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第7章 次期龍神、人狼少年を拾う

恩返しの方法

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 「ん~んん~♪」



 夜、アルティアは黒いベッドの上で機嫌よく鼻歌を歌っていた。

 今日も安定の野宿だけど、気持ちは軽い。なぜなら今日は!フランがセイレーン皇国に帰ってるから!


 フランは3日に1度、自国とサクリファイス大帝国を守る聖の加護・"聖なる祈り"を捧げなければならないのだ。



 つまり、つまりだよ?いつも私の布団に入ってきて、大いびきをかく鬱陶しい存在が留守なわけだ!これはテンションあがるよ、フランのいびきは到底ヒロインだとは思えないくらいおっさん臭いから!聖女の皮を被ったおっさんだと思ってるよ私は。



 しかも、最近はガロとも寝てるからそれはもう狭かったのだ。ガロが寝ぼけて狼になった時は私ベッドから落ちたし。


 とはいえ小さいガロを寒空の下で眠らせるのはとても心苦しい。ラフェエルには毎度怒られるけど、もう少し大きくなるまでは一緒に寝ようと思ってます!………あれ、作文?





 そんなことを思っていると、ガロの姿が見えた。どうやら今日もこんな時間まで鍛錬していたらしい。私は大きく手を振る。





 「ガロ~!お疲れ様~!」



 「……………………………」



 「?」




 ガロは黙って私に近づいてくる。いつもならたどたどしくても返事するし、手も恐る恐るだけど振ってくれる。




 ………………何かあった?




 「ガロ、どうしたの?元気ないね」



 「あ、の、アル…さま」



 「ん?なあに?」




 「ガロは………………なにを、すればいい?」




 「へ?」



 ガロはそう言って、私の上に覆い被さってきた。金色の瞳と赤色の瞳が熱を帯びている。泣きそうな、それでいて困ったような。


 「ガロ?」



 「ガロ、ちゃんと、アルさま、きもちよくする」


 そう言って顔を近づけてくるガロ。

 おや?様子がおかしいぞ?何このショタ×おね図式……………確かに私はショタが好きだし、かっこいいよりもカワイイ系の男の子が好みだ。けどそれは二次元の話で、現実にそんな性癖はない。


 …………なんて、言ってる場合か!



 「ガロ!」
  


 「ッ!」





 私は慌てて近づいてくるガロの顔を両手で押さえた。そして、もう一度聞く。


 「……………どうしたの?ガロ、今日おかしいよ。なにがあったの?」



 「………………、ガロ、たくさん、たくさん、かんがえて、これしかよろこぶほうほう、おもいつかなかった」



 「??」



 まるでわからない。こういう時は……………


 「レイヴ」



 私はガロを押さえながら呼ぶ。ダーインスレイヴ、と呼ぶと剣で来ちゃう。そしたらガロはまた怯えちゃうから。ちゃんとこれで来るかはわかんなかったけど、問題はなかったようだ。



 「それじゃ俺を呼べないぞ?アルティア」


 「でも、きたじゃない」


 「たまたま木の上に居たんだよ。話もわかっている。…………お前が、聞きたいこともな。



 けどな………………ガロ、それは間違ってるぞ」




 「…………………?」




 ガロはきょとん、としている。
 ダーインスレイヴは面倒臭そうに言う。



 「アルティア………………聞いても、怒らないか?」




 「………………言ってみなさい」




 「ガロはな____お前に、恩返しがしたいんだ」

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