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第13章 最終決戦・"龍神の体内"

右腕悪魔は主人を想ふ

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 _____人間は嫌いだ。





 「"ひれ伏せ"」


 「ッ、かい、じょ、まほ………言霊解除!」



 言霊呪文を使い全員をひれ伏させたのに、私と同じ燕尾服を身に纏う男の解除魔法によって掻き消された。面倒くさい。



 それに。





 「聖魔法!聖なる泉!」





 白と黒のツートーンの二つ結びをした女が呟くと、足元から聖の魔法を纏った斧が飛び出る。それを羽根を出して躱すものの、既に空中には金と赤のオッドアイの人狼がいた。




 きん、かきぃん、と爪と剣を交える。




 煩わしい、煩わしい、煩わしい!
 何故この者達は私に歯向かう!?

 私は悪魔だ!アンデッドでも最上位の存在だ!人間風情が触れていい存在では無いのだぞ!




 私に触れていいのは____この世に2人だけだ。



 ガーランド様、アルティア様。



 ……………本当は、お二人が戦うのを止めたくてここに来た。ガーランド様は悪しき亡者の思いに縛られている。



 私がお2人を慕っているのは龍神だからでは断じてない。



 私を助けてくださったガーランド様と、その御子であるアルティア様だからこそ私はこう思ったんだ。




 「闇魔法、グラビドン」




 「…………!」




 闇属性である重力を3人に当てた。言霊呪文よりも上位の魔法だ。これを解ける人間など______!?



 「っ、くう………!」



 「…………アルさ、ま!」


 「こんなの、聖女が膝を着くわけないじゃ、ない………!」




 3人は重力に逆らって、立ち上がろうとする。


 何故…………………



 「っ、なぜ!貴様ら人間が歯向かう!?何故!諦めぬのだ!」



 思わず、声を張り上げた。
 わからなかった、なんで立ち上がるのか。ここまで来ると恐怖さえ覚える。


 そんな私の言葉に、人狼が答えた。




 「アルさま…………好きだから、アルさまの、しあわせのために!ガロは戦う!」



 「ッ、ガロちゃ、貴方ちゃんと喋れてるわ…………………ガロちゃんのおかげで、元気湧いてきた…………………リーブ、やるわよ」




 「ええ……………ガロには、負けていられませんね……………



 闇魔法、解除!」




 「!」




 燕尾服の男がそう叫ぶと、重力の魔法が弾かれた。それと同時に、銀色の狼___人狼が食らいついてきた。




 「ぐぁぁっ!」



 パキパキ、と噛まれたところに氷が張る。両手足を氷で固められた。


 そして。



 黒と白のツートーンカラーの頭の女の手には_____とても大きな、聖の魔力を感じる弾。



 「最近アルティア先輩の技を見たから真似してみた!………喋り方もアルティア先輩に寄せようかな?



 _______あなたの言葉に、答えてあげる。

 私達もアルティア先輩が大事だから、アルティア先輩に拾われた恩に報いる為よ…………あーーーやっぱり私には無理だーーーー!


 とにかく、いっけえええ!」
  





 女はその弾をこちらに向かって放った。
 その光を見て____思い出した。


 ガーランド様がまだ龍神じゃなかった時、この人に一生着いていこう、と。



 ______ガーランド様、私は先に逝きます。


 _____待ってますよ。




 「ガーランド様万歳、アルティア様、万歳_______」






 カイテルは聖の光に飲まれて、チリとなって消えていった。





 パラパラと上へ上へと飛んでいく黒い流砂は、禍々しいのにとても温かい感情をその場に居たものに感じさせた。



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