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今日は11月1日。 
新しい月になり、いよいよ冬の支度に取り掛かる時期だ。 


会議を終え、リオンとティニアがお茶の準備と席を立つ。
(二人は最近お茶の腕を仲良く競い合っているのだ)


ふぅ、とセリアが背もたれに身を預け、一息ついているとアリルがイソイソと近付いて来た。 


「陛下。今日は何の日か、ご存知ありますか?」

「…え?



え…っと。何の日かしら?」



仕事関係の事で忘れている、と言う訳ではなさそうだ。 
現にアリルの表情は、仕事の時の表情かおでは無い。 


(な、何の日だったかしら?何かの記念日…じゃ無いわよね??)


真剣に記憶をひっくり返し、何とか思いだそうとするも皆目見当がつかない。
しんば、何かの記念日だとしても、未だ会議の後片付けをしているジャミルの前で言う訳が無い。 


「…降参です。何の日かしら?アリル神」

「1今日は11月1日。
つまり、ワンワンワン。犬の日ですよ!

女王陛下の忠犬とも言われる、このぼくの為にある日ですよ」


「ーー……」

(…どうしよう。


アリル、真剣よね…。

でもあれ、素かしら?





それとも、ツッコミ待ち??)



満足そうな笑顔で、ドヤと胸をそらしている水神に対し、女王は反応に困りながらやや引き攣った笑顔を浮かべていた。

妙な沈黙が二人の間に流れた時、背後から抱き寄せられる形で、風神が仲裁に入ってきた。 


「陛下、中庭にティニアとリオンのお茶の準備が整った様です。参りましょう」

「で、でも…。アリルが…」


「放っておきなさい。バカが感染る」





…『バカが感染る』とは言い過ぎでは無いか。 

反論すべきか迷っている間に、ズルズルと引きずられる様にジャミルがセリアを中庭へと誘った。


部屋には、流れに乗り損なったアリルが只一人、取り残されていた。


初出→2014.01.29
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