199 / 270
第10章 生贄皇子救出大作戦、始動
僅かに芽生えた感情
しおりを挟む『お前達龍神は人を殺すのになんの感情も抱かないのだろう?だから生贄などということができるのだ。
そんな者が守る?…………笑わせるな』
「っ、ぁあ…………!」
空の妖精神はレイピアで縦に肉を割いていく。
痛みの中、ぼんやりと思う。
………………その通りだ。
私は、人を殺すことをなんとも思わない。
人間は嫌いだった。
神様も嫌いだった。
それは根深くて、未だにその気持ちはある。
……………………だけど。
目を閉じれば、みんな___共に旅をする仲間の姿と、関わった妖精神や精霊の姿_____そして、ラフェエルの顔が浮かんだ。
『____!』
スカイのレイピアが動くのを辞める。アルティアが……………刃を手で掴んでいた。
そして、言葉を紡ぐ。
「殺すのになんの情も抱かないよ……人の心なんて、もうないのかもしれない………でもねえ、大切な人は____居るよ、沢山」
『ッ、離せ!』
「ッグ…………」
アルティアは掌から血を流しながらもそれを掴んで話さない。口からも血が流れているってことは、内蔵やっちゃったのかな………………でも、いい。そんなの、構ってられない。
「ラフェエルは…………ううん、ラフェエルだけじゃない……………私の大切な人全員死なせない…………………
その為に、私は____アンタに勝つ!」
『_____!』
アルティアはスカイを思いっきり蹴ってダーインスレイヴを握る。青紫の剣はドクン、と脈打った。
『よく言ったね、アルティア。
いい子な君に_____プレゼントだ』
「ッう!?」
剣のダーインスレイヴが光った。防御力、回避力、瞬発力、攻撃力、超攻撃力………………沢山のステータス向上魔法が勝手に溢れ出す。
……………魔法は使わないって決めてたのに…………ダーインスレイヴ、あんたはとっても勝手な人ね。
『お前には負けるさ。ほら、行こう』
うん_____うん!
「うぉおおおおおお!」
アルティアはスカイに向かって走る。スカイのレイピアが伸縮自在に、沢山の幻影を纏って放たれる。
アルティアは全てかわした。多少の切り傷で乗り切り懐まで来て_____
『ぐぁ………………ッ!』
スカイの胸元を一閃、切り裂いた。
空色の血が飛び散る中、アルティアの黄金色の瞳は____仄かに煌めいていて。
黒、空、黄金の色が___混ざりあって、とても綺麗だった。
* * *
_____私は、負けたのか?
地面に倒れるスカイは、オレンジ色に染まっていく空を見上げながら、思う。
私は龍神にまた負けたのだ。
ガーランドと言う男_今では現龍神だ_に負けた時のことを思い出す。あの時も、第1皇太子を巡ってだった。
私は___サイファーが、好きだった。
ずっと空から彼を見ていた。生まれた時からずっと見守っていた。
生贄として生きる第1皇太子は、初代ゼグスからずっと血にまみれていた。それが宿命だと酒池肉林を極め、戦場では沢山の命を奪う。そんな人間は嫌いだった。
けど、サイファーは違った。
死を受け入れつつも、それでもいつでも優しかった。第1皇太子としての教養を持ちながら、人をほとんど殺したことがなかった。
当時の龍神は不満だったようだが、それでも私はサイファーが好きだった。
興味から恋慕になるのは簡単だった。
___けど、サイファーはガーランドに命を捧げると言っていた。反対してガーランドに襲いかかった。それで負けて…………サイファーは、ガーランドと共にワールドエンドの地を踏んだ。
サイファーを助けると言っていたガーランドは、結局私との約束を破り龍神になった。
だから、私は_____…………?
不意に、身体が優しい光に包まれる。
光の方向を見ると_____憎きガーランドの娘が、治癒魔法を使っていた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います
ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」
公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。
本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか?
義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。
不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます!
この作品は小説家になろうでも掲載しています

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる