上 下
169 / 270
第9章 次期龍神達の"防衛戦"

アイスバーン"防衛"戦、開幕

しおりを挟む





 街が、…………国全体が燃えている。
 上空にて、アルティアは眼下に広がる惨状を見ていた。

 亜人たちは逃げ惑っている。兵士の格好をした人間達はざっ、と10万人は居るだろう。よくもまあこんなに兵士を集められたなと呆れを通り越して感心する。ゴミも塵も積もれば山となる、というか。


 勿論、助けるつもりだ。

 でもその前にやらなければならないことがある。


 ちゃんとそれまで逃げててよね、亜人達。



 アルティアは両手を広げて、緑色の光を纏う。膨大な魔力が掌に集まる。そして、小さな声で詠唱した。



 「____防御魔法・全遮断トータルフィルター




 青色の結界が、国全体を覆っていく。
 …………………とりあえず、これでこれ以上の敵の侵入は防げるだろう。



 アルティアはふ、と姿を消した







 *  *  *





 アルティアが国全体に防御魔法を張っている間に、ラフェエルを含む仲間達が城の前に居た。


 「_____ここからは3手に別れるぞ」



 「ああ、それが効率がいい」



 ラフェエルの言葉にクリスティドは頷いた。そして、リーブを見る。その意味を理解しているリーブは恐れながら進言します、と一言述べてから茶色の瞳を開いた。




 「____国全体の状況と力関係を総合して考えますと、クリスティド様とエリアス様は比較的敵の少なく怪我人が多い東、私とガロは様々な付与効果を操る魔導師が多い西、………………歩行兵や騎馬軍団が集中している南にラフェエル様とアルティア様お手製の黒騎士が向かうのが最善かと思われます」



 「ラフェエル様が、敵の多い南……………き、危険ではないでしょうか……………?」




 エリアスはおずおずと発言する。ラフェエルはそれを聞いて淡々と言った。




 「リーブの見解は最善を考えた上でのものだ。私は構わん。雑魚がいくら集まった所でなんの足しにもならないからな。


 それに___私にはこいつがいる」



 ラフェエルはそう言って隣に目を移す。隣には___全身黒の、鎧を纏った大きなアンデッド。


『呪術・私を守る騎士アンデッド・ナイト


 アルティアの作り出したアンデッドだ。アルティアが来れない代わりに、と貸してくれた。………あのアルティアの作り出したものが足でまといになることは無いだろう。


 自分がここまで他人_ましてや龍神_を信頼できるなど、昔までの私には有り得なかったことだ。



 そこまで考えて、ふ、と笑みを漏らす。
 しかしすぐに真顔になって、全員に言った。



 「_____この国を守るぞ。

 全員、武運を祈る」



 「はい!」


 「ハッ!」


 「お前もな!」


 「が、頑張ります!」


 「ガロ、いく」




 全員はそう言って各方面に散った。






 *  *  *






 「よっ、と」


 全員がそれぞれ動き始めた頃、アルティアは玉座の間に転移で戻ってきた。玉座の間には魔剣のダーインスレイヴ、聖女のフラン、氷の精霊・シヴァ・そして。


 私の黒いベッドで眠る星の妖精神・ゼグスが居た。



 アルティアはベッドで眠るゼグスを見ながら、シヴァに聞く。





 「____で、私は何をすればいいの?」




『まず、俺とゼグスの魔力を編んで欲しい。ダーインスレイヴから聞いている。嬢ちゃんの特殊能力は"想像"というものなのだろう?』



 「魔力を編む………………?」



 勿論、そんなことしたことがない。大体、私の"想像"という力は私が"前世で漫画やアニメ、小説、ゲームで見たもの"を具現化するだけだ。魔力の編み方なんてこれっぽっちも知識がない。


 首を傾げるアルティアに、ダーインスレイヴはいう。




 「だめだなこりゃ。魔力の編み込みは高等技術だし、アルティアがこの顔をしてる時は大抵失敗する」



 「んなっ、やってみなきゃわからないでしょ!?」


 「そんな悠長にしてる暇もないんだ。それよりも、ゼグスに魔力を注ぎ、回復させた方が早いだろう」



 私の言葉を無視して、ダーインスレイヴはそう言う。それはできる気がするけど…………でも。




 「そうしたら、ゼグスは私の奴隷になってしまうわ。そんな酷いことできない」



 「………………太陽神を奴隷にした癖に、どの口が言ってんだか。だからこそのフランだろう?」



 「はい?」









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

裏切りの代償~嗤った幼馴染と浮気をした元婚約者はやがて~

柚木ゆず
恋愛
※6月10日、リュシー編が完結いたしました。明日11日よりフィリップ編の後編を、後編完結後はフィリップの父(侯爵家当主)のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  婚約者のフィリップ様はわたしの幼馴染・ナタリーと浮気をしていて、ナタリーと結婚をしたいから婚約を解消しろと言い出した。  こんなことを平然と口にできる人に、未練なんてない。なので即座に受け入れ、私達の関係はこうして終わりを告げた。 「わたくしはこの方と幸せになって、貴方とは正反対の人生を過ごすわ。……フィリップ様、まいりましょう」  そうしてナタリーは幸せそうに去ったのだけれど、それは無理だと思うわ。  だって、浮気をする人はいずれまた――

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

公爵令嬢の立場を捨てたお姫様

羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ 舞踏会 お茶会 正妃になるための勉強 …何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる! 王子なんか知りませんわ! 田舎でのんびり暮らします!

小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。 ここは小説の世界だ。 乙女ゲームの悪役令嬢が主役で、悪役にならず幸せを掴む、そんな内容の話で私はその主人公の姉。しかもゲーム内で妹が悪役令嬢になってしまう原因の1つが姉である私だったはず。 とはいえ私は所謂モブ。 この世界のルールから逸脱しないように無難に生きていこうと決意するも、なぜか第一王子に執着されている。 そういえば、元々姉の婚約者を奪っていたとか設定されていたような…?

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

処理中です...