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第7章 次期龍神、人狼少年を拾う
人狼少年の"常識"は間違っている
しおりを挟む「はい?」
思わず素っ頓狂な声が出る。全く話が読めない。ダーインスレイヴは静かに、それでいて憐れむように続けた。
「ガロは、お前に凄く感謝している。幸せで、楽しくて、お前に忠誠を尽くしたいとも思ってる。でも、それだけじゃなくて…………その恩義を返したいんだ。
それで………………お前を抱こうとした」
「ダッ………!?」
ぶ、と吹き出してしまった。
抱こうとした?ダコウトシタ?dakoutosita?
何を言っているんだ?ガロは56歳でも見た目は7歳だよ?抱こうとしたって抱きしめようとしたって意味だよね?そうだと言っておくれ………………
「残念ながら、お前が思った通りの意味だ………………………ガロ、自分の口から言え」
ダーインスレイヴの促しに、ガロは目を伏せながらぽつり、ぽつりと言葉を零した。
「ガロ、アルさまのよろこぶこと、したい、けど、わからなくて、………にんげんのメス、ガロがきすしたり、むねをさわったり、おしっこのモノ、あなにいれるとよろこぶ……………だから…………」
「_____ッ」
ガロの言葉に、自然と涙が溢れた。顔が熱い、けど、指先が冷たい。
正直_____ここまでの傷を負っていたとは思っていなかったから。
そりゃあ、上手く笑うこともできないし、手を上げただけで頭をかかえたりというのはあった。…………虐待されると、そうなることを知ってるから細心の注意を払って関わっていた。
けど。
ガロにとっての恩返しは………………自分の身を削るような、何かを差し出さないといけないということなのだ。"ありがとう"という言葉だったり、 "頑張ります!"という気持ちになったりじゃないんだ。
それがどうしても悲しかった。
そうやって生きてきたんだ。それが骨の髄まで染み込んでしまっているんだ。
「な、で、アルさま、ないてる?」
なんで泣いているのかさえわからない。
"ソレ"がどれだけ辛いことかわかる?
私には……………わかる。
私もそうだったから。…………ガロはやっぱり、"前世の私"と同じなのだ。
そこまで考えて、私はガロを抱き締めた。抱き締めずには居られなかった。
「ガロ、…………私、そんなこと望んでないよ。ガロを助けたのは私の気まぐれだよ。そんなこと、しなくていいんだよ。
だから_____そんなこと、言わないで」
「アル、さま………………?」
ガロが戸惑ってる。抑えなきゃいけないのに涙が止まらない。
けど、言わなきゃいけない。
教えなきゃいけない。
私はガロを抱きしめるのをやめて、向き合った。
* * *
アル様は泣いていた。
悲しそうに、泣いていた。
ボクにはそれがわからない。わからないけど、…………アル様の涙にボクも泣きたくなった。
アル様は、小さな声で言った。
「_____ガロ。
気持ちは嬉しいけど、そういう事をしちゃだめ。それは間違っているんだよ…………」
「ガロ、まちがった?」
「うん。間違った。私、凄い怒ってる」
怒っている、という言葉にびく、と体が揺れた。ボクが失敗したせいで、アル様を泣かしてしまったんだ。
「____!ガロ、悪い子、ごめんなさい」
「_____許さない」
「ガロ、どうすれば…………?」
ぽん、と頭に手が乗った。アル様の温かい手。………大好きな、手。
「___一生かけて償ってもらうよ。
私の傍で、色々なものを見なさい。
私の傍で、色々なものを学びなさい。
……………………絶対、アンタの"世界"を変えてやるから」
そう言ったアルティア様は____涙で濡れた顔をクシャクシャにして笑った。
______きっと、この時からだ。
強くなって、勉強して、なんでも出来るようになって。
この人にボクの一生をかけて、涙を流させないと決めたのは____………
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