愛を食べる

21 憧れのザッハトルテ（写真あり）

「17　見るだけのお菓子」で紹介した今田美奈子先生の「貴婦人の愛したお菓子」。
この本の中でひときわ印象深いのはオーストリアの宰相メッテルニヒゆかりのザッハトルテ。
デメル菓子店に対して商標使用と販売差し止めを求めた7年間の裁判の結果、オリジナルの名を死守したザッハトルテの逸話には驚いた。
そのザッハトルテを元祖ザッハーホテルに注文したというのが今回のお話。



昨年の夏にTwitterを始めた。
自分で呟くよりも他の人の呟きを読むのが面白かった。
なにしろ、興味ある分野について様々な情報が入って来るのだから。
その中で最近目を引いたのはオーストリア政府観光局のツイート。
ザッハーホテルのオリジナルザッハトルテが6月8日まで、60ユーロ以上の購入で送料無料！
オーストリアから日本への送料がどれくらいかかるかわからないが、荷物の重さによっては国内でも北海道から九州・沖縄への送料は数千円かかるから、相当高額になると思われる。
それが無料！
ちょうど高瀬理恵先生の「ヴィエンナ・コネクション」を読んだ後。
漫画には登場しないが、舞台になっているウィーンゆかりのケーキ。
それに今田美奈子先生の「貴婦人が愛したお菓子」で知った時からの憧れのケーキ。
この機会を逃す手はない！



初めての海外通販で、注文を終えるまでが結構難儀だった。
まず注文サイトがドイツ語と英語対応なので、住所の入力の仕方が違う。
ブラウザでサイトの内容を日本語に翻訳できるが、入力は日本語ではできない。
半角英数字で入力する。
その前に、荷物の追跡ができるようにオンラインショップにアカウントを登録。
（登録しなくてもゲストとして注文できる）
ユーザーネームとパスワードが必要になる。



その後、商品を選択。
60ユーロ以上送料無料だが、三種類の大きさがあるザッハトルテはどれも60ユーロ以下。
そこで紅茶、コーヒー、ホットチョコレート等他の商品を選ぶことに。
マグネットやクマのぬいぐるみなどもあったけれど、今回は初めてなので、ホットチョコレートだけ選んだ。



次は送り先の氏名と住所。
これも半角英数字で。
中学校の英語の時間に習った手紙の住所の書き方の要領で、住所の最後の町名番地から先に。
（住所の書き方は検索すると見つかるので、そちらを参考にするといいかも）
さらに支払いの方法（オンライン銀行振込かクレジットカードか）を選ぶ。
日本と違って着払いやコンビニ払い、なんとかpay払いはない。
私はここでしくじってオンライン銀行振込を選んでしまった。
銀行の外貨口座で支払おうと思ってのこと。
ところが、よく調べたらクレジットカードを選ばないとできないことがわかった。
注文しても決済できないし、決済方法の変更ボタンもないので、ここでキャンセルすることに。
でも、キャンセルボタンがない！
注文はいつまでもPending（保留中）。
意を決してキャンセルのお願いメールを英語で書いた。
すると自動回答のメールが届き、翌日（現地時間）キャンセルになっていた。
本当にありがたい。申し訳ない。
送料無料キャンペーンで注文が多くて忙しいはずなのに、お手数をかけてしまった。
ウィーンと日本には時差が7時間（サマータイム中）ある。
こちらが昼だと、あちらは夜から早朝。
日本の通販ほど素早い反応はないだろうと思っていたけれど意外に早かった。



さて気持ちを切り替え再度注文に挑戦。
今度はクレジットカードを選んだのでうまくいくかと思ったら、なぜかできない。
仕方ないので別のクレジットカードで決済手続きをしたらうまくいった。
後で調べると、外貨口座から引き落とすには認証パスワードを設定しなければならないのに、設定してなかった。
そういえば外貨口座のユーロを海外で使うことなんてないと思っていたんだった。
不覚！
クレジットだと日本円で払うことになるので円安の今はちょっと損した気分である。
ともあれ決済できてしまったので、キャンセルするのもなんだかと思い、そのまま注文続行した。
注文したのは土曜日（現地では夜中）。
発送は火曜日（現地時間）。



ショップにアカウントを登録していたので、荷物の追跡ができる。
オーダー情報からリンクをたどると輸送業者のDHLのサイトで荷物の情報が追跡できた。
火曜の夕方に出荷されウィーンを出てスロバキアのブラチスラバへ。
そこから水曜日未明にドイツのライプツィヒに到着。
お届け予定日は翌週の水曜日となっていた。
果たして到着はいつになるのか。
ケーキは大丈夫だろうか。
注文した皆様のツイートを見ると、しっかりした梱包の上、ケーキそのものも頑丈らしく、あまり心配ないようだった。
大体、土台のケーキがバターケーキだから日持ちがする。
今田先生の本に掲載されていたレシピを見ると土台となるザッハ・マッセは
薄力粉と強力粉それぞれ75グラムに対してバター165グラム、砂糖165グラム、スイートチョコレート165グラム、卵は6個。
分量を見るだけで濃厚なケーキという感じがする。
たぶん日持ちもするだろう。
そう簡単に壊れたりするケーキではなさそう。



水曜日の夜確認すると、その日の夜に香港の通関に。
ということはライプツィヒから香港に航空機で飛んだということか。
後で調べると、ライプツィヒの国際空港は貨物空輸で国際的に重要な位置を占めるとか。
海外通販も勉強になる。
木曜日朝には香港のDHL支店に到着し、午後、搬送処理・通関許可となっていた。
1時間半後にはDHL支店を出発。
ここから日本へ向かうということらしい。



金曜日未明、通関手続きで大阪に。
香港から大阪へ空輸されたということか。
いよいよ国内に。
うまくいけば週末には到着するかもとワクワク。
8時半には通関許可が出て搬送処理中に。
そして、夕方16時48分、大阪を出発した！



土曜日の朝、荷物は九州の玄関口の都市に到着。
4時間余り後、国内配送業者に引き渡された。
ネットを見ると国内では佐〇急便が配送してるらしい。



そして日曜日の朝10時前、確認すると
昨日と同じ「国内配送業者への荷物引渡し完了」の文字が。
あれっと思ってたら
玄関のチャイムが鳴った。
なんだろうと思ったら、来た！
火曜日（現地）に送られたものが
日曜日の午前に到着とは。
海外からの発送といっても結構早く着くものだ。
佐〇の送り状の番号を調べたら
二回目の「国内配送業者への荷物引渡し完了」は地元の営業所への引き渡しだった。
ケーキは緩衝材と木箱に守られ無傷だった。
そしてずっしりと重かった。
ケーキとホットチョコレートの入った箱の重さは2.18kg！
下はその時の写真。
左上は箱を開けたところ。緩衝材が入っていた。
右上は緩衝材を取った後。白い封筒にはカードが入っていた。

左下は包装されたケーキ。
右下は包装を解いて木箱を開いたもの。



さっそく三時のおやつに家族で食べた。
夫曰く「胃をまくじりそうな（壊しそうな）甘さ」
そう甘い。
日本人の好む甘さとはどこか違う甘さ。
ストレートに甘いのだ。
ヨーロッパの甘さだった。
そういえば「ヴィエンナ・コネクション」Band1の巻末の幕間で作者が書いていた。
ウィーンは京都に似ていると。
ザッハトルテは1832年に生まれている。
日本で言えば江戸時代の天保三年。
そんな時代のお菓子なら現代日本人の味覚に多少合わないのも当然。
むしろ江戸時代の京都あたりの老舗の羊羹に似ていてもおかしくない。
羊羹同様どっしりとしているし。
そうか、ザッハトルテはヨーロッパの羊羹なんだ！
たぶん好きな人は好きだし、苦手な人は甘過ぎと感じるかもしれない。
でも、それがヨーロッパの古都ウィーンの老舗の味なのだと思う。



さて、そんな甘いザッハトルテだが、不思議なことに生クリームを添えると、あら不思議まろやかな味に変わる。
到着した翌日に甘さ控えめの生クリームを添えて食べた夫も私も、あ、これいけると思った。
しかも、ケーキ本体もなんとなくあんずのジャムが内部にしみ込んで少ししっとりしてきたような。
どうやら時間と生クリームががケーキの味に深みを与えるらしい。
一度に大量に食べられないので、少しずつ深まる味を感じながら食べたいと思う。
（そんなところも羊羹ぽい）

憧れのお菓子、ザッハトルテ。
少しだけ思ってたんと違ったのは、高温多湿の日本で食べたからかもしれない。
たぶんウィーンに行って食べたらもっとおいしいはず。
（沖縄そばもさんぴん茶も沖縄だとおいしかったし）
とはいえ、初めての海外通販。
ドキドキワクワクがあった。
ショップの対応もよかった。
到着も早かった。
ザッハトルテの入った木箱も再利用できそうだし。
やっぱりお菓子はいい。
笑顔と幸せをもたらしてくれるのだから。
長く愛されてきた歴史とともに、味わいたい。