156 / 270
第8章 氷の精霊、星の妖精神と次期龍神
ユートピアの真の歴史 #1
しおりを挟む『じゃあ____これを、見てもらおうか』
「………………!」
男の声と共に星空の空間が一瞬で変わる。沢山の人々が、眼下で争っている。
_____戦争だ、と一目でわかった。剣や槍、銃や大砲、大きな兵器………………血で血を洗うような、凄惨な映像。私はすぐさまガロを抱き締めた。
けどおかしい、この世界で銃も大砲も見た覚えがない。辛うじて剣や槍を見たことがあるぐらいだ。
『____10万年前、人間達は争っていた。一番戦争が盛んだった時期だと言っていい』
「ちょっと待て、10万年前は龍神がこのユートピアを作った時代だろう。そこから破綻している」
『せっかちだなあ。___君の言う"ソレ"は"龍神"が作り出した偽の歴史だよ』
「な、……………!」
ラフェエルが目を見開く。男は静かに続けるよ、質問は後で聞く、といってから話し始めた。
『とにかく、10万年前は人間同士の戦いが各地で繰り広げられていた。沢山の人間が死に、沢山の生き物が死んだ。
生き物には"魂"がある。人間は勿論だけど、動物にも、草木にも、この世界にある全てのものが魂を持っているんだ。この魂は___"思い"とも"心"ともいえる。
死にたくない、生きたい、戦いたくない、強くなりたかった、………沢山の、沢山の"思い"が溢れかえったんだ。その思いは、本来このユートピアのエネルギーとして巡り、新たな生き物を生み出す力に使われる…………はずだった。無念な"思い"を抱えて死んでいった沢山の魂は、輪廻転生の輪を見出し___新たな生命を生み出した。
それが………………"初代龍神"だ』
「え……………………?」
龍神、という言葉に私が反応する。眼下には、私の龍の姿と同じ龍が人を潰して、口から炎を吐いていた。
ガーランドは"異世界"から私を呼んだ。なのに、龍神はこの世界で生まれたもの………………?
『初代龍神は降り立った、と言われているらしいが実際はこの世界が作り出した"亡霊達の思い"なんだ。
____とにかく、人間達はその初めて見る生き物を見て恐れ戦いた。龍神は暴れた。沢山の人が、生き物が殺されていく中___1人の"男"は立ち上がった。人間同士で争っている場合じゃない、と。
男は自分の持つ全ての権力を使って争っていた国々と和解し、妖精神、精霊に懇願した。"力を貸してくれ"と。妖精神も精霊も突然現れた龍神に恐れていた。"その男"に力を与え、妖精神、精霊自身も戦いに出た。それが"終末戦争"………………その話は、君も知っているだろう?
"サクリファイス大帝国の第1皇太子"』
「………………………………」
ラフェエルは難しい顔をしている。………何を考えているの?
ラフェエルの答えを聞かずに、話していた男とは違う飄々とした声が響いた。
『その沈黙は知ってる、でいいんだな。なら話ははええ。………ん?龍神は知らねえみてえだな…………ちっ、面倒くせえ…………
結果は龍神の圧倒的勝利だ。俺たちの力は全く通用しなかった。三日三晩戦ったのに、全く歯が立たなかったぜ………今思い出しても、ムカつくぜ』
『………………まあ、過ぎたことさ。
とにかく、私達は負けた。けれども___"男を慕っていた者達"は諦めなかった』
眼下の光景が、変わる。
沢山の人々が魔法陣の上で祈りを捧げている。1人、また1人と浮いて…………ひとつの大きな柱と一体化していた。
『 _____"男を慕っていた者達"は、自分達の命を代償に、龍神へ"呪い"をかけたんだ』
そう言った男の声は、とても悲しそうだった。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する
みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!
みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。
妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。
今迄関わる事のなかった異母姉。
「私が、お姉様を幸せにするわ!」
その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。
最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。
❋主人公以外の他視点の話もあります。
❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる