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第10章 生贄皇子救出大作戦、始動
男心 #とは
しおりを挟むフランはキッ、と後ろで浮遊しているダーインスレイヴを睨む。
「後ろから声をかけないでください!」
「お前なぁ、遅いから俺がわざわざ来てやったのにその態度なわけ?」
ダーインスレイヴははあ、と溜息をした。
………この人は苦手。イケメンだけど、なんとなく存在が薄っぺらい感じがして。ミステリアス、っていうのかな?
「奇遇だな、俺もお前みたいな女は苦手だ」
「心を読まないでください!」
「読めちまうものは仕方ないだろ?…………………まあ、あれだ。
さっき考えてた筋書きは都合が良すぎるんだよ」
「は?」
頭をぽりぽりかきながら、ダーインスレイヴは続ける。
「男はな、一概にそうとは言わないが、女が幸せだったらそれでいい、と思う奴もいるんだよ。
女が幸せに笑ってたら自分も幸せになれる。…………そう信じて疑わねえくらい大人"ぶってる"ラフェエルがそれを選ぼうとした。
…………まあ、女で幼いお前には分からないかもしれないがな」
「わ」
そう言ってダーインスレイヴは私の頭を乱暴に撫でた。髪がぐちゃぐちゃになる!せっかく綺麗にセットできたのに!
「髪ぐらいでぐちぐちいうなよ。…………それより、いいのか?
先頭あんなに遠いぞ」
「え?………えーーーーっ!?」
言われて前を見ると、先頭を飛ぶアルティア先輩はもう米粒くらい小さくなっていた。まずいまずいまずい!ここで迷子になったら絶対置いていかれる!
「カーバンクル!もっと早く飛んで!」
『うっ、うん!』
「さっきはゆっくり飛べといったのに次は早くだと?まったく、とんでもない我儘聖女だ」
やれやれ、と首を振りながら飛ぶダーインスレイヴが実は迷子になっても転移魔法で連れてってあげようとわざわざフランの元にいた、なんていう事実に気づかないフランはカーバンクルにしがみついて風を一身に受けていた。
* * *
「………………………………」
ボクは静かに、アルさまを見た。
アルさまはとっても怖い顔をしていた。
いつもの笑顔はそこにはなく、ボクの声も届いてない。
ただ、前を見ている姿を見ていることしか出来ないボクは、とってもなさけない。
ラフェーさんが、攫われた。
…………そして、みんなが隠していたラフェーさんの死についての話を聞いて、アルさんは泣いていた。
ボクが、話せばよかった。
いや、ボクが話してもアルさんは泣いていたのかもしれない。
クリスさんとエリーさんが話しているのをたまたま聞いていたから、ラフェーさんが死ぬことは知っていた。
でも、ボクが守ればそんなことはない、とおもっていた。
………………………誰かに殺されるのではなく、自ら死のうとしているのだから。
ボクはそれをきいて、こわかった。
自分で自分を殺すなんて、怖い以外の何物でもないと思う。
ラフェーさん、なんで普通にしていられたんだろう。
すごい、と思う同時にすごくかなしかった。
ボクはアルさんのためなら死ねる。
アルさんに貰った命だから。
ラフェーさんも、そうなのかな?
わからない。
だから。
ちゃんと助けて、聞きたい。
「それ以外にアルさんを幸せに出来る方法はないのか」って、ききたいんだ。
ボクはぎゅ、とアルさんの服を引っ張った。すると、優しいいつもの手がボクの頭を撫でた。
見上げたら、アルさんが無理に笑顔を作っていた。
「____大丈夫、大丈夫だから……………」
この顔は、好きじゃない。
撫でられながら、そう思った。
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