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第7章 次期龍神、人狼少年を拾う
人狼少年と生贄皇子
しおりを挟む「すぅ………………………………」
「………………………………」
ガロは、横で眠るアルティアの顔_目尻が赤く腫れている_を見ながら、考える。
アル様を守ると決めた。強くなって勉強してと決意した。けど。
それだけじゃ足りない気がする。
だって、こんなに幸せなのだから。
だから、身体を差し出そうとした。
けど_____アル様は泣いた。
そんなこと望んでいない、間違ってると首を振り、とても悲しそうに泣いた。
ならば。
_____この恩義を、どう返せばいいんだろう。
ボクは、そんなことすら分からないんだ。
ガロは静かにベッドから抜け出して、テントのある方に向かって歩く。
誰かに教えてもらいたかった。
どうすれば正解なのか聞きたかった。
「………………どうした?」
「……………!」
テントに向かう道中、アル様よりも豪勢なベッドに座ったラフェーさんと会った。紅みを帯びた銀の髪が夜風に揺れている。
「貴様はアルと寝ていたのだろう?私を差し置いて」
「…………?」
どこか悔しげな顔に、首を傾げる。
けどそれよりも聞きたいことがあった。
「ラフェーさん、ガロ、聞きたいこと、ある」
「…………………言ってみろ」
「ガロ、アルさま、おんがえし、したい。
でも、どうすれば、いいのか、……わからない」
消えそうな声でそう言ってガロは眉を下げた。………たどたどしいが、アルより言葉の上達が早いな。言葉だけじゃなく、魔法、剣術、武術、…………そして狼化。短期間だというのに物凄い勢いで成長している。アルはそれを見越してこの子供を側近にしたのか?
いや、ないな。アルは馬鹿だから、きっとたまたまだ。
ラフェエルはそう考え直してから、口を開いた。
「恩返し、か。……………感謝しているなら強くなれ」
「それは、あたりまえ、だけ、ど………」
「ならばその"当たり前"を超えるくらい強くなれ。
他の誰よりも強くなり、他の誰よりも賢くなり、他の誰よりも貪欲になれ。
____私も側近を持っている。貴様も知っているリーブだ」
ラフェエルは空の星々を見上げながら、続ける。
「リーブもけして天才ではない。だが、努力を怠らなかった。今も研鑽し続けている。
主人として、そんな側近を持てたことを誇りに思う」
「そういう、もの、ですか……………?」
「_____ああ、そういうものさ。」
ラフェエルは立ち上がって、ガロの頭に手を置いた。
小さい、小さい子供。
その小さな身体に大きな可能性を宿している。
"人狼"___"奴隷売買国"・プリズンで聞いた。
"鎖国国家の雪国"・アイスバーンを治めているのは人間ではない。
"星の妖精神"と"氷の精霊"だという。
そして、"氷の精霊"の血筋を持つのが___人狼なのだと言う。より強い力を持つ人狼は瞳に神の証である金がさしているという。
つまり。
この小さな子供は、その力を宿しているのだ。_____アルが龍神となった時、必ず役に立つだろう。
アルを守るのを…………………この子供に託したい。その為なら、教育を惜しまない。
私が死んだ後の龍神を________どうか、頼む。
ラフェエルは、笑みをこぼした。
* * *
ラフェーさんが笑うところをこの時初めて見た。
とても悲しそうだった。
ボクに出来る恩返し、それは強くなる事しかないらしい。
この身を全て、アル様に捧げよう。
改めて、そう誓った。
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