【完結】転生したらヒロインでも悪役令嬢でもなく世界征服してる龍神の後継者だったのでこの世界の常識をぶっ壊してみようと思います!

Ask

文字の大きさ
上 下
140 / 270
第7章 次期龍神、人狼少年を拾う

"奴隷売買国"・プリズン

しおりを挟む


 私は、街を歩くのが好きだ。
 素朴だったり、きらびやかだったり…………城にいる兵士やメイドのように決まりきった動きしかしない人間と違って自由で、陽気な声を出して笑うのを見ると心が癒される。



 セイレーン皇国に出てから結構いろんな街を訪れていて、いつしかそう思うようになっていた。



 だから、ラフェエルが"街に行く"と言った時とても嬉しかった。




 _____なのに。




 「なによ………………この街……………………」




 アルティアは目を覆う仮面の外を見て、震えながらそう言った。
 その街は、とても汚かった。空は傘のような結界で覆われ夜のように暗い。ネオン街のようなきらびやかな看板とは対照的に周りは薄汚れてて汚い。けど、驚いたのはそこじゃない。




 「俺を、俺を買ってくれ!」



 「なんでも致します!なのでご慈悲を! 」





 「うわぁぁぁぁぁん!」



 「く、来るなぁ、俺を見るな、貴族が!」



 「んーっ!んーっ!」




 街の真ん中にある道を囲むように牢屋が立っている。その中には、老若男女の人間が声を上げて閉じ込められている。それを街ゆくきらびやかで豪華な貴族の格好をした人間_私とラフェエルと同じように仮面をつけている_が見ている。



 こんなの私の好きな街じゃない。
 私はすぐさま同じように仮面を付けたラフェエルを見た。


 「ラフェー!なによここ!なんで人がッ…………!」



 「騒ぐな、目立つ。………………ここは奴隷売買国・プリズンだ」



 「奴隷…………売買国……………?」


 「そうだ。………大国の支配下にない国にはわりとある。小国の醜い貴族ぶったゴミどもを標的に作り出した場所だ」




 「なんで、そんなに平然としていられるのよ………………こんなこと、人間がすることじゃないわ…………!」


 「____人間は、貴様のような龍神と違って醜い生き物なんだ」





 そう言い切ったラフェエルの声は、とても冷たくて。

 私の心はズキ、と痛くなった。

 _____こんなことを言うラフェエルと、一緒に居たくない。






 「………………………ッ、私!帰る!」



 「そうしろ。外でリーブ達と共に待っていろ」



 「~っ!ラフェー、いや、ラフェエルには幻滅したわ!」


 「な、おい!」



 アルティアはラフェエルの言葉を無視して走った。しかしそれは入口ではなく。街中に向かって走り出したのだ。





 あの馬鹿………………一体何がしたいんだ?



 「_____クソ」



 ラフェエルは小さく毒を吐いた。







 *  *  *





 「は、は………………………」



 私は無我夢中に走った。


 ラフェエルの馬鹿!クソ!ウンコ野郎!


 頭の中はこれでいっぱいだった。ラフェエルは確かに理不尽大魔王だし人でなしだ。けど、こういう場所には来ないと思っていた。こんな巫山戯た国に足を踏み入れるなんて思っていなかった。



 異臭ではなく胸くそ悪くて、吐きそうだ。
 人間は嫌いだし今更正義ぶる気はないけれど、それでもここまで気分が悪くなるのだから案外人の心は失っていないようだ。

 こんなことがまかり通る世界なんて本当に滅んでしまえばいいと思う。



 ______いっそ私が壊してやろうか?


 そう思って、でもすぐに首を振った。




 いや、だめだ。キリがない。人間の欲にキリなんて存在しない。人間がいる限り、欲は断ち切れない……………そんなこと、前世から知っている。





 一刻もこの場から立ち去りたい。


 でも、行けど行けど金切り声を上げる人間の入った牢屋が途切れない。



 ……………こんなに出口は遠かったっけ?




 ふと、我に返った頃には……………………薄暗い路地裏に居た。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

処理中です...