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第9章 次期龍神達の"防衛戦"
知らなかったの、私だけなの?
しおりを挟む____怒っている?
私の言葉を遮ったシヴァは、私を睨みながらゆっくりと歩み寄る。
『お前、知っているよな?流石に聞いているよな?ワールドエンドに行って、死神・ハデスと闇の精霊・ケルベロスと会って、それで龍神になるって。色んな奴から聞いたよな?ラフェエルからだって聞いてるよな?』
それは、知っていた。
全部の妖精神に屈服印を貰って、ワールドエンドに行ったら私は立派な龍神になれる、と。
シヴァは下を向いた。握り拳を作って、呟くように続ける。
『ワールドエンドに行って…………ふたつの力を手にいれて、"真なる王"を取り入れてお前は龍神になる…………だが……………そうなったら……………
ゼグスの子孫は………………サクリファイス大帝国第一皇太子は、死ぬんだぞ!』
「……………………は?」
その瞬間、世界から音が、なくなった。
_____ラフェエルが、死ぬ?
私は何を言われているのだろう。
だって、ラフェエルはもう"生贄"じゃないんだよ?
『死神・ハデス、闇の精霊・ケルベロスを受け入れればお前は龍神になれる、けど………けどなぁ!
それをする時……………あの男は死ぬんだぞ!?
お前が、龍神になった時…………アイツはそれと共に死ぬんだぞ!?』
シヴァは大声でそう言って、その場にへたり込んだ。
周りは静かだ。耳をすませてみても、私のように戸惑ってる声も、否定の声も聞こえない。
アルティアはその状況で____ぽつり、呟いた。
「知らなかったの……………私だけなの?」
「…………………」
誰も、何も答えない、否、誰も答えられないのだ。アルティアは魂が抜けたように項垂れるシヴァにつかみかかった。
「知らなかったの、私だけなの!?私だけ!?私だけか!?
なんで、なんで隠してたのよ!」
「……………隠してたんじゃ、ない」
「……………!」
ぽつり、フランが言葉を漏らした。もう外は見てなかった。下を向いて、ポロポロと涙をこぼしている。
それを庇うように、リーブが口を紡ぐ。
「____言葉にするのが、怖かったのです」
……………………やっぱり、全員が知っていた。
その事実が____アルティアを苦しめた。
「……………うわぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
アルティアは、吠えた。
そしてその場に蹲り、何度も、何度も拳を地面に叩き付ける。泣きながら、喚きながら、手が血だらけになってもお構い無しに叩き付けられた。そして、声を荒らげて騒ぐ。
「クソっ!クソッ!クソ!
なんで止めなかったんだよ!なんで、私に屈服印を渡したんだよ!
クリスティド、クリスティド!アンタはラフェエルと友達だったよね!?親友だ、って言ってたよね!?エリアスだって幼なじみだ、って言ってたよね!?
どうして、止めなかったんだ!」
「___ッ、止めなかったとお思いですか!?」
「……………!」
エリアスが怒鳴った。いつもオドオドしてる姿からは想像できないほどの大きな声で、それでいて悲痛に言った。
「ラフェエル様の………ご意志なのです…………」
エリアスは言い終わるとその場で泣き崩れた。クリスティドは静かに言った。
「アイツはみんな承知でこの旅をしていたんだ………………アルティア様を龍神として、自分が死ぬ道を!あいつは!選んだんだ!」
「そんなの、絶対おかしいよ!」
フランはクリスティドの言葉に異を唱えて、叫んだ。
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