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第10章 生贄皇子救出大作戦、始動

下準備は万端です

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『な、何が起きてるの!?』




 ワタシは慌てた。締め付けられたと思ったら突然黒い魔法陣が生まれたから。この力は……………闇?いや、違う。なにかおかしい。


 ワタシは現聖の精霊・カーバンクルをも超えると言われている上位精霊よ!?なのに、わからないなんて…………!



 何が起きるというの!?




 ジタバタとワタシは暴れる。
 けれど、力の差は歴然で…………全く身体が動かない。


 そうこうしているうちに、龍神がワタシの耳元で囁くように言った。




 「____特殊魔法・"弱点交換ウィークネスチェンジ"」



『!?』



 身体が重くなった。龍神の身体から黒い魔力が出て、ワタシの身体からはピンクの_風の魔力_が出た。それを交換するように、互いの身体に滑り込んでいく。



 異常は……………ない?





 ______クスクス。



『………………?』



 龍神が、笑っている。黄金色の瞳を細めてワタシを見ている。一通り笑ってから、大きな口を動かした。


 「____今は気分がいいから、特別に教えてあげる。


 この魔法はね、"弱点"を交換するの。私の弱点は"聖"の属性、貴方は…………きっと"土"よね?貴方の魔力からそう感じるわ」



『なんで………そんなこと……………』



 確かに、私の弱点は土の魔法だ。
 けどそれは、先程跳ね返した。

 しかし龍神はそれを忘れたかのように振る舞う。



 「つまりね、今の貴方の弱点は"聖"魔法。"聖"の攻撃を食らったら____ただではすまないわね?



 そして____私が乗っていたヴァル_あの白い鳥ね_は、"聖"の幻獣………………………聖魔法を扱うわ」





『……………………!』





 身体から血の気が引いていくのを感じる。それがどういうことか____私には、分かってしまったから。




『や、やめてちょうだい……………』



 「あら?さっきの余裕はどこにいったの?怖い?震えてるわよ?……………なんてね。

 怖くても、嫌でも、関係ない。


 _____大好きな神にでも、祈りなさい」



 そう言って龍は、鳥を見た。
 カチカチと歯を鳴らす私を無視して___言った。
   
  


 「ヴァル_____"聖なる審判ホーリーレフェリー"」




 鳥はそれを聞いた瞬間、グルンと頭を回した。結ばれた髪が一回転して円を描くと、白い魔法陣が生まれる。




 嫌だ。


 怖い。


 来る。




 ヴァル、と呼ばれた鳥は口から白い光の魔力の塊を作って___吐き出した。

 白い光の魔力は、魔法陣を突き破った瞬間大きい光線に変わった。


 それが私と龍神目掛けて伸びてくる。
 眩しい光の中_______私は呟いていた。




『スカイ様……………申し訳ございません________』




 光の光線は_____龍神に縛られるピンク色のドラゴンを飲み込んだ。




 *  *  *



 「……………………ふぅ」


 アルティアは全裸で、名も知らぬピンク色の頭と髭を生やす男を抱えながら浮いていた。



 弱点を変えたとはいえ、直撃した聖の魔法は痛い。まあでも、命令したのは私だし、虫の息に出来たのは上々、かな。




 「アルティア様!」




 ヴァルの背中に戻ってくると、エリアスの幻獣・リンカネーションの背に乗ったクリスティドが私を呼んだ。見たら、真っ赤な顔を手で隠していた。………?どうしたんだろう。



 「アルティア様!お召し物を纏ってください!」




 「あ」



 そうだった、私今裸だったんだ。
 すっかり龍の姿になっていてエリアスの言葉で失念していたことに気づく。龍の姿は楽だけど、服が破れるのはだめね。


 そんなことを思っていると、ふくらはぎにどこから持ってきたのか、シーツを押し付けるガロがいた。



 「ありがと、ガロ」


 「アルさま、強い、ガロ、びっくり」



 珍しく興奮しているガロにふ、と笑みを零して頭を撫でる。シーツを被ってリーブを見た。



 「そっちはどう?」


 「滞りなく、いつでも解除できます。


 丁度、10分経ちましたので」



 「おーけー」



 「…………ねえ、カーバンクル、私もアレ使いたい」


『……………僕は、その、できません……………』


 ヴァルのことを指さしながら言ったフランの言葉に、カーバンクルは耳を伏せた。












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