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第6章 変化と成長と新たな旅
朝日と君の優しい笑顔
しおりを挟む「…………………………………」
私がそう聞くと、ラフェエルの動きは止まった。そして沈黙。私は更に言葉を重ねる。
「もしかして、何も考えてなかったとか?面白みがないなぁ。この旅が人生の全てじゃないんだから。
それにご褒美がないとモチベーション上がらないでしょ?今からでも考えたら?」
「…………………余計なお世話だ。
貴様は何か考えているのか?」
やっとラフェエルが口を開いた。けどそれは『~したい』というものではなく、質問を質問で返された。らしいといえばらしいなぁ、なんて思いながら言う。
「私は旅が終わったら、どこかに小さな小屋を建てる!」
「建ててどうするんだ?」
「どうする?決まってるじゃない、住むのよ!あ、サクリファイス大帝国やらセイレーン皇国みたいな大きな国じゃなくて、それこそ今いるこの街道沿いの小さな村とか…………
そこで、私は龍神っていうのを隠して普通に暮らすの。朝起きて、ご飯食べて、畑なんて耕してみて、お風呂はいって、寝る…………そんな、なんの変哲のない生活がしたいな」
「それが面白いとは思えないが?」
「やってみなきゃわからないじゃない。何事もやってみるから始まるんだから。案外面白くて龍神の仕事をほっぽりだしちゃうかもしれないけどね」
私は想像して、1人笑う。
ラフェエルはふう、と溜息をついて私を見下ろす。
「本末転倒じゃないか。なんのために龍神になる気なんだ?」
「いいじゃない。ちゃんと旅をしてちゃんと龍神になるんだから。龍神が何をするのか分からないけど、少しくらい私が好きにできる時間があるはずだわ。ううん、その時間を作るし。
お金は勿論サクリファイス大帝国…………ラフェー皇帝さんに借りちゃうかも!よろしくね!」
「……………何を言っている?私は皇帝にならないぞ」
「いや、なるでしょ」
私は再び寝転がる。ラフェエルの整った顔を見ながら話を続ける。
「"龍神と共に旅をした、龍神の元契約者"になるわけでしょ?元々実力だって相当だし、頭もいいし、その称号もあれば勇者でしょ。
仮にアンタの弟が皇位を継ぐなら私が言いにいくわ、"ラフェエルを皇帝に"つって!私は龍神なんだからそれくらいの発言力はあるわよね~。
ふふ、想像しただけで楽しいわ。そう思わない?」
「………………………………」
ラフェエルはまた難しい顔をして黙る。つまらないなぁ。もしもの話じゃない。やるやらないは別にして、未来を夢見るのは悪いことじゃないのに。
「よっ、と」
私は起き上がって、立つ。ラフェエルの周りをウロウロする。
「…………まあ、それは置いといて。
やりたいこと、沢山あるんだ。旅をしてたらまたなにかしたいって思うかもしれないし。でも、それをする為にはまずこの旅を終わらせなきゃ行けないわけでしょ?
あーあ、バビュ!とワールドエンドだかに行ければいーのになぁ」
「………………そう、だな」
「早くワールドエンドに行こうよ!………あ、でもワールドエンドで契約関係が終わっても友達でいてよね?私、サクリファイス大帝国の守護神になってあげるからさ!未来は安泰だね!」
「_______ああ。早く、行こう」
「…………………?」
ラフェエルはそう言って、私の頭に触れた。ガーランドよりは小さいけど、大きな手。でもそれよりも。
____ラフェエルが、笑っている。
珍しい。いつも難しい顔ばかりしてるのに。イケメンだな、とかそういう軽口を叩けないくらい…………朝日と相まって綺麗に見えた。
「…………ラフェー?」
「それより、さっきの下手くそな歌はなんだ?耳が腐るかと思ったぞ」
「んなっ!?」
突然の悪口にムカッとする。さっきの笑顔はどこへやら、いつもの難しい顔に戻って私に背を向けた。
いつも通りじゃん。ちょっとでも心配した私が馬鹿みたい………………ふんだ、もう知らないもんね。
でも_____あの綺麗な、優しい笑顔を忘れることは、できそうにないな。
そんなことを思いながら朝日を見た。
もうすっかり朝だ、そうぼんやり思った。
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