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第11.5章 交差する想い達よ
次期龍神と生贄皇子 #5
しおりを挟むまた、突然だ。
ラフェエルはいつだって突然だ。
初めて契約した時も、旅に出る時も、………挙げたらキリがない。
今もだ。
私は、ひまわり畑に囲まれて、キスをされている。…………告白、しようとしてたのに。
ラフェエルが言わないなら、私が、って考えてたのに。
ラフェエルの唇が離れた。銀の糸を引いた唇は濡れている。その唇が、言葉を紡いだ。
「その言葉は___言うな」
「………………え?」
「お前が今言おうとした言葉は、私が生きてる間、絶対に言うな」
ラフェエルはそう言って、私から離れた。大きいのに寂しい背中に、私は声を荒らげた。
「なんでよ!私の気持ちなんだから、私の勝手でしょ!ラフェー……いえ、ラフェエルが私と同じ気持ちじゃなくても、私はッ…………」
「同じ気持ちだから言うなと言っているんだ!」
「______!」
サァ、と風が吹いた。黄色の花弁が空に向かって舞う。私の髪もさらさらと舞う。それはラフェエルの紅銀の髪も同じだ。
「私…………いや、俺は_____お前が今言おうとした想いを持っている。
だが、それは…………叶えられない」
「っ、なんでよ………………叶えようよ、私も頑張るよ、ラフェエルが死なない理由、考えるよ!だからッ………………」
「……………………すまない。アル……アルティア。
お前が何を言っても、俺は____死ぬ道を選ぶ。お前はそれで龍神になり、幸せになるんだ。俺のことを忘れて、この世界を………………この、悲しい世界を変えてくれ。
そうすればきっと、俺達はまた出会える。
その為の___縁の紐だ」
「…………………ッ!」
私はひまわりから離れて、ラフェエルの背中に抱き着いた。
私達は、両想いだ。
でも、私達は結ばれないんだ。
……………結ばれないの?
「巫山戯んな、巫山戯んな………!」
アルティアはそう口にしながら、俺の背中に抱き着いて泣いている。
俺達は、同じ気持ちだ。
だけど、俺達は結ばれることがない。
______この言葉を信じたくないと、思っていた。
______絶対使わない、と思っていた。
______期待しない、と思っていた。
なのに、今、すごく思う。
本当に"輪廻転生"があるとしたら、もう一度俺を人間に転生させてくれ。
人間でなくてもいい。
背中で泣くこの女を愛せる身体であればなんでもいい。
______俺にもう一度、コイツと出会わせてくれ。
俺は右手に括られた、黒い宝石の着いた縁の紐に、唇を落とした。
* * *
私は、泣きながら願った。
もう自由も、幸せも要らない。
命もいらない。
力もいらない。
望まない、望まない、望まない。
ただ1つ。
ラフェエルを死なせない道を私に示してください。
その為なら、私は、全てを差し出します。
だから、どうか_______私をここまで思ってくれるラフェエルが死ななくていい方法を私に授けてください。
絶対私は_____その道を選びます。
どんなに残酷なものでも、過酷なものでもいい。
私はどんな茨の道でも、歩んでみせる。
そう、大嫌いな神に初めて祈ったんだ。
クスクス。
クスクス。
祈っている時、笑い声が聞こえた。
そして、その笑い声が言ったんだ。
"ワールドエンドに行けばその方法がわかるよ"と。
その声は_____前世の私の声だった。
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