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第10章 生贄皇子救出大作戦、始動

生贄皇子は幽閉される

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 「はっ!」




 その頃、ラフェエルは剣を奮っていた。目の前には____空色の髪をポニーテールにした騎士風の女、その瞳は金色だ。


 女は軽々と受けながら、自分も剣を振るう。ラフェエルも負けじとそれを防ぎながら、口を開いた。



 「私をッ、ここから、出せッ!」



 カキィン、と刃が交わる。ギリギリと鉄の音を聞きながら女は言った。



『_____我はお前を助ける』


 「そんなのッ、願っておらん!巫山戯るな!」



『巫山戯てなどいない。…………ワールドエンドで死ぬことがお前の運命など、我が覆してみせる』



 「ッ、ならば自分で出ていく!」



 ラフェエルは蹴りを繰り出した。しかし女は予期したかのように鳩尾に手を出していた。ガッ、と足を掴まれる。女はそのまま話した。




『何故龍神の為に人間が死なねばならん?我にはわからない。この世界は元々我ら妖精神と精霊、そして人間などの生物の世界だ。


 "亡者達の思い"のせいで龍神は生まれた。だが、もう10万年前のこと。罪は充分償われ、我々は自由になるべきだ。



 お前も含めてな』



 「ッ!」




 女はそう言ってラフェエルを突き放した。そして、剣_レイピア_を鞘に仕舞う。ラフェエルは怒鳴った。



 「…………………なんのつもりだ」


『鍛錬はこれくらいでいいだろう。お前は筋がいい。人間にしてはな。そのような武技を身につけさせられたのも、沢山の血の匂いを纏うのも……………全て憎き"龍神"のせいだ』


 女は吐き捨てるようにそう言って、玉座に座る。




 ____また、倒せなかった。





 ウィットという風の精霊から連れ去られ、アイスバーンから離れて2日が経とうとしていた。


 勿論、抵抗はした。
 だがウィットがトカゲの姿になって、私の刃は虚しく折れた。なけなしの魔力で伝達魔法を放ったが………………それがちゃんと届いたのかは知らない。




 そして私は___抵抗虚しくこの女……否、空の妖精神・スカイの聖域に連れてこられた。



 拘束はされなかった、しかし聖域内から出られない。そんな状況である。



 聖域だからアルティアを呼び出すことも出来ず、力ずくで出ていこうとしてもスカイに邪魔をされる。



 スカイは無口な女だった。発せられるのは『ワールドエンドには行かせない』『龍神が来ても我が追い払う』『龍神を殺すまでここにいろ』という内容のものだけだ。




 以前、フランに連れ去られた時はまだマシだった。
 フランは聖女ではあるがアルティアに勝てなかったらしいし、カーバンクルも同様だった。



 しかし。



 この妖精神は強い。



 今までの妖精神のように魔法を使わずにレイピア1本でいなされる。神というより武人である。




 アルティアが負けるところなど想像できないが、この女に勝てるという想像もできない。



 …………………この2人がぶつかったらどうなるか全く想像できないのだ。




 けど、確信していることはある。



 アルティアは必ず、この国に来る。

 そしてどんな手を使っても私を救い出す。


 ……………そういう女だ。あいつは。


 馬鹿で可愛げがない上に滅茶苦茶、だけどなんだかんだ面倒事に首を突っ込み解決するのがアイツなんだ。



『____よほど、龍神に執心しているようだな、サクリファイスの第一皇太子よ』

 「………………………!」



 スカイが威厳のある声でそう言った。
 不愉快なものを見るかのような形相だ。



『"あの男"もそうだった。人や妖精神を誑し込む天才で、そのせいで我も騙され___結果、"あの方"を殺したんだ』



 「………………どういうことだ?」










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