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第9章 次期龍神達の"防衛戦"
また攫われた生贄皇子
しおりを挟む「アルティア様!」
「アルティア様!」
「2人とも!お疲れ!」
結界が新たに発現してすぐにクリスティドとエリアスは私の元_アイスバーン城_に来た。
「アルティア様…………!わたくしの幻獣の力はお役に立ちましたか?」
「物凄く立ったよ!あれがなかったら後半きつかった、というか意識飛んでたはずよ。
クリスティドはどう?大丈夫?」
「ええ。伊達に魔法剣を極めてませんので。エリアスの幻獣達もとても素晴らしくて…………………」
クリスティドはそう言って爽やかに笑う。……………血塗れなのによくもまあ爽やかなオーラを出せるなぁ。サイコパスなのかな?
……………ん?
ふと、違和感。
いつもの顔ぶれ、なのに、足りない。
いつもこういう時、平然と「くだらない」という男がいない。
いつもこういう時、「よくやった」と短くそっけなく褒めてくれる男がいない。
「_____アルティア様………………」
「……リーブ?」
そんなことを思っていたら、リーブも戻ってきた。勝ったというのに、顔面は蒼白だ。
嫌な、予感がした。
リーブはす、と何も言わずに1枚の紙を出した。私はすぐさまそれを受け取り、そこに書かれた文字を読んだ。
_______
風の精霊に攫われた
助けにこい
________
「______!」
殴り書きだけど、この筆跡を知っている。あの男____ラフェエルのものだ。私はリーブの顔を見た。
リーブは今にも泣きそうな顔で、ぽつりぽつりと呟いた。
「その紙は、ラフェエルの伝達魔法で私の元に届きました。国中を探しましたが………ラフェエル様は、何処にもいらっしゃいませんでした」
「…………………嘘だ」
口が勝手に、言葉を漏らした。
嘘だ。
嘘だ。
嘘だ。
_____嘘だ。
「みんな!国中をくまなく探して!リーブももう1回千里眼で国中を探して!」
「ハッ!」
「は、はい!」
「承知しました」
「私も探す!」
全員がそれぞれ動き出す。私は____込み上げる怒りと震えを必死に抑え込んで、地図を広げた。
* * *
結果から言うと、アイスバーンにラフェエルはいなかった。
あの手この手と試してみたけど、いくら探しても見つからなかった。
セイレーン皇国では、ちゃんと国にいた。聖域とはいえ。
けど____今回は、国にすらいないのだ。
ラフェエルの残したメッセージ。
"風の精霊に攫われた"
つまり_____風の精霊が私に喧嘩を売った、というわけだ。しかも私がいちばん怒る方法で。
上等よ。必ず_____喧嘩を売ったことを後悔させる。
とはいえ、手がかりはラフェエルの残したメッセージだけ。その風の精霊がどこにいるのか、私はわからない。
で、だ。
「……………と、いうことで、風の精霊がどこにいるのか知りたいの」
アイスバーン城の玉座の間、私はゼグス、シヴァの前に来た。勿論皆も一緒だ。…………みんな、ラフェエルのことを心配している。
だって私達はここまで一緒に旅をしてきたんだもん。何かしらの感情を持ってるはずだ。それなのに、それを無下にすることは出来ない。
そんな私たちに、ゼグスは玉座に座りながら言う。
『風の精霊の居場所____それは、"天国に一番近い国"・ファーマメント王国だ』
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