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第11.5章 交差する想い達よ
人狼側近は頑張る #2
しおりを挟むガロはパタン、と扉を閉めてからもじもじしている。…………何しに来たんだ?
不自然な態度を取るガロに、ラフェエルが思った通りのことを聞く。
「どうした。アルならここに居ないぞ」
「…………ガロ、ラフェーさん、お願い、あって、きた」
たどたどしい言葉でそう言う。…………この小僧は読み書きも武術も魔法も満遍なくできるが、喋るのだけはどうしても苦手だ。だからそれはいい。
だが、なんだこの態度は?
怪訝そうな顔をするラフェエルに、ガロはしばらくモジモジしてから意を決したように言った。
「ガロ、アルさま、ラフェーさん、と、お出かけしたい」
「出かけ?」
そう聞き返すと、こくりと頷く。そして、再び口を開いた。
「ここ、の、街、みたい。ガロ、1人、こわい。だから、ついてきて」
「……………………」
ラフェエルはあからさまに嫌な顔を作った。
城下町など皇族が行く場所ではない。ただでさえ人混みが嫌いなのに、人の集まる場所に自ら行くバカがどこにいる?
「………………行くなら一人で行け。外出の許可は出してやる。貴様なら一人で大抵のことはできるだろう?襲われても自分で処理しろ。
金はアルが渡すだろう。話は終わりだ」
そう素っ気なく返すラフェエル。
予想通り……………というか、フランさんが言った通りの対応をされた。
だから、ボクもフランさんに言われた通りの言葉を口にする。
「……………アルさま、一緒、ガロ、アルさま、と、デート、する」
「………………!」
デート、という言葉にラフェエルはぴくり、と反応した。ガロはぎゅ、と自分の服の裾を掴んで続けた。
「ラフェーさん、から、アルさま、奪う。ガロ、アルさま、と、いちゃいちゃ。
いい、ふんいき、ちゅー、する。手、つなぐ、おいしいもの、たべる、アルさま、ガロ、好き、なる。
それでも、い?」
ガロはいつの間にか出ていた耳を立てて、金色と赤色の瞳でラフェエルを見た。
………………安い挑発である。
挑発しながら涙目をする者がどこにいる?恐らく幼いガロの考えたことではない。誰かが吹き込んだか……………
本来ならこんな挑発に乗らない。
けれども、アルティアが関わってくるなら話は別だ。
この子供はいくら女のような顔をしていても男だ。そして、アルティアの側近として傍で生きていく。…………私が死んだ後も、ずっと。
おまけに人狼は長寿らしい。精霊の血も引いている。アルティアとそういう関係になってもおかしくない生き物なのだ。
そう考えると…………………口が、勝手に動いた。
「……………………いいだろう。私もついて行ってやる。それでいいだろう?」
「………………!う、ん!」
そう言って、本当に嬉しそうに笑うガロ。自分が挑発したというのを忘れているらしい。
これをガロに仕込んだ奴を必ず罰してやろう、と決意してから立ち上がった。
* * *
「ええ!?ガロの誘い受けたの!?」
夜、アルティアは大きな声をあげた。その目の前には、片手にワイングラスを持って優雅に座るラフェエルがいた。
ラフェエルは目を瞑りながら答えた。
「ああ」
「あの!出不精な!人の言うこと全く聞かない!ラフェーが!?信じらん___っぎゃぁぁぁぁぁ!」
言い終わる前に罰という名の雷が落ちた。いやでも、本当に雷が落ちた衝撃。ラフェエルが街に行く!?なんで!?ガロ、どんな手を使って丸め込んだ!?
ガロってもしやすごい子なのかも、と思ったアルティアでした。
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