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第11.5章 交差する想い達よ

※聖女は重度のお節介です

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 「おい、とっとと歩け」



 「は、はひ!」



 沢山の人混みの中、手を繋いで歩く2人を物陰で見ている影が5つ。



 「あーーーーもうっ!じれったい!先輩なんであんなにカチコチなの!?」



 そう憤る白いフードを被ったフランをエリアスが宥める。


 「ま、まあまあ、フラン様、ラフェエル様のようにお美しい方とあんなに密着して歩いてたら、そうなりますよ…………」




 「折角のデートなんだからもう少し楽しそうにすりゃいーのにねえ」



 そうのんびり言いながらどこから買ってきたのか焼き鳥を頬張る黒いフードのダーインスレイヴに、青いフードを被ったクリスティドは合いの手をいれる。




 「アルティア様はとにかく、ラフェエルはどうしてもう少し優しくエスコートしないのか。あんなに美しいレディを連れているというのに……………」




 「ラフェエル様は多くの女性と関係を持っていましたが、デートなどしたことがないので……………」



 そう主人をフォローする茶色のフードのリーブ。リーブの足元にくっつく街の子供のような格好をしたガロは首を傾げる。



 「あれ、たのしい?しあわせ?」



 「楽しいっつーより、楽しめてない、っつーかなぁ」




 「………………………」




 ダーインスレイヴが呆れながらそう言うのを他所に、フランは親指の爪を噛んだ。 




 本当ならこういうイベントでヒロインになるのは私だ。でも、アルティア先輩に幸せになって欲しくて、今は違うとはいえ1度好きになったラフェエル様が死にたくない、と思わせるために私は譲ったのだ。



 なのに、なにあれ?


 全く楽しめてないじゃない。


 折角チャンスを上げたのに活かせてないなんて!



 ……………………こうやって怒っているのが八つ当たりだって言うのもわかっている。私はきっと、アルティア先輩が羨ましいんだ。


 きっとこの世界が小説なら、間違いなくヒロインは私じゃなくてアルティア先輩だ。……………未だに私はヒロインの肩書きを欲しがっている。



 でも。




 一緒に旅して、一緒に色んなことをして、沢山お喋りして。



 アルティア先輩がいい人だっていうのもわかっているのだ。そりゃ、冷たい時もあるし非人道なことをすることもある。でもそれは、前世の記憶や生い立ちを考えれば、それらを含めて"アルティア先輩の人柄"なのだ。



 悪いのはアルティア先輩じゃなくて、アルティア先輩の環境だ。つまり、アルティア先輩自体に罪はほとんど無い。



 意味のわからない使命をくっつけられて、みんなが当たり前のように得られる"小さな幸せ"さえ感じられなくなってしまったアルティア先輩。




 幸せになって欲しい。



 そう思うからこそ、こういう時とてももどかしく感じてしまうんだ。





 _____ねえ、アルティア先輩。



 先輩は自分を"ヒロインじゃない"って言うけど。

 女の子はみんな"ヒロイン"なんだよ。



 好きな人と好きなことをして幸せになっても良いんだよ。



 どんなに小さな幸せでもいい。寝て起きて「ああ、幸せだ」って思えるようになって欲しい。


 だからこそ。

 みんなこうして、2人を見守っているんだよ。


 みんなに愛されてるんだよ。




 _______幸せに、なっていいんだよ。





 「……………私、ちょっとアルティア先輩怒ってくる」



 「それはだめだよ、フラン嬢」


 「そうです!………どんなに不格好でも、お2人は大丈夫です!」




 身を乗り出そうとするフランをクリスティドとエリアスは止めた。悔しそうに顔を歪めるフランに、ダーインスレイヴはぽんぽん、と頭を優しく叩いた。





 「フランも中々に面倒みがいいし、明るいのも知っている。…………君も十分"ヒロイン"だから、大丈夫だぞ」




 「…………………………嘘でもお世辞でも、ありがとう」




 フランはダーインスレイヴの言葉にほんの少しだけ顔を赤くした。


 べ、別にそういうのではないわよ!私が好きなのはガーランド様だし!ダーインスレイヴなんてノー眼中なんだからッ!



 少し優しくされたぐらいでオチる女じゃ、ないんだからねッ!












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