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第8章 氷の精霊、星の妖精神と次期龍神
隠された真実 #2
しおりを挟むずっとこのユートピアの最上の神は龍神だと思っていた。
けれどもその龍神は10万年前現れた生き物で、元々は神じゃなかった。
本来この世界の神は____死神・ハデスなのだ。
『___生物には必ず"死"が付き纏う。その死んだ魂を使って、新たな命を、エネルギーを作る存在。そして、それを補佐していたのが"闇の精霊・ケルベロス"。自ら神となった太陽神・ドゥルグレとは違い、ずっと"神"なのだ。
それ故に力は膨大だ。"亡者達の思い"という存在だけでは受け止められない。おまけにサクリファイス大帝国の民にかけられた"呪い"もあり、1万年しか身体を保てない。
そこで考えたのは____"それを受け入れる器を作ること"だ』
ゼグスはそう言ってぽん、とワイングラスを出した。そこに指を入れると、紫色の魔力が注がれる。並々と注がれた魔力を見てから、もう1つグラスを出した。
もうひとつのグラスに並々溢れた魔力が吸い込まれる。
『溢れてしまいそうなら別の容器にいれればいい。でも、ただの容器ではだめだ。死と闇を操らなければならないのだから"聡明であり全てに優れなおかつ罪深い業を背負った器"でなければ壊れてしまう、死神はそう進言した。___"一縷の希望"を残す為に』
「………………希望?」
聞き返すと、ゼグスの顔に悲しみを帯びた。そして、震えた声で言った。
『____その器があれば、"龍神となった魂の意識"を残すことができるんだ』
「い、しき……………?」
聞き返すと、こくりとゼグスは頷いた。
『"真なる王"___それは、"初代龍神の意識"だ。つまり、"器"がない次期龍神は……………心の底まで"生き物の命を奪い続ける思想を持った初代龍神"に乗っ取られる。
そうなったらどうなる?世界は___再び戦禍が巻き起こる。それを危惧した死神・ハデスは膨大な魔力を受ける為だと"嘘"をついた。
次代の龍神の意識があれば、初代龍神の起こすような戦禍を起こさないかもしれない。
もしかしたら、"真なる王"を封じ込めるかもしれない。
これは大きな賭けだった。
でもそれは_____成功した。
異世界から連れてきた意識のある魂は、初代龍神とは違い、無闇矢鱈に暴れることはなくなったんだ。
しかし、その嘘を未だに信じている___"真なる王"もとい"初代龍神"は、その"器"として自分に"呪い"をかけたサクリファイス大帝国の、自分と敵対していた第1皇太子を指定した。
"生贄"として差し出された第1皇太子が頭を使い、"龍神と契約する"ことが出来た聡明さを持ち、"龍神と屈服の儀をしてまわり、龍神と信頼関係て築いた"絆を持つ物を、ワールドエンドで"器"として魂を差し出させる……………第1皇太子に生き残る手段を残さない、必ず"死"を齎す…………悪趣味な嗜好でな。
だが、死神を初めとする妖精神達は"異世界から呼び出された魂の意思"に願いを込めた。
これが____私が知っている"隠された真実"、"死の螺旋"の全貌だ』
「……………………………………」
ゼグスの言葉に、ラフェエルは____微かに笑みを浮かべていた。
____自分はただの"器"では、なかった。
____自分の死は、"大切な希望"への投資だったんだ。
これなら、私は安心して死ねる。
アルティアの意識を初代龍神に奪われるのを阻止できるんだ。
_____この世で1番幸せなこと。
それは、愛する者の為に死ねること。
私は、こんなに幸せでいいのだろうか_______…………
ラフェエルは椅子にもたれ掛かり、笑みを浮かべながら目を閉じた。
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