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第10章 生贄皇子救出大作戦、始動

龍VSドラゴン

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 「土魔法」




 アルティアは手を前に出し、カーキー色の魔法陣を身に纏う。


 ……………まずは相手の出方を見るか。



 そう考えたアルティアは続けて、静かに呟いた。



 「___|石像ストーンスターチー



 「………………!」




 オカマの身体が岩になっていく。
 この魔法はグランドから貰った魔力を練って作り出した応用魔法だ。



 あっという間にオカマは文字通り石像になった。……………他愛もない。10分もかからなか_____!?





『………………ずいぶん痛いご挨拶じゃない』



 石像が動いた、と思ったのも束の間、石が弾けて無傷のオカマが現れた。派手な服をパンパン、と払っている。


 アルティアはそれを見て顔をひきつらせる。



 「めんっどくさいなぁ……………死んどけよゴミが」


『お口の悪さも一級品ね。随分痛かったわ………………それはもう、痺れるくらいにね。


 脊髄を舐められるみたいな魔力……………いくら優しいワタシでも、こればかりは感化出来ないわね…………………』


 「………………!」

 「なっ…………!」


 「なに、これ」




 後ろにいたみんながそれぞれ驚きの声を上げている。私も……………だ。
 オカマは派手な服を脱いだ。その服が落ちていく中、メキメキと姿を変えて_____トカゲ、いや、ピンク色のドラゴンになったのだ。


 龍神の私の姿が蛇なら、このオカマはRPゲームに出てくるドラゴン、という感じだ。


 そんなことを考えていると、ピンクのドラゴンはグルル、と喉を鳴らして笑った。




『驚いた?とても貴方に似ている姿でしょう?……………貴方は知らないかもしれないけど、"ドラゴン"と名のつく生き物は他にも居るのよ……………ワタシのようにね。



 貴方とは年季が違うのよ…………顔だけの女には負けないわ♪ 』




 そう言って風を纏うオカマもといドラゴンに、アルティアは_____笑った。



 「へえ……………じゃあ、お手並み拝見させてもらおうじゃない」


 「…………!アル、さま!」


 「ガロ、危ないです」


 アルティアはヴァルの背から飛び降りた。ガロが身を乗り出そうとするのをリーブが止めた。


 アルティアの身体が黒くなっていく。そして、形を変えて_____龍の姿になった。



 「さあ______ドラゴン対決と行きましょうか」



 アルティアの黄金色の瞳が一際光った。




 *  *  *




 アルさんが、"龍神"というボクとはちょっと違う人外なのは知っていた。


 でも_____そう言われる所以を、ボクはちゃんと理解してなかったんだ。



『ガァアッ!!!』



 ピンク色のトカゲの生き物が竜巻を起こした。その中に____黒い、ヘビのような生き物。

 でも、普通のヘビじゃない。
 黒い鱗に、大きな角が額に2つ、大きな口に身体にしては小さな手と足____禍々しく、でもどこか高潔さを伺える大きな、とても大きな生き物。




 「ふん」



 その生き物はアルさんの声を出して、竜巻を弾いた。何もしていないのに、勝手に弾いて勝手に消えたのだ。



 さっきから、ピンク色の大きなトカゲが攻撃しているのに、黒い生き物は空中に浮かんでいるだけで全てをかき消していた。



 ボクにもわかる。

 ………………………圧倒的な、力の差。




 「な、に、……あの、生き物」



 「あれは_____アルティア様の真のお姿です」



 リーブさんが解除魔法を唱えながらそう言った。


 ボク………………とてもすごい人に仕えているんだ……………………





 ガロは呆然としながら、その光景を見ていた。











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