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第9章 次期龍神達の"防衛戦"
幻獣姫の癒し方
しおりを挟む防御魔法の効果が薄れている事に気づいた。
やっぱりお辛いんだ……………!
ぎゅう、と胸が苦しくなる。
皆さん頑張っていらっしゃるのは、アルティア様の作業を守る為。
アルティア様の為に行っている事。
そのアルティア様の力が弱まっている……………それは、黙って見ていられるものではない。
「すみません、皆様、わたくしは席を外します」
「そ、そんな、此処に敵が来たら…………」
「…………大丈夫です、わたくしが必ず皆様を守り抜いてみせます。安心して此処で待機してください」
エリアスは亜人たちを安心させるようにふわり、と優しく笑ってから人ごみをかきわけ、外に出た。
「ん?………エリー!どうしたんだい?」
避難所の外には沢山の死体が地を埋めつくしていた。ヴァリアースに居た頃にこんな光景を見ていたらわたくしは気を失っていたと思います。
けれど、わたくしは旅に出て、変われたのです。
人を殺してしまうことがいい事だとは思いません。ですが、なにかを守るという事に妥協しない気持ちを、わたくしは手に入れたのです。
それを助けてくださったのは………………アルティア様。
わたくしはアルティア様のようになりたい。
アルティア様のように優しくなるために、私は______
エリアスはそこまで考えて、両手を胸の前で組んだ。
それだけで、大きな赤い魔法陣が生まれる。魔法陣から出る風を受けながら、歌うように呟いた。
「______"転生の炎"・リンカネーション。
どうか、お姿を現してください」
魔法陣に炎が巻き起こる。けど、この炎は建物を燃やさない。その炎から出てきた"何か"は、花が咲くように開いた。
燃える身体、炎を纏った翼、……………青、緑、金と沢山の色を持った鳥のような幻獣_____リンカネーション。
『エリアス様、お呼びでしょうか』
「ええ。お願いがあるの。
クリスティド様の向こう側にいる敵の方々を…………退けさせてください。
_____"癒しの炎"」
わたくしがそう言うと、リンカネーションは空高く飛んだ。
結界のすぐ近くまで上がって、炎を口から吐き出した。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
「なんだあの鳥はぁぁぁぁぁ!?」
「か、身体が熱い、も、燃えるぅ…………!」
人々が燃えていく。
そして、燃えていく人々から現れる緑の光。
クリスティドは剣を片手にエリアスに聞く。
「私が戦うのに。エリーも戦いたかったのかい?」
「いいえ。わたくしは____アルティア様のお力に、なりたかっただけです」
どうか、アルティア様を癒してください______
エリアスはそう答えて、祈った。
* * *
アイスバーン城、玉座の間。
「ええっ!?この光、エリーの幻獣の効果!?」
緑の光の効果により、すっかり元気になったフランが大きな声を上げた。
アルティアは大きく頷く。
「そうよ。……………おそらく、幻獣・リンカネーションの必殺技………というよりは、"必生技"ね」
「願った対象の範囲に魔力、身体を回復させる癒しの効果か………………この力のおかげで、ゼグスの回復も早くなるだろう」
ダーインスレイヴは緑の光に触れながら笑う。シヴァは目をパチパチさせながらぽつり、呟いた。
『すげえな………………こんなことも出来るのか』
……………………本当、エリアスは凄いわ。
アルティアはふ、と笑ってからフランに言った。
「私達も、頑張ろう。…………皆が頑張ってるんだから、さ」
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