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第7章 次期龍神、人狼少年を拾う
次期龍神は人狼少年に歩み寄る
しおりを挟む「グゥルル…………!」
ボクは狼に化けて、唸る。
怖い、と思ったら____身体が勝手に狼になっていた。
ボクは狼になるのが嫌いだ。
人間が物珍しそうにみるから、大嫌いだ。剣を向けられたことだってある。………………"化け物だ"と言われたことも、ある。
けれど……………………メスは、どの反応も見せなかった。
それどころか青紫色の剣を捨て、ゆっくり歩み寄ってくる。何をするつもりかわからないけど、怖い、怖い、怖い。
自分が黒い光の玉を飛ばすのは、嫌だ。
_______死にたく、ない!
「ガァアッ!」
ボクはメスに向かって走った。剥き出しの首筋_金色の不思議な印を目印にして_にかぶりついた。
初めて、人間にかぶりついた。
甘い、甘い血の味がする。噛み砕いて______!?
そう思った時、ボクの身体は温かい腕に包まれた。メスは噛まれているにも関わらず、痛がる様子も見せずに優しく撫でてくる。
「大丈夫。私はあなたを傷つけない。
私は貴方から何も奪わない。
人間は、怖いよね。ましてや人殺しの人間なんて…………君には、怖いよね。
けど信じて。私は貴方を危ない目に合わせない。
________大丈夫、貴方はなにも、悪くない」
「…………………!」
メスはそう言って、優しくボクを引き離した。メスの顔にあったマスクが青色の細かい光を放って消えていく。
メスの瞳は____ボクの右目と同じ、いや、それ以上に綺麗な黄金色で。
その目を細めて優しく笑いかけるメスの顔を見て……………………狼化が解けていく。メスはもう一度、口を開いた。
「私、アルティア。___君の名前は?」
* * *
私、失敗した。
辛い思いをしてきた人間が、急に助けられたらどう思うか。
嬉しい、と感じられるのはそれだけ幸せな環境で育ったからで。
助けられたことがない人間が感じるのは___『恐怖』だ。
どうして助けられたのかわからないから、戸惑うんだ。
ましてや私は人殺し。トラウマになってもおかしくない程のことを目の前でしたんだ。
怖がるな、って言うのが無理な話だ。
事実____子供は狼になって、私に噛み付いてきた。
凄く痛かった。………けど、痛かったのは噛まれた首筋じゃない。
_____心が、痛かった。
だから私は………………私がされて嬉しいと初めて感じたことを行った。
龍神で父親のガーランドがいつもしてくれたように、優しく抱きしめて、『大丈夫だよ』って。
上手くできていたかはわからないけど、狼は先程の子供に戻った。抱きしめていたもふもふした身体は見窄らしく軽い身体になって、金と赤の瞳は銀色の長い髪に隠れた。それを見計らって、言葉を紡いだ。
「私、アルティア。___君の名前は?」
「………………………………」
「まだ、怖い?」
子供はふるふる、と首を振った。
でも名乗ろうとはしない。…………警戒されてるのかな?
「そうじゃない、話せないんだ」
「わ」
「…………!」
突然後ろから声がして、振り返った。血まみれのダーインスレイヴがぽりぽりと頭をかいていた。抱きしめている子供が震えている。
そりゃあ突然知らん大人が現れたらビビるわ。私もダーインスレイヴの存在忘れてたし。
「こき使っておいて忘れんなよ」
「心を読まないでよ。……で、なんで話せないってわかるの?」
「ソイツの心が言っていたからだ。人間の言葉をほとんど話せない、自分に名前もない、ってよ」
「……………!」
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