7 / 10
魔法の修行は厳しい
しおりを挟む
「違う。何度も言ったろ。
ー…そうじゃない」
仮初めとは言え、リオンの弟子となった千種。
取り敢えず、もしも誰かに千種の事を聞かれた時に怪しまれずに誤魔化せるよう。
最低限の魔法の勉強を始めたのだ。
修行とはとても言えない、初歩の初歩。
尤も、それまで魔法と言うものに関わった事のない千種には、青天の霹靂だ。
リオンがユックリ、優しく発音してもどうしても千種に伝わらない。
英語とも日本語とも違う発音に、完全にお手上げだ。
「~…ごめんなさい」
「いや、チグサのせいじゃ無い。
ぼくの教え方が悪いんだ。すまない」
「リオン先生のせいじゃないよ。
私が出来ないから…」
申し訳無さと不甲斐なさで肩を落とす。
リオンの教え方は、きっと魔法に慣れ親しんだエリュージャル人ならスグに伝わるのだろう。
こういう時、自分が異質な存在と思い知らされる。
一生懸命教えてくれるリオンに申し訳無い。
「…少し、休憩しようか」
「…うん」
持って産まれた才能はどうしようも無い。
ある者には溢れる程にあるし、無い者は逆立ちしても無いのだ。
努力でカバーするのには限度がある。
千種は、学校の勉強は平均以上だが如何せん魔法は縁がない。
「リオン先生の顔に、泥を塗っちゃうね…」
リオンに出された紅茶を口に運びながら、ポツリ口にする。
「…気にするな。
ぼくだって、ここまで来るのに何百年もかかった。
少しずつ出来る様になれば良いさ」
「うん…」
「それに、まずはこの世界の文字を読み書き出来る様にならないとな。
いつまでも翻訳が必要なのもチグサも不便だろ」
「うん…」
リオンが、どうした物かと考えを巡らせる間。
千種はじっとテーブルに置かれたティーカップを見つめ続けた。
何かを睨む様に見ていないと思ったから。
「チグサ?」
「…」
泣いても仕方無いのは分かっているのに。
「今は、焦っても仕方無いんだ。
焦る方が、悪い方向へ導かれてしまう。
だから。ー…ゆっくり深呼吸をして。
チグサの思った通りに動けば良い」
リオンの優しさに、ダメだと分かっていても涙が溢れてしまう。
ー…でも。
(ーーーも、やだ!)
自分の出来なさ具合に腹が立つ。
頭の中に嵐の情景が浮かんだ。
魔法に大切なのは、イメージを明確にする事。
次は、そのイメージをいかに正確に具現するか、だ。
千種はイメージは出来ても具現が出来ないのだ。
雨を降らせる位、初歩の初歩だが生憎と水の一滴も出ないのだ。
「もー!!
雨よ、降れーーーー!!」
声の限りに絶叫する。
リオンは、それでは魔法は発動しないと呆れ混じりの視線で諭す。
分かってる。
リオンの言う事なんて分かっている。
それでも今の千種は、叫ばずにいられなかった。
叫んで。
心の限りに叫んで。
肺と脳内を空っぽにすれば、きっと気持ちが切り替わると思ったから。
ふぅ。と息を吐いた。
「えへへ、リオン先生。
ちょっとガス抜きしちゃった。
急に叫んじゃって、ごめんなさい!」
「それは別に構わないが…」
心配そうに見つめるリオン。
ー…まだ、続けられるか?
と、沈黙の問いを静かに頷き肯定する。
「少し休憩しよう。
買い出しに行って、夕食後にまた復習だ」
「はい、先生…」
取り敢えず、リセットしようと言うリオンの提案に頷いた刹那。
異変は突然やって来た。
ー…そうじゃない」
仮初めとは言え、リオンの弟子となった千種。
取り敢えず、もしも誰かに千種の事を聞かれた時に怪しまれずに誤魔化せるよう。
最低限の魔法の勉強を始めたのだ。
修行とはとても言えない、初歩の初歩。
尤も、それまで魔法と言うものに関わった事のない千種には、青天の霹靂だ。
リオンがユックリ、優しく発音してもどうしても千種に伝わらない。
英語とも日本語とも違う発音に、完全にお手上げだ。
「~…ごめんなさい」
「いや、チグサのせいじゃ無い。
ぼくの教え方が悪いんだ。すまない」
「リオン先生のせいじゃないよ。
私が出来ないから…」
申し訳無さと不甲斐なさで肩を落とす。
リオンの教え方は、きっと魔法に慣れ親しんだエリュージャル人ならスグに伝わるのだろう。
こういう時、自分が異質な存在と思い知らされる。
一生懸命教えてくれるリオンに申し訳無い。
「…少し、休憩しようか」
「…うん」
持って産まれた才能はどうしようも無い。
ある者には溢れる程にあるし、無い者は逆立ちしても無いのだ。
努力でカバーするのには限度がある。
千種は、学校の勉強は平均以上だが如何せん魔法は縁がない。
「リオン先生の顔に、泥を塗っちゃうね…」
リオンに出された紅茶を口に運びながら、ポツリ口にする。
「…気にするな。
ぼくだって、ここまで来るのに何百年もかかった。
少しずつ出来る様になれば良いさ」
「うん…」
「それに、まずはこの世界の文字を読み書き出来る様にならないとな。
いつまでも翻訳が必要なのもチグサも不便だろ」
「うん…」
リオンが、どうした物かと考えを巡らせる間。
千種はじっとテーブルに置かれたティーカップを見つめ続けた。
何かを睨む様に見ていないと思ったから。
「チグサ?」
「…」
泣いても仕方無いのは分かっているのに。
「今は、焦っても仕方無いんだ。
焦る方が、悪い方向へ導かれてしまう。
だから。ー…ゆっくり深呼吸をして。
チグサの思った通りに動けば良い」
リオンの優しさに、ダメだと分かっていても涙が溢れてしまう。
ー…でも。
(ーーーも、やだ!)
自分の出来なさ具合に腹が立つ。
頭の中に嵐の情景が浮かんだ。
魔法に大切なのは、イメージを明確にする事。
次は、そのイメージをいかに正確に具現するか、だ。
千種はイメージは出来ても具現が出来ないのだ。
雨を降らせる位、初歩の初歩だが生憎と水の一滴も出ないのだ。
「もー!!
雨よ、降れーーーー!!」
声の限りに絶叫する。
リオンは、それでは魔法は発動しないと呆れ混じりの視線で諭す。
分かってる。
リオンの言う事なんて分かっている。
それでも今の千種は、叫ばずにいられなかった。
叫んで。
心の限りに叫んで。
肺と脳内を空っぽにすれば、きっと気持ちが切り替わると思ったから。
ふぅ。と息を吐いた。
「えへへ、リオン先生。
ちょっとガス抜きしちゃった。
急に叫んじゃって、ごめんなさい!」
「それは別に構わないが…」
心配そうに見つめるリオン。
ー…まだ、続けられるか?
と、沈黙の問いを静かに頷き肯定する。
「少し休憩しよう。
買い出しに行って、夕食後にまた復習だ」
「はい、先生…」
取り敢えず、リセットしようと言うリオンの提案に頷いた刹那。
異変は突然やって来た。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる