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第10章 生贄皇子救出大作戦、始動
太陽神は心の底から屈服する
しおりを挟む『ほーん、つまり、また攫われた契約者を助けに行きたい、で、俺にお鉢が回ってきた、っつーことか』
訳を話すと、太陽神・ドゥルグレは4本の腕で腕を組みながら空中に座っていた。いつものアルティアであればそんなことを許さないのだが、怒る余裕もないらしく見上げながら言う。
「そうなの。アンタ、腐っても太陽神でしょ?空の妖精神と仲がいいんじゃないの?」
空と太陽は切っても切れない縁のはず。なぜなら空があって、太陽見えているのだから。アルティアなりの考えだった。そしてそれは、物の見事に的中していた。
『誰があんな頭の固い古臭いババアと仲良くするかよ。…………まあ、それなりに交流はある。場所も朧気ながらならわかる。
だが』
ドゥルグレはにやり、と笑う。
_____簡単に教えてやるのは癪だろう?
太陽神・ドゥルグレはにやり、と笑ってて言った。
『教えて欲しければ俺に土下座しろ。で、"太陽神様、どうかこの醜い龍神にお知恵をお貸しください"と懇願して見せろ。
そうしたら、考えてやらんでもないぞ』
「…………………………」
アルティアは黙る。自分の体内に宿るアルティアの魔力がグダグダ言っているがそんなのもう慣れた。しかし、いつもの癖で手を前に出し、落とされる心構えを見せた。
だが_____いつもの乱暴な言霊呪文は降り掛かってこなかった。
それどころか。
『なっ……………!』
アルティアが、地面に膝をついたのだ。
無表情で黙って俺の言うことを聞いている。
巫山戯るな!いつもの生意気な態度はどうした!?らしくねえじゃねえか!
俺はこいつが大嫌いだ。
理不尽が皮を被った性格で無理難題ばかり出して、おまけに俺を自在に操れるようにして。こいつに受けた屈辱はもう数えきれない。………………けれど。
『待て!』
「………………?」
アルティアが頭を下げようとしたところで地面に降りた俺はすぐさまアルティアの頭を抑えた。身体中が痛くて、悲鳴を上げている。主人に攻撃を向けることは勿論触れる事すら許されないのはわかっている。
だが、それ以上に_____この女が頭を垂れる姿は見たくなかった。
そんな矛盾したことを考えるドゥルグレに、アルティアは睨みつける。
「………………なによ、土下座でしょう?
邪魔しないで」
『なんでッ…………なんでそんなに素直なんだ!いつもみたいに俺を貶せよ!俺に頭なんか下げんなよ!
なんで俺の言うことを黙って聞くんだ!?』
「命令しといて逆ギレ?………何がしたいのよ。
でも、そうね…………………」
アルティアはそこまで言って、俺の手を掴んだ。か細い腕、自分のソレより小さく細い指が食い込む。
アルティアは俺を真っ直ぐ見て、言った。
「ラフェエルを救うためなら私はいくらでも頭を下げる。いくらでもアンタの言う通り言葉を紡ぐわ。
___全て、ラフェーの為に私は動く」
『っ……………!』
真剣な言葉に、怯む。
俺と戦った時とは違う。騒いだり、喚いたりしていない。
けれど………………あの時よりも怒っていると感じる。静かに、溢れる怒りを滾らせている。
そこまで、あの人間が大事なのか………………?
そう考えると胸が痛くなった。呪いの力じゃない。
俺はいつから、この女に懐柔されていたんだ?
俺はいつから、この女の為に自ら動くようになったんだ?
俺はいつから_____この女に心から屈服していたんだ?
ドゥルグレはそこまで考えて、首を振った。
簡単には認めてやらねえ。
簡単にはこの気持ちを口にしねえ。
『_____気が変わった。
教えてやるよ。…………ファーマメント王国がある所を』
ドゥルグレは飲み込んだ言葉の代わりにそう言ったのだった。
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