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32 愚かな男
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「津由子さんは兵庫の気持ちに気付いてたの?」
母上の問いは純粋に好奇心から出たもののようだった。息子の嫁にそういうことを訊くのは普通は無神経だと思うが、母上なら致し方ないと私は思う。「淑女スタイル」の母上のコラムは人気がある。母上は常に好奇心のアンテナを周囲に張り巡らしているのだ。
「いいえ。だって、何もおっしゃらないんですから。態度でも言葉でも表現されなかったのです。金曜日に兄から言われてやっと合点がゆきました」
あの日、菓子屋の二階の喫茶店で兄は兵庫が私目当てに家を訪ねて来ていたのだと話した。恐らく兄が中等学校四年の昌平黌受験の頃から兵庫は私を見初めていたのだと兄は言った。
小学校三年の私を十六、七歳の兵庫が? 少し気味が悪かった。しかも私目当てで兄の受験の家庭教師をし、その後もしょっちゅう兄を訪ねていたなんて。しかも何の意思表示もせずに。
左京様も似たようなものかもしれないが、大違いだと思う。私のためを思い左京様は己を律し会わないようにしていた。私が一生懸命自転車をこぐ姿を見て元気にしているとわかって喜んでくれた。
兄は兵庫が私への思いをこじらせているのだと言っていた。普通こじらせるという言葉は病気に使うものだ。風邪をこじらせてとか。この場合は思いをこじらせて、素直になれなくなっているということらしい。
兵庫は名門の誇りゆえに貧乏御家人の娘を好きだと口に出せなかった。そのくせ気になって仕方なくて家を訪ねて私の顔を見ることしかできなかったのだろうと兄は言っていた。だから兄は兵庫を馬鹿だと言うらしい。
私にとっては馬鹿では済まない、困った事態だった。いや恐怖と言っていい。左京様が留守にしている間に、兵庫の懸想がこじれてしまっていることを知ったのだから。
こじれた故の無茶な出張や自作自演で目付に文字通り目を付けられてしまうとは。
だから兄は言った。
『たぶん、兵庫は会いたいと言うはずだ。会って、あいつに不義密通という言葉を言わせろ。別件だがそれで逮捕できる』
そして私に小型録音機を渡した。
カフェノアローの前でスイッチを入れた瞬間、私は選択したのだ。左京様との幸せな未来の為に、兵庫を欺くことを。
母上はうんうんと頷いていた。
「言われてみればそうよね。兵庫に左京の居場所を聞いたらなんて言い出すくらいだから、あなたはまったく何とも思ってなかったってことか」
「兄の友人としか思っていませんでした」
そうなのだ。兵庫が左京様の噂をされることがあるので、子どもの私はそれが聞きたくて兄の部屋にお茶を持って行ったのだ。
「私も友人とまでは……。受験勉強を手伝ってくれたのは感謝してますが」
兄はそう言うとクッキーを齧った。
「これ、うまいですね」
「越後屋百貨店の地下にある洋菓子屋ので、はやってるのよ。おしまおばさんのクッキーっていうの」
「今度妻に買ってやります」
「それなら、お土産に持って帰りなさい。まだたくさんあるから」
「お言葉に甘えて」
一枚食べ終わった兄はお茶を啜った。
「父が隠居して屋敷替えになった時、兵庫に言われたんです。なまじ昌平黌に受かっていなくてよかったと」
「どういうこと?」
母上の問いに兄は笑って答えた。
「父親のしくじりがあれば昌平黌を出ても出世は望めぬと。下手をすれば己よりも若い卒業生の下で働かねばならぬことになると」
それが笑いごとでは済まないことは私にも母上にもわかる。兄の屈辱はいかばかりのものであったか。この話を笑って言えるようになるまで兄は怒りを心のうちで何百回何千回鎮めたのであろうか。
「そんなことがあったのに、私は何も知らずに……」
「俺もその時は笑って聞いていたが、後から色々と思うところはあった。だが、この程度のことはこれから先もあることだと思って堪えた。それに気に入らぬことを一度言ったからといって訪問を断るのも大人気ないからな。母の病の時は医者を紹介してくれた。もっとも名医であっても手の施しようがなかったがな」
そういえば立派な車に乗ったお医者様が一度往診に訪れたことがあった。お医者様が帰った後、父がひどく塞いでいたことを覚えている。恐らく医者は父に宣告をしたのだろう。
「なんてことを。言っていいことと悪いことがある。兵庫には津由子さんは勿体ないわ」
母上は憤慨していた。
「ほんとにそうです。津由子が左京と結婚できて、こんなに嬉しいことはない」
心からの兄の笑顔だった。
「兵庫にしてみれば、目の前でトンビに油揚げね。それで逆恨みして、連続の出張というわけ?」
「そういうことでしょうね。前の上様の薨去の際は葬儀の打ち合わせで上野に幾度も行ったそうです。別に左京が行かなくともよかったのに、なぜか左京に仕事がまわってきたようです。大納言様のお供で京へ行ったのも、本来は行く必要がなかったようで。一番ひどいのは欧州出張です。さっきも言ったように本来行くはずだった奥祐筆の兄が診断書を出したのが出張前日だったのですから」
ひどい話である。挙句に出張費不正請求の濡れ衣までかぶせようとしたとは。
「それじゃ今の出張も兵庫の差し金ってわけね」
「それが少し違うんです」
実は私もそれが知りたかった。城で若君様に夏休みの宿題をやらせて以降の話がまったく伝わってこないのだ。
「もうそろそろ公式に上様と御台所様の欧州歴訪の発表があるから話しますが、欧州への出張で、左京は大仕事をしたんです。大使が幾度折衝してもできなかった上様とローマ教皇との会見を確約させたのです」
「ローマ教皇ですか」
私はあまりのことにそれ以上言葉が出てこなかった。母上もあんぐりと口を開けていた。
「そうです。過去に政府は多くのキリスト教徒を迫害してきました。それでバチカンとの関係がいまいちよくないという話は御存知かと。先代の上様は是非とも関係改善をしたいと願っていました。将軍職に就かれる以前に御自身で訪米し、カトリックの関係者にも会っています。今の上様も教皇との会見を願っていました。それを左京がバチカンに確約させたんです」
そんな大きな仕事をされたとは。左京様はなんという方なのだろうか。
学校でキリスト教禁令の歴史の授業をするから迫害についてはある程度知っている。あまりの酷さに詳しく教えられないこともある。今から百五十年ほど前の十五代様の時代に欧米に国を開いたのを契機に禁令はなくなってはいるが、バチカンとの関係は決して良好ではない。
その関係を改善する契機を左京様が作ったとは。
「日本橋の伯父さんの紹介で幾人かの実業家と面会し、バチカンに渡りをつけてもらったようです。名前を聞いただけでも、紹介されただけで簡単に会えるようなメンバーじゃない。まったく大したものです。というわけで、上様が左京の功績をお褒めになってお城にお招きになった、と中奥の中学時代の同級生が教えてくれました。ですから恐らく今度の出張は兵庫ではなく、上様直々の命かと」
名誉な話である。でも、そのせいで若君様の宿題をみることになってしまったのだが。
さらには電話もメールもできない場所に出張することになってしまった。
母上は中奥だから上様に関係することだろうと推定していた。兄も上様直々の命だと言う。一体、いかなる任務なのか、私には想像がつかない。
「兄上、調べてくださりありがとうございます」
兄には感謝しかない。
「左京は津由子の夫だから兄弟だ。しかも友人だ。当然のことさ」
久しぶりに暢気な兄の顔を見たような気がした。
母上の問いは純粋に好奇心から出たもののようだった。息子の嫁にそういうことを訊くのは普通は無神経だと思うが、母上なら致し方ないと私は思う。「淑女スタイル」の母上のコラムは人気がある。母上は常に好奇心のアンテナを周囲に張り巡らしているのだ。
「いいえ。だって、何もおっしゃらないんですから。態度でも言葉でも表現されなかったのです。金曜日に兄から言われてやっと合点がゆきました」
あの日、菓子屋の二階の喫茶店で兄は兵庫が私目当てに家を訪ねて来ていたのだと話した。恐らく兄が中等学校四年の昌平黌受験の頃から兵庫は私を見初めていたのだと兄は言った。
小学校三年の私を十六、七歳の兵庫が? 少し気味が悪かった。しかも私目当てで兄の受験の家庭教師をし、その後もしょっちゅう兄を訪ねていたなんて。しかも何の意思表示もせずに。
左京様も似たようなものかもしれないが、大違いだと思う。私のためを思い左京様は己を律し会わないようにしていた。私が一生懸命自転車をこぐ姿を見て元気にしているとわかって喜んでくれた。
兄は兵庫が私への思いをこじらせているのだと言っていた。普通こじらせるという言葉は病気に使うものだ。風邪をこじらせてとか。この場合は思いをこじらせて、素直になれなくなっているということらしい。
兵庫は名門の誇りゆえに貧乏御家人の娘を好きだと口に出せなかった。そのくせ気になって仕方なくて家を訪ねて私の顔を見ることしかできなかったのだろうと兄は言っていた。だから兄は兵庫を馬鹿だと言うらしい。
私にとっては馬鹿では済まない、困った事態だった。いや恐怖と言っていい。左京様が留守にしている間に、兵庫の懸想がこじれてしまっていることを知ったのだから。
こじれた故の無茶な出張や自作自演で目付に文字通り目を付けられてしまうとは。
だから兄は言った。
『たぶん、兵庫は会いたいと言うはずだ。会って、あいつに不義密通という言葉を言わせろ。別件だがそれで逮捕できる』
そして私に小型録音機を渡した。
カフェノアローの前でスイッチを入れた瞬間、私は選択したのだ。左京様との幸せな未来の為に、兵庫を欺くことを。
母上はうんうんと頷いていた。
「言われてみればそうよね。兵庫に左京の居場所を聞いたらなんて言い出すくらいだから、あなたはまったく何とも思ってなかったってことか」
「兄の友人としか思っていませんでした」
そうなのだ。兵庫が左京様の噂をされることがあるので、子どもの私はそれが聞きたくて兄の部屋にお茶を持って行ったのだ。
「私も友人とまでは……。受験勉強を手伝ってくれたのは感謝してますが」
兄はそう言うとクッキーを齧った。
「これ、うまいですね」
「越後屋百貨店の地下にある洋菓子屋ので、はやってるのよ。おしまおばさんのクッキーっていうの」
「今度妻に買ってやります」
「それなら、お土産に持って帰りなさい。まだたくさんあるから」
「お言葉に甘えて」
一枚食べ終わった兄はお茶を啜った。
「父が隠居して屋敷替えになった時、兵庫に言われたんです。なまじ昌平黌に受かっていなくてよかったと」
「どういうこと?」
母上の問いに兄は笑って答えた。
「父親のしくじりがあれば昌平黌を出ても出世は望めぬと。下手をすれば己よりも若い卒業生の下で働かねばならぬことになると」
それが笑いごとでは済まないことは私にも母上にもわかる。兄の屈辱はいかばかりのものであったか。この話を笑って言えるようになるまで兄は怒りを心のうちで何百回何千回鎮めたのであろうか。
「そんなことがあったのに、私は何も知らずに……」
「俺もその時は笑って聞いていたが、後から色々と思うところはあった。だが、この程度のことはこれから先もあることだと思って堪えた。それに気に入らぬことを一度言ったからといって訪問を断るのも大人気ないからな。母の病の時は医者を紹介してくれた。もっとも名医であっても手の施しようがなかったがな」
そういえば立派な車に乗ったお医者様が一度往診に訪れたことがあった。お医者様が帰った後、父がひどく塞いでいたことを覚えている。恐らく医者は父に宣告をしたのだろう。
「なんてことを。言っていいことと悪いことがある。兵庫には津由子さんは勿体ないわ」
母上は憤慨していた。
「ほんとにそうです。津由子が左京と結婚できて、こんなに嬉しいことはない」
心からの兄の笑顔だった。
「兵庫にしてみれば、目の前でトンビに油揚げね。それで逆恨みして、連続の出張というわけ?」
「そういうことでしょうね。前の上様の薨去の際は葬儀の打ち合わせで上野に幾度も行ったそうです。別に左京が行かなくともよかったのに、なぜか左京に仕事がまわってきたようです。大納言様のお供で京へ行ったのも、本来は行く必要がなかったようで。一番ひどいのは欧州出張です。さっきも言ったように本来行くはずだった奥祐筆の兄が診断書を出したのが出張前日だったのですから」
ひどい話である。挙句に出張費不正請求の濡れ衣までかぶせようとしたとは。
「それじゃ今の出張も兵庫の差し金ってわけね」
「それが少し違うんです」
実は私もそれが知りたかった。城で若君様に夏休みの宿題をやらせて以降の話がまったく伝わってこないのだ。
「もうそろそろ公式に上様と御台所様の欧州歴訪の発表があるから話しますが、欧州への出張で、左京は大仕事をしたんです。大使が幾度折衝してもできなかった上様とローマ教皇との会見を確約させたのです」
「ローマ教皇ですか」
私はあまりのことにそれ以上言葉が出てこなかった。母上もあんぐりと口を開けていた。
「そうです。過去に政府は多くのキリスト教徒を迫害してきました。それでバチカンとの関係がいまいちよくないという話は御存知かと。先代の上様は是非とも関係改善をしたいと願っていました。将軍職に就かれる以前に御自身で訪米し、カトリックの関係者にも会っています。今の上様も教皇との会見を願っていました。それを左京がバチカンに確約させたんです」
そんな大きな仕事をされたとは。左京様はなんという方なのだろうか。
学校でキリスト教禁令の歴史の授業をするから迫害についてはある程度知っている。あまりの酷さに詳しく教えられないこともある。今から百五十年ほど前の十五代様の時代に欧米に国を開いたのを契機に禁令はなくなってはいるが、バチカンとの関係は決して良好ではない。
その関係を改善する契機を左京様が作ったとは。
「日本橋の伯父さんの紹介で幾人かの実業家と面会し、バチカンに渡りをつけてもらったようです。名前を聞いただけでも、紹介されただけで簡単に会えるようなメンバーじゃない。まったく大したものです。というわけで、上様が左京の功績をお褒めになってお城にお招きになった、と中奥の中学時代の同級生が教えてくれました。ですから恐らく今度の出張は兵庫ではなく、上様直々の命かと」
名誉な話である。でも、そのせいで若君様の宿題をみることになってしまったのだが。
さらには電話もメールもできない場所に出張することになってしまった。
母上は中奥だから上様に関係することだろうと推定していた。兄も上様直々の命だと言う。一体、いかなる任務なのか、私には想像がつかない。
「兄上、調べてくださりありがとうございます」
兄には感謝しかない。
「左京は津由子の夫だから兄弟だ。しかも友人だ。当然のことさ」
久しぶりに暢気な兄の顔を見たような気がした。
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