上 下
212 / 270
第11章 "宿命"を変えるには?

秘密の作戦会議 #1

しおりを挟む
 





 「ではでは、みなさん!作戦会議開始です!」



 サクリファイス皇城、応接の間。立派で煌びやかな赤いカーペットの上でフランは人差し指を天に掲げるポーズを取りながら大声でそう言った。


 クリスティドはそれを見て呆れる。





 「作戦会議というのは、もう少し静かに行うものだろう?フラン嬢。

 前のようにアルティア様が突然いらっしゃったらどう言い訳するのだい?」



 「それはその時考えます!」



 「フランはいつも元気だな~、もう尊敬の域だ。あー面白い。


 で?なんの作戦会議なんだい?」



 ダーインスレイヴはソファに深深と座り、優雅に紅茶を飲んでから尋ねた。するとフランは待ってました!と言わんばかりに言う。



 「勿論、ラフェエル様が死ななくて済む方法を考えるんです!」



 「それはみんなそれぞれやってるだろう?リーブは伝承を、私は妖精神達に話を、エリーは魔法書を、ガロは動物達に聞いて……………………フラン嬢は聖女の力を使ってセイレーン皇城の禁書庫から禁書の持ち出し……………それとも、何か情報を得られたのか?」




 「まったく!これっぽっち!情報はありません!」



 「…………断言…………」



 威張るように胸を張ってそう言うフランに、ガロは眉を下げる。ガロは動物と話せる能力を使っているが、動物達もそんなに長くは生きない。龍神のことを知らない動物の方が多いほどだ。



 それもあって落ち込むガロの頭をダーインスレイヴは撫でる。


 「つまり、何も情報を得られない状態で作戦会議をする、と?

 破綻しているなぁ」



 「ダーインスレイヴ様がワールドエンドのことを話してくださればこんなに頭を悩ませることはないんですけどね」



 クリスティドはじろ、とダーインスレイヴを睨む。ダーインスレイヴはふい、と顔を逸らした。


 ダーインスレイヴの言うことが正しいのであれば、彼は5000年前現龍神と共に旅をして、ワールドエンドに到達した、…………この世でワールドエンドを詳しく知るのはダーインスレイヴだと言っても過言ではないだろう。



 けれど当人は揺すっても叩いても口を割らなかった。『行けばわかる』などという適当な言葉しか並べないから頼りにならないのだ。フランの執拗な取り調べでも笑って流している。どうしても口を開く気は無い。



 何をそんなに頑なに話したがらないのかさえわからず、聞く時間が勿体ないということでもうダーインスレイヴに話を聞こうとする者はいなかった。



 「……………じゃあ!それ以外を考えましょ!改めて題して!ラフェエル様とアルティア先輩をくっつけちゃおう大作戦!」




 「はあ?」




 急な方向転換に、ダーインスレイヴはいつものポーカーフェイスを崩した。勿論、それを聞いていた全員も。クリスティドは戸惑いながら聞く。




 「何を言っているんだ?フラン嬢」



 「クリスティド様も知ってますでしょう?あの二人!5日前からとっても距離が近いの!…………きっとラブコメ展開があったんですよ!」




 5日前____ファーマメント王国の神殿に泊まった時だろう。確かに、あの日からアルティアとラフェエルは一気に距離を縮めていた。人目を憚らずくっつき、なにかと互いの世話をしているのは仲間内に周知されていた。


 フランは続ける。



 「あの二人、絶対デキてるし、いっそくっつけちゃえば『やっぱり死にたくない、生きよう』ってなると思うんですよ!


 何より、小説的にはそろそろ2人にくっついてもらわないといい話を書けないのです!」 



 「小説?」



 「私が書いている小説です!転生した少女は龍神で、ヒロインで………ヒーローと幸せを掴む溺愛ストーリー………フィクションてんこ盛りですけど、ちゃんと忠実に基づいているんですよ!ヒロイン役であるアルティア様は漫画みたいなチート能力持ってるし………だから………で……」



 フランはペラペラと饒舌に語るが、仲間達は全員首を傾げていた。………フランはいつもこういう訳の分からないことばかり言うから慣れてはいるが。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...