上 下
5 / 51
13番目の苔王子に嫁いだらめっちゃ幸せになりました 【side A】

5 起きれない言い訳& おめかしディナー

しおりを挟む
「…分かりました。では旦那様には夜お会いした時に、ご挨拶させていただく事にしますわ」
 わたしの言葉にバートンは頷いた。

 しかし一つ気がかりな事があった。これは是非伝えておかなければ。
「あの…わたくし、一度眠ってしまうと何があっても目が覚めないのです」
 わたしはバートンに思い切って伝えた。

「なんと…起きないと…?」
「はい。ですから旦那様…ジョシュア様がいらしても目覚めないかもしれません」

「ええと、そうでございますか…」
 バートンは複雑な顔をして頷いていた。

「ですから気張って起きる様には頑張りますが、もしかして眠ってしまいますと…ええと、ジョシュア様がいらしてもご挨拶出来ない可能性がある事をお伝えしていただきたくて。…あの、決して嫌とか悪気があるものではないのですが…」
「はい…わかりました。その様にご主人様にはお伝えしておきます」

 そう言うと、デイジーと名乗ったメイドだけ残してバートンとオリバーは部屋を退出した。

「では奥様…とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「あ、ええ。わたしもデイジーと呼ばせてもらうわ」

 デイジーは終始ニコニコしながら荷物の片づけを始めながら話をしていた。

 自分が生まれた時からこの屋敷にいる事、母親がここでメイド長をしていた事、父親がいま庭師で同じ屋敷で働いている事等だ。

「そうなの…」
 わたしは頷いたが、この大きな城をたった数人でなんとか管理している事が分かった。

(いやいや…大変というか、重労働じゃないの?)
 侯爵家のお嬢様とはいえ、領地経営の勉強までしていたわたしだ。
 この大きな城の管理に人件費や管理費が嵩むのはすぐに分かった。

 だから従業員を減らしているのだろうが、これでは通常業務に支障がでるのでは?――と、不安になる。

「後で…そうね、夕食後でもいいわ。バートンとお話がしたいの」
「分かりました。伝えておきますね」

 管理するために、多少持参金を使っても仕方がない。

 この大きい城をこんな少人数で管理なんか出来っこないはずだ。
 もし出来ていたとしたら――。

「街や村から定期的にボランティアがやってくるので手伝ってもらっています」
 デイジーはわたしの髪を梳かして、金細工の髪留めを着けながら言った。

「とってもお綺麗です。アリシア様…」
「…ありがとう。デイジー」

 夕食のテーブルに着く前に外出着から晩餐に相応しいドレスに着替えたのだ。
 髪色に合わせた色調の淡いピンク色のシルクの生地に、繊細な蔦模様の金と銀糸の刺繍がしてあり、上品かつ華美にならない豪華さがあるお気に入りの一着である。

(わたしのストロベリーブロンドとグレーの瞳に合わせたものだしね)

 わたしは、あまり直接綺麗と言われたことがないので、ちょっと気恥ずかしさがあったのだが。

「あまりいわれたことが無いから…恥ずかしいわ」
「ええー!?でもすっごくお綺麗ですよ?びっくりしましたもの。
 こんなにお綺麗な方が沢山お金も持って嫁いで来られるなんて…」

 わたしは思わず苦笑してしまった。
 察するにどうやらデイジーは、結婚ができない位の不細工なお嬢様が持参金にモノを言わせて輿入れする、と思っていた様である。

 わたしの隣にはいつも美しいシャルルがいたので、自分の容姿についてはすっかり諦めていたのだが。

(…もしかしてだけどイケてるんじゃないの?)
 そう分かったのは、ここに着いて初めての嬉しい驚きでもあった。

 しかし夕食の席に着いて――いや、食事の間に入る前からこんなに着飾ったことを後悔をしていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る

束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。 幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。 シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。 そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。 ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。 そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。 邪魔なのなら、いなくなろうと思った。 そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。 そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。 無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

【R18】国王陛下はずっとご執心です〜我慢して何も得られないのなら、どんな手を使ってでも愛する人を手に入れよう〜

まさかの
恋愛
濃厚な甘々えっちシーンばかりですので閲覧注意してください! 題名の☆マークがえっちシーンありです。 王位を内乱勝ち取った国王ジルダールは護衛騎士のクラリスのことを愛していた。 しかし彼女はその気持ちに気付きながらも、自分にはその資格が無いとジルダールの愛を拒み続ける。 肌を重ねても去ってしまう彼女の居ない日々を過ごしていたが、実の兄のクーデターによって命の危険に晒される。 彼はやっと理解した。 我慢した先に何もないことを。 ジルダールは彼女の愛を手に入れるために我慢しないことにした。 小説家になろう、アルファポリスで投稿しています。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話

もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。 詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。 え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか? え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか? え? 私、アースさん専用の聖女なんですか? 魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。 ※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。 ※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。 ※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。 R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。

ドS騎士団長のご奉仕メイドに任命されましたが、私××なんですけど!?

yori
恋愛
*ノーチェブックスさまより書籍化&コミカライズ連載7/5~startしました* コミカライズは最新話無料ですのでぜひ! 読み終わったらいいね♥もよろしくお願いします! ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ ふりふりのエプロンをつけたメイドになるのが夢だった男爵令嬢エミリア。 王城のメイド試験に受かったはいいけど、処女なのに、性のお世話をする、ご奉仕メイドになってしまった!?  担当する騎士団長は、ある事情があって、専任のご奉仕メイドがついていないらしい……。 だけど普通のメイドよりも、お給金が倍だったので、貧乏な実家のために、いっぱい稼ぎます!!

【完結】【R18】男色疑惑のある公爵様の契約妻となりましたが、気がついたら愛されているんですけれど!?

夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
「俺と結婚してくれたら、衣食住完全補償。なんだったら、キミの実家に支援させてもらうよ」 「え、じゃあ結婚します!」 メラーズ王国に住まう子爵令嬢マーガレットは悩んでいた。 というのも、元々借金まみれだった家の財政状況がさらに悪化し、ついには没落か夜逃げかという二択を迫られていたのだ。 そんな中、父に「頼むからいい男を捕まえてこい!」と送り出された舞踏会にて、マーガレットは王国の二大公爵家の一つオルブルヒ家の当主クローヴィスと出逢う。 彼はマーガレットの話を聞くと、何を思ったのか「俺と契約結婚しない?」と言ってくる。 しかし、マーガレットはためらう。何故ならば……彼には男色家だといううわさがあったのだ。つまり、形だけの結婚になるのは目に見えている。 そう思ったものの、彼が提示してきた条件にマーガレットは飛びついた。 そして、マーガレットはクローヴィスの(契約)妻となった。 男色家疑惑のある自由気ままな公爵様×貧乏性で現金な子爵令嬢。 二人がなんやかんやありながらも両想いになる勘違い話。 ◆hotランキング 10位ありがとうございます……! ―― ◆掲載先→アルファポリス、ムーンライトノベルズ、エブリスタ

冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!

仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。 18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。 噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。 「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」 しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。 途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。 危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。 エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。 そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。 エルネストの弟、ジェレミーだ。 ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。 心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――

処理中です...