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第12.5章 "隠された真実"と"真なる王"

魔剣は語る

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 ガーランドの言葉に、ダーインスレイヴは怒鳴った。そして、必死にガーランドに言う。



『龍神を辞めれば…………生きていれば、その夢だって叶うかもしれないだろう!?』


『ヤケなんか起こしてないぞ!俺なりに考えたんだ!……………サイファー、いいのか?』



 ガーランドはそう言ってサイファーを見る。サイファーは優しい笑顔で、頷いた。



『もちろんだ』



『……………そうか。なら、行くか。ダーイン、お前はとっとと帰れよ』



『サイファー!ガーランド!』



 先に進もうとする2人に、再びダーインスレイヴは呼び止めた。ガーランドはイラついたような口振りで怒鳴る。



『なんだよ次は!』


『初代龍神は死なない!次はガーランドに乗り移る!何も変わらないんだぞ!?

 ガーランドは龍神に縛られ、サイファーは命を落とす………………
 この流れを変えないと、2人の行動は無駄だろう!?』


『___でも、こんなに強いガーランドが龍神になれば初代龍神を完全に抑え込めるかもしれない。存在を消せるかもしれない。


 …………賭けてみるさ』



 そう言ってサイファーはまた笑った。こんな状況でも笑顔を絶やさないサイファーを横目に、ガーランドはうーん、と呻き声を上げた。


『ま、ダーインの言うことも最もだな。よし、俺がなんとかしてやる』
  

『!何か策はあるのか!?』



 食い気味に聞くダーインスレイヴに、ガーランドは言う。




『龍神はよ、俺みたいに異世界から魂を呼べるんだ。それを子供として育てる。

 世界をありのまま受け止めるなんて可愛い魂は選ばない。


 だから、よ…………ダーイン、頼むぜ?』


 ガーランドは歯を見せて、笑った。
 2人は開かれた扉の向こうへ行ってしまう。

 ダーインスレイヴは……………その場で膝を着いた。




 「………………ッ」



 「ダーインスレイヴ様………?」




 ダーインスレイヴは、剣を持って自分の残像の後ろに立った。そして、剣を振り回す。



 「ッ、へっ!うぉぉ!ハァッ!」



 何度も何度も残像に当てようとするが、残像は勿論切れない。しばらくそれをしてから____悲しい声で呟いた。



 「そして………………何も変わらなかった」



 「_____私達が、変えてやる」



 「!」



 ダーインスレイヴの言葉に口を挟んだのは………………誰でもなく、アルティアだった。ラフェエルは言う。


 「どうやって…………!作戦など何も無いんだろう?!」


 声を荒らげるラフェエルの肩をぽん、と叩いたクリスティドが続けて口を開いた。

 「…………私が、契約者のフリをして食われよう。サクリファイスの人間ではないが、これでも妖精神と契約を交わした人間だ。使えるだろう」



 「ガロ、も、いい、よ」



 「わ、わたくしも…………」



 「私も!聖女だし!」

 「私がラフェエル様の代わりになるのであれば……………」



 クリスティドの言葉に我先はと声を上げる。しかし、アルティアはそれをよしとしなかった。


 「それじゃあガーランド達とほとんど一緒じゃない!私が初代龍神に縛られて、誰かが死んで、………それだけだよ!

 初代龍神がこの世界を狂わす現実は変わらないんだ!」



 「……………アルティア様」


 肩で息をするアルティアに、クリスティドは近づいた。



 「初代龍神を消して、ラフェエルを殺さない、………そんなに沢山のものを欲張ってしまっては、全部失敗してしまうかもしれません」




 「………………嫌だ、欲張る」











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