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第二章 初恋(正徳二年~正徳三年)
38 旅支度
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城に帰った新右衛門を待っていたのは参勤交代の支度と師匠らとの別れの茶会の準備であった。
御分家の啓哲とその娘壱姫までも呼ばなければならないというのは、うんざりしてくるのだが、親戚づきあいをいい加減にはできない。
満津の今後を考えると、沢井家だけでなく、他の家とも友好的な関係を持たねばならない。満津が懐妊すればいいが、もしそうでない場合の満津の立場は危うい。
その時に一番強力な後ろ盾になるのは、御分家なのだ。臣下の沢井家だけでは無理だった。梅芳院とていつまでも元気でいるわけではない。
竹之助を婿にすることで貧乏くじを引いたと思っている御分家には心を込めて接したかった。
だが、茶会の予定日前日になって、御分家から断りの使いが来た。
身内に不幸があったのだと言う。一体誰か尋ねても、使いの者を取り付いだ小姓ははっきりと言わない。
おかしいと思い、夕食の時に殿様に尋ねた。
殿様は別の方面から御分家の不幸を耳にしていた。
「亡くなられたのは啓幸殿だ」
「たかゆき殿とはどのような方なのですか」
新右衛門は啓哲しか知らない。
「今の当主の兄でな。七年、いや八年前に玄龍寺の預かりとなったのだ」
「どういうわけでございますか」
殿様はそなたが知らないのは無理もないと言った。
「実はな、啓幸は謀反を企てたのだ。自分が本家を継ごうとしたのだ」
八年前といえば、七つの頃である。物心のついた頃だが、そんな事件があったとは知らなかった。
「余はその頃、江戸在府中でな、城代家老から詳しい経緯を知らされた。が、そなたが知らずともよいことだ。啓幸殿の企みは露見し、玄龍寺の座敷牢に押し込められたのだ。で、このたびはそこで自裁されたとのこと」
自裁。自ら命を絶ったということだ。
よほど座敷牢はつらい場所だったのだろうと新右衛門は思った。そんな場所に八年もとは。
「啓哲様は兄上が亡くなっておつらいことでしょうね」
殿様はそうでもないだろうとわかっていたものの、曖昧にうなずいた。あの兄弟は決して仲がいいとは言えなかった。
「御分家としては公にしたくない話だ。そなたはこの件に関してはあまり口出しせぬがよい」
殿様はそう言ってこの話を打ち切った。
殿様は知っていた。新右衛門が卯之助と呼ばれた頃に、啓幸の陰謀に巻き込まれたことを。
だが、それを新右衛門が知る必要はなかった。啓幸はもう死んだのだ。御分家にとって体よく厄介払いができたというところなのだ。
ちなみに殿様の耳に入った情報では啓幸に殉じて太平坊という玄龍寺に昨年入山した若い僧侶も亡くなったということだった。殉死は法度だが、太平坊はすでに実家の守倉家からも勘当された身であるから家族は罰しないということになった。
そういったことはあったものの、師匠らを呼んだ茶会は御殿の離れにある茶室で無事に行われた。
招かれた城代家老の川合平右衛門は紅葉の宴の能の話を持ち出し、あの時「花月」を四番能に選んだのはよい趣向であったと語り、同席した殿様もうなずいたのだった。
「花月」のあらすじは英彦山の麓に住む男が七歳の子が行方不明になったのをきっかけに出家し、諸国修行の旅に出て清水寺へ参詣した折に花月という曲舞をする少年と出会い、それが天狗にさらわれた息子だと判明し、名乗りをあげ共に仏道修行の旅に出るというものである。
「若君はまさしく花月。これより殿とともに江戸に旅立つのですから」
能に詳しい平右衛門でなければへつらいとしかとられかねないような言葉だった。
自分は花月のような芸達者ではないのだがと、新右衛門はこそばゆいような気持ちになった。
行事の合間には、城内表御殿の一室を借りて、江戸在府経験者による初任者への指南が行われた。
新右衛門もそれに加わった。殿様の命令である。
若君様参加ということで緊張の度合いが高まったのであったと書きたいところであるが、実際はそうではなかった。
なぜなら、受講者は皆若く、新右衛門とともに水無月祓えや雷土山登山に参加した者も多かったのだ。
惣左衛門はもちろん、平太や卯之吉、川合平兵衛までいた。さらには、白石村の勘平もいた。
勘平は村越仁斎からの推薦で江戸で儒学者について勉強することになったのだ。一人年上の勘平だが、江戸に行くのは勿論、香田角から出るのも初めてで、彼が一番興奮していた。
気心の知れた者同士の集まりとあって、新右衛門はこの集まりが楽しみだった。
ところで、なぜ初任者に対して指南が行なわれるのかというと、これは香田角を出てからの無用の面倒を避けるためである。
無論、行列奉行から道中法度の触れはあるものの、それだけでは初めて江戸に行く者には不十分だった。
なぜなら領地や大坂蔵屋敷、江戸屋敷の中は家中掟が通用するが、それ以外は通過する各藩や町奉行の管轄だった。家中の掟は通用しないのだ。
同僚、あるいは他藩の武士との喧嘩沙汰があれば途中で行列が滞ることもある。その際の延泊の費用は馬鹿にならない。また喧嘩を起こした地を治める領主への遠慮もある。
とにかくありとあらゆる面倒を避け、無事に江戸まで旅をすること、それだけのためにあれこれと細かい注意事項が指導された。
たとえば、言葉。
九州の山奥の人間の話す言葉は外ではそのままでは通用しない。抑揚、速度、語彙、すべてが違う。まずそれが面倒事の元になる。
というわけで外に出たら、できるだけゆっくりと話すこと、謡をやっている者は謡の言葉で話すこと、そうでない場合はとにかく口をはっきり開けてわかりやすく話すことをまず教えられた。
他にもよその食べ物に文句を付けるな、地元の女子どもをからかうな、拾い食いをするな、刀の鯉口を切るな、人を指さすな、国の者同士だけでわかる言葉を使うな、どこでも立小便をするな、無駄遣いをするな、借銭をするな、悪所に行くなと、あれこれと細かいことが指導されるのである。
「それでは、皆、ここに書かれた言葉をゆっくりと読むのだ」
講師は部屋の前によく使う例文を書いた紙を貼って読ませた。
「道を教えてくださり、まことにかたじけない」
「もっとゆっくり」
「みーちーを、おーしーえーてーくーだーさーりー、まーこーとーにかーたーじーけーなーい」
彼らの感覚ではこんな感じになる。
新右衛門は殿様の言葉が自分よりもゆっくりしているのはこういうわけだったのかとわかった。
講義が終わった後は、準備についての質問の時間となる。講師は例年のことらしく、ほとんど迷うことなく答えていく。
最後の指南の日、勘平がひどく深刻そうな顔で質問の手を挙げた。講師はもしや武家ではないのに江戸に行く勘平が嫌がらせでもされているのではないかと不安を覚えた。
「何なりと話しなされ」
そう言われた勘平はおずおずと口を開いた。
「かようなことをお尋ねするのは少し気が引けるのですが、それがしの家族も心配しておることゆえ。江戸在府の折、忙しくて洗い物をする暇もないかもしれませぬゆえ、ふんどしを用意したいのですが、一体どれほど準備すればよいのかと。荷物がかさばるのであまりたくさん持って行きたくはありませんので」
あっという顔をした者がいたところを見ると、やはり他にもふんどしの心配をしている者がいるようだった。
新右衛門も、江戸に持って行く荷物の中には一体何枚下帯を入れるのか疑問に思っていた。
講師はうなずいた。
「道中の分だけでよろしいかと。江戸にはいろいろな商売があり、忙しくて洗濯もできぬ一人身の者のために、褌を賃貸しする者がおります」
皆、おおっと息を呑んだ。中には知っているらしく、うなずく者もいた。質問をした勘平はそうなのかと驚きの表情である。
「拙者も利用しましたが、多忙な時期には重宝しました。屋敷出入りの者がおりますので、申し込めば洗濯代だけで三日に一枚新しいふんどしが長屋に届くようになっております」
新右衛門はさすがは江戸、目端の利く者がいて、面白い商売を考え付くものだと思った。
「わしも貸してもらえるのか」
その問いに講師は絶句した。
「い、いえ、それは、畏れながら」
どうやらできないようだった。面白そうなのに残念だと思っていると、平太が言った。
「賃貸しを使わなくとも、毎日新品ではないか」
新右衛門は驚いた。
「新品なのか。わしはてっきり洗濯の名人が城にいると思っておった。毎日毎日、寒いのにきれいに洗いあげるものだと」
「大体、城内にふんどしを干してある場所があるか」
「そういえばそうじゃな」
講師が咳払いをした。平太はお目見え以下の守倉家の者である。殿様の弟の新右衛門と親しげに口をきくなど本来許されない。
「おっと、これは失礼を」
平太は口を閉じた。新右衛門は講師に尋ねた。
「わしが履いていた褌はどこにしまってあるのですか、勿体ない。あれは羽二重の上物」
皆、はっとした。そんなことを考えたこともなかった。
「若君様、さようなことは知らなくともよろしいかと」
講師はそれで話を終えてしまった。
惣左衛門は新右衛門の悪い病気がまたぞろ起きるのではないかと不安を感じた。
惣左衛門の心配は杞憂に終わった。なぜなら小ヶ田与五郎がその答えを知っていたからだった。
風呂の後、部屋に戻った時に着替えながら昼間の話をすると、着替えを手伝いながら与五郎は答えた。
「若君様の下帯は、払い下げられております」
「払い下げとはどういうことだ」
「殿様や若君様の衣類は小納戸方が管理しておりますが、風呂の前に脱いだ下帯は風呂の掛に下げ渡されます。風呂の掛はそれを売って小遣い稼ぎをしております」
「小遣い稼ぎとは」
人のふんどしで相撲をとるとはまさしくこのことと、新右衛門は腹が立ってきた。
けれど、与五郎はまあまあと言う。
「皆様、お禄の借り上げで苦しいのです。風呂の掛などは万が一、お湯の温度が熱すぎたりぬる過ぎたりすれば大失態。少しでも薪を無駄遣いせぬように工夫して風呂を焚いておるのです。その苦労の割に元々のお禄が少ないのですから、下帯を売るくらいは大目に見た方がよろしいかと」
「そうかもしれぬが、わしの下帯を一体どこに売るのだ」
「柳町界隈の古着屋です」
「柳町の」
柳町といえば、香田角城下唯一の色町である。遊郭があり、男達が夜な夜な集う場所である。
「見栄を張りたいお人がそこで羽二重の褌を買って女子のところへ行くのです」
「なんと」
「他にも大久間の宿屋などにも売っているようです。あそこも飯盛女などがいますから」
思いもかけない下帯の行方であった。
「中には縁起のいい下帯ということで風呂の掛から直接買い取る御仁もおいでのようです」
「そうなのか」
「はい。かく言うそれがしの義父も城に上がる際は払下げの下帯を着けております」
新右衛門は耳を疑った。
「小ヶ田、小ヶ田頼母先生が」
「きちんと洗っておりますゆえ。やはりいつも付けている木綿では失礼にあたるということで」
新右衛門は目がくらみそうだった。師匠たちも同じようなことをしているのではないかと。いや、重臣たちの中にもいるかもしれない。自分や殿様の下帯を身に付けて登城している者が。
捨てるのは勿体ないから再利用するというのはいいことかもしれないが、他人が締めていた褌を締めるというのはどうかという気がした。新右衛門には同じことはできない。
「殿様方の下帯は下帯として使われているのですからよいではありませぬか。褌の賃貸しなど、木綿で丈夫ゆえある程度使われて汚れてきたら藍で濃く染めて野良着に仕立てて田舎に売るそうでございますよ」
褌のリサイクルである。江戸の町で男達が履いていたふんどしはめぐりめぐって田舎にたどり着くのだ。野良着はぼろぼろになるまで継ぎをあてたり刺し子されたりして大切に使われていく。
「そうであったのか」
この世には思いもかけぬことがまだまだたくさんあるのだと新右衛門は思う。江戸に行けば、もっと多くの知らないことがあるに違いなかった。
「はい、これでお着替えはしまいです。今宵は殿様は奥泊まりとの由」
与五郎はそう言うと、一歩引いて新右衛門の姿を見た。
「若君様は姿勢がよろしいから、何を着ても映えます。顔の造作は生まれつきのことゆえ変えられませぬが、姿勢は心映え。江戸へ参っても大丈夫です」
与五郎が言うと、本当にそのように思えてくるから不思議だった。
その頃、惣左衛門は守倉平太に久しぶりに誘われて柳町近くの飯屋にいた。飯屋と言っても酒を出すので、ちょっといっぱいひっかけながら夕飯という独り者や行商人でにぎわっていた。
二人は座敷の奥まった席に入った。
「まったく、お主には肝が冷えた。若君様にあんな口のきき方をするとは」
「すまぬな。つい昔を思い出して。卯之助は相変わらずだな」
平太はそう言うととりあえずと酒と肴を頼んだ。
「なんだか妙だな。お主と酒を飲むようになるとは」
惣左衛門は運ばれてきた徳利を見た。平太は笑う。
「何が妙なもんか。わしらも年をとったのだ」
年をとったといっても十五である。
「そろそろ嫁取りの話もきておろう」
平太に促され惣左衛門はうなずいた。
「江戸から帰ってからの話だな。山置の親戚が最近よく母に文を送ってくるようだが」
「山置か。そっちはやめておいたほうがええ」
「なんでだ」
「母御の親戚の娘でお主にちょうどいいのがおるとかいう話であろうが、その娘はもう生娘ではないぞ。男出入りが激しいとかで、親がさっさと嫁に出したがっておるようじゃぞ」
母の言っていた話を思い出し、惣左衛門は驚いた。親戚は江戸に行く前に祝言だけでもと言っているらしい。
「さようか」
「ああ。そういう娘を嫁にしたらえらい目に遭うぞ。お主が江戸に行っておる間に、辰巳町に兄弟が増えるぞ。いや辰巳だけでは済まぬかもな」
それだけは御免だった。
「したが、そういうお主はどうなのだ」
「わしは、別にまだ」
「まあ、兄上がおるから跡継ぎうんぬんは言われぬであろうが」
「兄は死んだ」
惣左衛門は盃を卓に置いた。そこへ店の若い衆がタラの芽の味噌和えと干し鮎の塩焼きを持って来た。
若い衆が行ってしまった後、惣左衛門は言った。
「それは大変じゃったなあ」
平太は鮎を頭から齧って呑み込んだ。
「そうでもない。死んでくれたから、わしは安心して江戸に行ける。生かしておいたらろくなことはせぬからな」
惣左衛門は背筋がうすら寒くなってきた。生かしておいたら。「生かす」を「死なす」に置き換えるのは難しい話ではない。
「お主、よもや」
「江戸に行く前に片付けておかねばならぬことはすべて片付けた。お主もきちんとしておけよ」
平太は残りの鮎を齧った。
惣左衛門はその姿を見ながら、盃の中身をあおった。恐らくは、これが平太の仕事なのだ。江戸に行っている間に、国許で問題を起こしかねない芽があれば摘み取るという。
「そうじゃ、柳町にな、丸屋という店があってな。そこの主人はおやじの知り合いゆえ、安くすると言っておった。これから行かぬか。明日は勤めは休みであろう」
平太はなぜか惣左衛門の非番を知っていた。
家を出て来る時、母に遅くなるとは言っていたが、さて明日の朝どう言い訳したものか。
「江戸に出てから女を知ると、骨抜きにされるというからな」
飯屋を出た後、惣左衛門は平太と柳町への道を歩いた。廓の入り口の大門が見えてきた。
「追い出されぬか」
「卯之吉ではあるまいし。お主は勤め人の顔をしておる」
「平太がじゃ」
「それはひどいのう」
小柄な平太の笑い声は街のざわめきに融け込んでいった。
彼らが通り過ぎた古着屋の奥には『羽二重の下帯あり〼』という札が掛けられていた。
御分家の啓哲とその娘壱姫までも呼ばなければならないというのは、うんざりしてくるのだが、親戚づきあいをいい加減にはできない。
満津の今後を考えると、沢井家だけでなく、他の家とも友好的な関係を持たねばならない。満津が懐妊すればいいが、もしそうでない場合の満津の立場は危うい。
その時に一番強力な後ろ盾になるのは、御分家なのだ。臣下の沢井家だけでは無理だった。梅芳院とていつまでも元気でいるわけではない。
竹之助を婿にすることで貧乏くじを引いたと思っている御分家には心を込めて接したかった。
だが、茶会の予定日前日になって、御分家から断りの使いが来た。
身内に不幸があったのだと言う。一体誰か尋ねても、使いの者を取り付いだ小姓ははっきりと言わない。
おかしいと思い、夕食の時に殿様に尋ねた。
殿様は別の方面から御分家の不幸を耳にしていた。
「亡くなられたのは啓幸殿だ」
「たかゆき殿とはどのような方なのですか」
新右衛門は啓哲しか知らない。
「今の当主の兄でな。七年、いや八年前に玄龍寺の預かりとなったのだ」
「どういうわけでございますか」
殿様はそなたが知らないのは無理もないと言った。
「実はな、啓幸は謀反を企てたのだ。自分が本家を継ごうとしたのだ」
八年前といえば、七つの頃である。物心のついた頃だが、そんな事件があったとは知らなかった。
「余はその頃、江戸在府中でな、城代家老から詳しい経緯を知らされた。が、そなたが知らずともよいことだ。啓幸殿の企みは露見し、玄龍寺の座敷牢に押し込められたのだ。で、このたびはそこで自裁されたとのこと」
自裁。自ら命を絶ったということだ。
よほど座敷牢はつらい場所だったのだろうと新右衛門は思った。そんな場所に八年もとは。
「啓哲様は兄上が亡くなっておつらいことでしょうね」
殿様はそうでもないだろうとわかっていたものの、曖昧にうなずいた。あの兄弟は決して仲がいいとは言えなかった。
「御分家としては公にしたくない話だ。そなたはこの件に関してはあまり口出しせぬがよい」
殿様はそう言ってこの話を打ち切った。
殿様は知っていた。新右衛門が卯之助と呼ばれた頃に、啓幸の陰謀に巻き込まれたことを。
だが、それを新右衛門が知る必要はなかった。啓幸はもう死んだのだ。御分家にとって体よく厄介払いができたというところなのだ。
ちなみに殿様の耳に入った情報では啓幸に殉じて太平坊という玄龍寺に昨年入山した若い僧侶も亡くなったということだった。殉死は法度だが、太平坊はすでに実家の守倉家からも勘当された身であるから家族は罰しないということになった。
そういったことはあったものの、師匠らを呼んだ茶会は御殿の離れにある茶室で無事に行われた。
招かれた城代家老の川合平右衛門は紅葉の宴の能の話を持ち出し、あの時「花月」を四番能に選んだのはよい趣向であったと語り、同席した殿様もうなずいたのだった。
「花月」のあらすじは英彦山の麓に住む男が七歳の子が行方不明になったのをきっかけに出家し、諸国修行の旅に出て清水寺へ参詣した折に花月という曲舞をする少年と出会い、それが天狗にさらわれた息子だと判明し、名乗りをあげ共に仏道修行の旅に出るというものである。
「若君はまさしく花月。これより殿とともに江戸に旅立つのですから」
能に詳しい平右衛門でなければへつらいとしかとられかねないような言葉だった。
自分は花月のような芸達者ではないのだがと、新右衛門はこそばゆいような気持ちになった。
行事の合間には、城内表御殿の一室を借りて、江戸在府経験者による初任者への指南が行われた。
新右衛門もそれに加わった。殿様の命令である。
若君様参加ということで緊張の度合いが高まったのであったと書きたいところであるが、実際はそうではなかった。
なぜなら、受講者は皆若く、新右衛門とともに水無月祓えや雷土山登山に参加した者も多かったのだ。
惣左衛門はもちろん、平太や卯之吉、川合平兵衛までいた。さらには、白石村の勘平もいた。
勘平は村越仁斎からの推薦で江戸で儒学者について勉強することになったのだ。一人年上の勘平だが、江戸に行くのは勿論、香田角から出るのも初めてで、彼が一番興奮していた。
気心の知れた者同士の集まりとあって、新右衛門はこの集まりが楽しみだった。
ところで、なぜ初任者に対して指南が行なわれるのかというと、これは香田角を出てからの無用の面倒を避けるためである。
無論、行列奉行から道中法度の触れはあるものの、それだけでは初めて江戸に行く者には不十分だった。
なぜなら領地や大坂蔵屋敷、江戸屋敷の中は家中掟が通用するが、それ以外は通過する各藩や町奉行の管轄だった。家中の掟は通用しないのだ。
同僚、あるいは他藩の武士との喧嘩沙汰があれば途中で行列が滞ることもある。その際の延泊の費用は馬鹿にならない。また喧嘩を起こした地を治める領主への遠慮もある。
とにかくありとあらゆる面倒を避け、無事に江戸まで旅をすること、それだけのためにあれこれと細かい注意事項が指導された。
たとえば、言葉。
九州の山奥の人間の話す言葉は外ではそのままでは通用しない。抑揚、速度、語彙、すべてが違う。まずそれが面倒事の元になる。
というわけで外に出たら、できるだけゆっくりと話すこと、謡をやっている者は謡の言葉で話すこと、そうでない場合はとにかく口をはっきり開けてわかりやすく話すことをまず教えられた。
他にもよその食べ物に文句を付けるな、地元の女子どもをからかうな、拾い食いをするな、刀の鯉口を切るな、人を指さすな、国の者同士だけでわかる言葉を使うな、どこでも立小便をするな、無駄遣いをするな、借銭をするな、悪所に行くなと、あれこれと細かいことが指導されるのである。
「それでは、皆、ここに書かれた言葉をゆっくりと読むのだ」
講師は部屋の前によく使う例文を書いた紙を貼って読ませた。
「道を教えてくださり、まことにかたじけない」
「もっとゆっくり」
「みーちーを、おーしーえーてーくーだーさーりー、まーこーとーにかーたーじーけーなーい」
彼らの感覚ではこんな感じになる。
新右衛門は殿様の言葉が自分よりもゆっくりしているのはこういうわけだったのかとわかった。
講義が終わった後は、準備についての質問の時間となる。講師は例年のことらしく、ほとんど迷うことなく答えていく。
最後の指南の日、勘平がひどく深刻そうな顔で質問の手を挙げた。講師はもしや武家ではないのに江戸に行く勘平が嫌がらせでもされているのではないかと不安を覚えた。
「何なりと話しなされ」
そう言われた勘平はおずおずと口を開いた。
「かようなことをお尋ねするのは少し気が引けるのですが、それがしの家族も心配しておることゆえ。江戸在府の折、忙しくて洗い物をする暇もないかもしれませぬゆえ、ふんどしを用意したいのですが、一体どれほど準備すればよいのかと。荷物がかさばるのであまりたくさん持って行きたくはありませんので」
あっという顔をした者がいたところを見ると、やはり他にもふんどしの心配をしている者がいるようだった。
新右衛門も、江戸に持って行く荷物の中には一体何枚下帯を入れるのか疑問に思っていた。
講師はうなずいた。
「道中の分だけでよろしいかと。江戸にはいろいろな商売があり、忙しくて洗濯もできぬ一人身の者のために、褌を賃貸しする者がおります」
皆、おおっと息を呑んだ。中には知っているらしく、うなずく者もいた。質問をした勘平はそうなのかと驚きの表情である。
「拙者も利用しましたが、多忙な時期には重宝しました。屋敷出入りの者がおりますので、申し込めば洗濯代だけで三日に一枚新しいふんどしが長屋に届くようになっております」
新右衛門はさすがは江戸、目端の利く者がいて、面白い商売を考え付くものだと思った。
「わしも貸してもらえるのか」
その問いに講師は絶句した。
「い、いえ、それは、畏れながら」
どうやらできないようだった。面白そうなのに残念だと思っていると、平太が言った。
「賃貸しを使わなくとも、毎日新品ではないか」
新右衛門は驚いた。
「新品なのか。わしはてっきり洗濯の名人が城にいると思っておった。毎日毎日、寒いのにきれいに洗いあげるものだと」
「大体、城内にふんどしを干してある場所があるか」
「そういえばそうじゃな」
講師が咳払いをした。平太はお目見え以下の守倉家の者である。殿様の弟の新右衛門と親しげに口をきくなど本来許されない。
「おっと、これは失礼を」
平太は口を閉じた。新右衛門は講師に尋ねた。
「わしが履いていた褌はどこにしまってあるのですか、勿体ない。あれは羽二重の上物」
皆、はっとした。そんなことを考えたこともなかった。
「若君様、さようなことは知らなくともよろしいかと」
講師はそれで話を終えてしまった。
惣左衛門は新右衛門の悪い病気がまたぞろ起きるのではないかと不安を感じた。
惣左衛門の心配は杞憂に終わった。なぜなら小ヶ田与五郎がその答えを知っていたからだった。
風呂の後、部屋に戻った時に着替えながら昼間の話をすると、着替えを手伝いながら与五郎は答えた。
「若君様の下帯は、払い下げられております」
「払い下げとはどういうことだ」
「殿様や若君様の衣類は小納戸方が管理しておりますが、風呂の前に脱いだ下帯は風呂の掛に下げ渡されます。風呂の掛はそれを売って小遣い稼ぎをしております」
「小遣い稼ぎとは」
人のふんどしで相撲をとるとはまさしくこのことと、新右衛門は腹が立ってきた。
けれど、与五郎はまあまあと言う。
「皆様、お禄の借り上げで苦しいのです。風呂の掛などは万が一、お湯の温度が熱すぎたりぬる過ぎたりすれば大失態。少しでも薪を無駄遣いせぬように工夫して風呂を焚いておるのです。その苦労の割に元々のお禄が少ないのですから、下帯を売るくらいは大目に見た方がよろしいかと」
「そうかもしれぬが、わしの下帯を一体どこに売るのだ」
「柳町界隈の古着屋です」
「柳町の」
柳町といえば、香田角城下唯一の色町である。遊郭があり、男達が夜な夜な集う場所である。
「見栄を張りたいお人がそこで羽二重の褌を買って女子のところへ行くのです」
「なんと」
「他にも大久間の宿屋などにも売っているようです。あそこも飯盛女などがいますから」
思いもかけない下帯の行方であった。
「中には縁起のいい下帯ということで風呂の掛から直接買い取る御仁もおいでのようです」
「そうなのか」
「はい。かく言うそれがしの義父も城に上がる際は払下げの下帯を着けております」
新右衛門は耳を疑った。
「小ヶ田、小ヶ田頼母先生が」
「きちんと洗っておりますゆえ。やはりいつも付けている木綿では失礼にあたるということで」
新右衛門は目がくらみそうだった。師匠たちも同じようなことをしているのではないかと。いや、重臣たちの中にもいるかもしれない。自分や殿様の下帯を身に付けて登城している者が。
捨てるのは勿体ないから再利用するというのはいいことかもしれないが、他人が締めていた褌を締めるというのはどうかという気がした。新右衛門には同じことはできない。
「殿様方の下帯は下帯として使われているのですからよいではありませぬか。褌の賃貸しなど、木綿で丈夫ゆえある程度使われて汚れてきたら藍で濃く染めて野良着に仕立てて田舎に売るそうでございますよ」
褌のリサイクルである。江戸の町で男達が履いていたふんどしはめぐりめぐって田舎にたどり着くのだ。野良着はぼろぼろになるまで継ぎをあてたり刺し子されたりして大切に使われていく。
「そうであったのか」
この世には思いもかけぬことがまだまだたくさんあるのだと新右衛門は思う。江戸に行けば、もっと多くの知らないことがあるに違いなかった。
「はい、これでお着替えはしまいです。今宵は殿様は奥泊まりとの由」
与五郎はそう言うと、一歩引いて新右衛門の姿を見た。
「若君様は姿勢がよろしいから、何を着ても映えます。顔の造作は生まれつきのことゆえ変えられませぬが、姿勢は心映え。江戸へ参っても大丈夫です」
与五郎が言うと、本当にそのように思えてくるから不思議だった。
その頃、惣左衛門は守倉平太に久しぶりに誘われて柳町近くの飯屋にいた。飯屋と言っても酒を出すので、ちょっといっぱいひっかけながら夕飯という独り者や行商人でにぎわっていた。
二人は座敷の奥まった席に入った。
「まったく、お主には肝が冷えた。若君様にあんな口のきき方をするとは」
「すまぬな。つい昔を思い出して。卯之助は相変わらずだな」
平太はそう言うととりあえずと酒と肴を頼んだ。
「なんだか妙だな。お主と酒を飲むようになるとは」
惣左衛門は運ばれてきた徳利を見た。平太は笑う。
「何が妙なもんか。わしらも年をとったのだ」
年をとったといっても十五である。
「そろそろ嫁取りの話もきておろう」
平太に促され惣左衛門はうなずいた。
「江戸から帰ってからの話だな。山置の親戚が最近よく母に文を送ってくるようだが」
「山置か。そっちはやめておいたほうがええ」
「なんでだ」
「母御の親戚の娘でお主にちょうどいいのがおるとかいう話であろうが、その娘はもう生娘ではないぞ。男出入りが激しいとかで、親がさっさと嫁に出したがっておるようじゃぞ」
母の言っていた話を思い出し、惣左衛門は驚いた。親戚は江戸に行く前に祝言だけでもと言っているらしい。
「さようか」
「ああ。そういう娘を嫁にしたらえらい目に遭うぞ。お主が江戸に行っておる間に、辰巳町に兄弟が増えるぞ。いや辰巳だけでは済まぬかもな」
それだけは御免だった。
「したが、そういうお主はどうなのだ」
「わしは、別にまだ」
「まあ、兄上がおるから跡継ぎうんぬんは言われぬであろうが」
「兄は死んだ」
惣左衛門は盃を卓に置いた。そこへ店の若い衆がタラの芽の味噌和えと干し鮎の塩焼きを持って来た。
若い衆が行ってしまった後、惣左衛門は言った。
「それは大変じゃったなあ」
平太は鮎を頭から齧って呑み込んだ。
「そうでもない。死んでくれたから、わしは安心して江戸に行ける。生かしておいたらろくなことはせぬからな」
惣左衛門は背筋がうすら寒くなってきた。生かしておいたら。「生かす」を「死なす」に置き換えるのは難しい話ではない。
「お主、よもや」
「江戸に行く前に片付けておかねばならぬことはすべて片付けた。お主もきちんとしておけよ」
平太は残りの鮎を齧った。
惣左衛門はその姿を見ながら、盃の中身をあおった。恐らくは、これが平太の仕事なのだ。江戸に行っている間に、国許で問題を起こしかねない芽があれば摘み取るという。
「そうじゃ、柳町にな、丸屋という店があってな。そこの主人はおやじの知り合いゆえ、安くすると言っておった。これから行かぬか。明日は勤めは休みであろう」
平太はなぜか惣左衛門の非番を知っていた。
家を出て来る時、母に遅くなるとは言っていたが、さて明日の朝どう言い訳したものか。
「江戸に出てから女を知ると、骨抜きにされるというからな」
飯屋を出た後、惣左衛門は平太と柳町への道を歩いた。廓の入り口の大門が見えてきた。
「追い出されぬか」
「卯之吉ではあるまいし。お主は勤め人の顔をしておる」
「平太がじゃ」
「それはひどいのう」
小柄な平太の笑い声は街のざわめきに融け込んでいった。
彼らが通り過ぎた古着屋の奥には『羽二重の下帯あり〼』という札が掛けられていた。
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