137 / 270
第6章 変化と成長と新たな旅
次期龍神は考える
しおりを挟むアルティアは黒馬に揺られながら、考える。
逃げられないとなると、本格的に龍神になることを考えなければならない。いつまで駄々をこねても龍神ということには変わらないのだから。
なら、こんなのはどうだろう。
早く私がちゃんとした龍神になっちゃう!龍神の仕事を行いつつ、どこか小さな村で小さな家を作り、一人暮らしをして普通に生活する………………おや?意外といいんじゃないか?これ。
龍神になんてなりたくない!と言い続けたけど明確になりたくない理由はないし、なったとしても私自身がなにか変わるという訳でもないだろう。ちゃんと受け入れて、役目を果たせばあとは私の自由じゃないか!
単純な思考回路でそんな答えを導き出し、思わず笑みを零した。
* * *
「………………………んん?」
私は目を覚ました。
今日は野宿ではなく、街道にあった小さな宿屋に泊まることになった。いつものように宿に着くなり寝転んでいた。
多分、その時に寝てしまった。
ぽりぽりと頭をかきながら窓の外を見る。まだ薄暗い。夜?でも少し明るいし…………夜明け、ってところかな。じゃあ変な時間に起きたなぁ………なんて思いながら隣のベッドを見る。
「…………………?」
隣のベッドにラフェエルの姿はなかった。あれ?もう起きたの?というかどこいったのよ……………
私は着替え魔法で黒の上着を纏い、部屋を出た。
* * *
「ほほぉ……………すっごい…………」
思わず感嘆の声を漏らす。
宿内にラフェエルが居なかったから外に出たのだ。そしたら、山の隙間から太陽が顔を出していた。静かで、優しい光が大地を照らし出す。まさに夜明けである。こんな時間に起きたことがなかったから、この光景を見るのは初めてで感動した。
「よいしょーっ!」
私は草むらに寝転がる。さわさわと揺れる草木はみずみずしくて、思わず笑みが零れる。こんな地面に長時間寝るのは嫌だけど、少しの時間ならただただ気持ちがいい。
歌でも歌おうかな。
「~♪」
私は前世で聞いてた歌を口ずさむ。こんなにゆっくりできるなら、早起きもいいね。
「………………随分ご機嫌なようだな」
「うひゃあ! 」
歌い終わり、目を開けたら頭上にラフェエルがいた。思わず飛び起きる。そうだった、そもそもこの男を探しに来てたんだ!
本来の目的をすっかり失念していた上に歌を聞かれて恥ずかしくなる。しかし、ラフェエルはそんなことどうでもいいらしく、呆れ気味に言う。
「貴様はなんでそう淑女らしくできないんだ。こんなところ他の者に見られたら何を言われるかわからないぞ」
「い、いいじゃん!こんな朝早くに起きてる人なんてそうそういないし!…………というか、ラフェーは早起きだね?いつも?」
「…………………まあ、な」
さぁ、と風が吹いた。心地いい風が私の髪を揺らす。その髪を手で抑えながら、太陽を見た。
「まあ、この光景が見られるなら、誰だって早起きしたくなるか。
なんていうか…………すごい、穏やかな世界って感じ。ラフェーと私、二人きりの世界だね!なんて………………」
そこまで言って、ラフェエルを見た。ラフェエルは、顔を逸らしている。耳が赤い。…………また、この仕草。最近多いな。本当になんというか、こっちも気まずくなるからやめて欲しい。早めに話題変えよ。
「ラフェエルはさ、この旅が終わったら、何がしたい?」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

私、確かおばさんだったはずなんですが
花野はる
恋愛
不憫系男子をこよなく愛するヒロインの恋愛ストーリーです。
私は確か、日本人のおばさんだったはずなんですが、気がついたら西洋風異世界の貴族令嬢になっていました。
せっかく美しく若返ったのだから、人生勝ち組で楽しんでしまいましょう。
そう思っていたのですが、自分らしき令嬢の日記を見ると、クラスメイトの男の子をいじめていた事が分かって……。
正義感強いおばさんなめんな!
その男の子に謝って、きっとお友達になってみせましょう!
画像はフリー素材のとくだ屋さんからお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる