じませんが、私が思うに、軍隊は男性が多く、中でも男性の多いH・F・M部隊のパイロットをなさっていますからでございましょう。あまり女性に慣れておいでにならないのでしょう」
モニカの母方の従兄は軍人だが、女性に素っ気ないとは聞いたことがない。どうも納得がいかない。
とはいえ、これは仕事である。個人的感情を離れて集中しなければならない。皿の重さはいつも以上なのだ。
モニカとコンチャは厨房に行き、第八皇子専用の皿を持たせてもらった。
一回り大きくずっしりと重かった。これにいつもの倍の量の料理が載るのだ。
什器を担当する女官は言った。
「これは陛下が特別に殿下のために作らせたものです。頑丈なセラミックで作成し念のために同じものを五枚ずつ用意してありますが、できるだけ落とさぬように」
陛下が食器を作らせるなんて、陛下は第八皇子を可愛がっておいでなのだとモニカは思った。やはり皇配ラウル・エルナンド公の血を引かれるからなのだと。
これは粗相はできぬとモニカもコンチャも気を引き締めた。
晩餐前の6時過ぎに、殿下は後宮に現れた。
厨房の隣の間に控えていたモニカ達の耳に女官らの声が聞こえた。
「またお体が大きくなられたみたい」
「大胸筋鍛えてらっしゃるのね」
「お湯殿の係になりたい」
筋肉大好きの先輩女官たちのときめきが怖かった。一体どれくらい大きい方なのか。
すぐに皇帝も後宮に入った。
食前酒の係が動き出した。今日の食前酒はウメ酒である。味見係の老女たちが今日使う瓶の酒をまずは味見をし、異常がなければ出されるのだ。
異常なしということで食前酒が食事の間で振舞われた。
料理の味見も始まった。老女たちは味見というには多いのではないかと思われる量を口にした。
異常がないと確認され、給仕が始まった。
モニカは軍服姿の殿下の斜め後ろの姿を見た。確かに胸板が厚そうだった。横から見ると分厚かった。顔を見ることは許されないので俯いて給仕をする。
宮殿では晩餐のメニューの呼び方はかつて祖先が暮らしていたという故郷の星のフランスという国での呼び方が用いられている。
アミューズ、オードブルの皿は少し大きいくらいで、楽だった。
だが、パン、スープと次第に重くなってきた。
魚料理のポワソンを見た時、モニカは目が眩みそうになった。皇帝のは切り身のムニエルだが、皇子のものはほぼ丸ごと一匹分だった。かけられているソースの量も三倍余りだった。
モニカは慎重にワゴンから皿を持ち上げた。落としてはならないと思ったが、腕が震えた。
突然背後から腕が伸びたかと思うとすっと軽くなった。
「え?」
「後は俺がする。貴官はワゴンを運んでくるだけでよい」
低く響きのよい声だった。皿を片手で持っているのは殿下だった。
「おそれおおうございます」
モニカは声の大きさに自分で驚いてしまった。
「皿を落として料理が台無しになっては困る。俺はマトウダイが好物なんんだ」
たぶん本当の理由は違う。モニカに粗相をさせないためだ。
モニカは思う。アマンダへの苛めを止めたこの殿下は情け深い方なのだ。女性に素っ気ないなんて見かけだけだ。
だが、緊張の余り、それを言葉にできなかった。
「おそれいります」
それしか言えず、ワゴンを押して食事の間を出た。
控えの間に戻ったモニカはわなわなと震えていた。殿下に皿を持たせるなんて、皇帝陛下も御覧になっていたというのに。
ソルベを運んだコンチャが戻って来る頃には落ち着きを取り戻した。
アントレの鹿のソテーを運ぶと、またもサカリアスは皿を持った。
アントルメのケーキとフルーツの盛り合わせをコンチャと運んだ時もサカリアスはワゴンから大皿を取った。
そこまでがモニカとコンチャの仕事だった。
コーヒーと焼き菓子は別室で四等女官が運ぶことが決まっている。
「どうしよう、殿下に皿を持たせてしまった……」
「まずいわよね」
控室でモニカとコンチャは顔を見合わせた。
味見の老女は言った。
「昔もそういうことはあったが、罰せられた女官はおらぬよ。安心おし」
本当にそうならいいのにと二人は顔を見合わせた。
いくら殿下が情け深い方でも皇帝陛下は違う。女官の失態を見ていないようで見ている。先週、ベッドのシーツが3センチずれていることに気付き女官長に係を替えるように命じていた。
二人が絶望的な表情でいるところへフランカが来た。なんとなく顔色が悪い。
「モニカ、何も言わずについて来て」
「え?」
きっと皇帝陛下のお叱りだ。いや、女官長だ。
コンチャが泣きそうな声で行ってらっしゃいと背を押した。
泣きたいのは私だとモニカは思う。養成学校での苦労が水の泡だ。採用されて一年たたないのに退職勧告だなんて。両親になんと言えばいいのか。
モニカはとぼとぼとフランカの後をついて行った。それでも後宮の奥に向かっているのがわかった。奥には皇帝陛下の部屋があるはずだった。陛下じきじきのお叱りだろうか。そんなことになったら女官の歴史に残るのではないか。
「ここよ」
そう言われて顔を上げると、中庭に面した渡り廊下だった。道理でさっきから寒いはずである。
「あとで迎えをよこします」
フランカはそう言って、立ち去った。
モニカは一人にされ慌てて周囲を見回した。
大きな影が中庭からこちらへ向かって来た。
「ええっ!」
「モニカ・サクラ・ヤマダ、貴族女学校初等科5年1組だったな」
サカリアス殿下その人だった。
「は、はい」
驚きの余り、電話の礼をすることも忘れていた。あの電話以降、アマンダはアルマ達三人組に苛められなくなったのだ。
「女官長に名を聞いてわかった。アマンダの級友だな」
「はい」
「アマンダの居場所を知らないか?」
「いいえ。新学期が始まっても出て来ないし、先生方は何もおっしゃらないし。父はアギレラ大公がアゴスト少将の一件に関わったからと申してました」
モニカは知っていることをすべて話した。
「馬鹿な! 少将の一件は濡れ衣だ」
モニカにとって初めて聞く話だった。
「濡れ衣でアゴスト少将は死罪に?」
「ああ。詳しい話はできぬが。だから大公にも罪はないのだ。心当たりはないか」
「さように仰せられても。何の連絡ももらっていないのに」
「なんたることだ」
「何故、殿下はアマンダを探しているのですか」
モニカは尋ねた。電話をもらった時からずっと抱いていた疑問があった。その答えがわかるかもしれないと思った。
「それは……」
サカリアスの顔に軍人らしからぬとまどいの色が見えた。
「わからん」
「は?」
「わからん。が、スーシェ基地の部屋の窓から月を見たら、アマンダのことを思い出したのだ。一体アマンダは何色の月を見ているのか気になって仕方なかった」
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