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第8章 氷の精霊、星の妖精神と次期龍神

次期龍神は屈服印を見つめる

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 「は~~~~~!疲れた!」




 アルティアはぼふ、とベッドに身体を投げ出した。


 屈服印を貰った私達は、もうこの国に居る理由はない。けれど、星の妖精神・ゼグスが『せっかく来たんだからゆっくりしていっておくれ』、『私の子孫と話がしたい』と言ってきたのだ。



 ついでに、シヴァも『俺もガロと話がしてえ!』と騒いで…………………結局少しの間滞在することになった。



 ちなみに、他のみんなも聖域に泊まらせてくれるみたい。なんて心の広い神なんだ。



 ラフェエルもラフェエルで『次の行き先のことを調べたい』、『先祖の話を聞きたい』と言っていた。


 ガロは……………………怯えていたけど、なんだかんだシヴァと話してくると言っていた。



 まあ、そうだよね。血の繋がった人ってそれだけ大事なのだろうし。



 でも_____私は違う。


 ガーランドはともかく、初代龍神は許せない。今日の話を聞いて、更に強く思った。



 初代龍神は"亡者達の思い"から産まれたもの。そう考えると哀れにも思うが、だからといってほかの人を………………サクリファイスをとことん苦しめるのは、許せない。




 それは、私もしなくちゃいけないの?



 _____嫌。絶対したくない。





 "人を殺して得る幸せなんてない"



 …………………………セイレーン皇国で、ガーランドに言われた言葉。

 それは、こういうことなのかな?


 ガーランドも、初代龍神の話を知って私のように怒ったのかな。悲しんだのかな。苦しんだのかな。



 ………………ガーランドは、私に何も教えなかった。



 それは、どうしてなのだろう。




 "自分の目で見て、感じて"




 …………………幼い頃、龍神や世界の事を聞こうとしたら何度も言われたっけ。


 もう旅をし始めて1年が立った。
 19歳だ。……………否、前世も入れたら30歳を超えている。


 でも。



 世界がいまいち掴めていない。そりゃ、大まかなことはわかったよ?怒ったり、悲しんだりした。色んなことを学べていると思う。だけど……………………肝心な何かに気づけていないのかもしれない。



 全部わからないことはラフェエル頼りだ。……………これじゃ、だめだな。 



 私はベッドから離れて、部屋にある姿鏡の前で再びお腹の見える服に着替えた。



 お腹にはしっかり水色、赤色、茶色、白色、銀色の縦線と、藍色、緑色、オレンジ色、紫色の横線が刻まれている。


 9つの屈服印はそれぞれ発色していて、何度見ても綺麗だと思った。




 あと_____2つというところまで来た。


 ここまで来るのに色々あった。戦い自体に苦しむことは無かったけど、これは_____私への"期待"なのだ。



 期待されることなんて前世では有り得なかった。

 その私が今やこんなにも期待されているのだから不思議だ。しかも、相手は神様だよ?私にそんな価値があるのかどうか……………自信が持てなかった。



 龍神にならなきゃ、自由になれない。


 私は自由のために旅をしている。



 それは変わらない、変わらないけど………………期待には答えたいな、なんて。





 「……………………私も、もっとちゃんとユートピアのことも、龍神のことも知りたな」 



 今からでも遅くないかな?

 この城に図書館があれば………………………いや、仮にあったとしても読めないかな?いやいや、ここまで来るのに沢山文字の読み書きを勉強したし………………まだ絵本しか読んでないけど。



 それに比べて、ガロはもう難しい本を読んでいる。やっぱり子供の成長は早いのかな?けど、ガロは見た目7歳でも年齢は56歳だし……………




 しばらくアルティアは自分のお腹を見ながら考えに耽っていた。












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