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第6章 変化と成長と新たな旅
弱気姫の決意
しおりを挟む「アルティア様、お怪我を治療します!」
「あ、うん、お願い」
休憩時間、エリアスは草むらで寝転ぶアルティアに声をかけた。アルティアはそれに気づくと体を起こし、小さな擦り傷のある膝をエリアスに見せた。
アルティア様に仕えた頃は、怪我をしてもこうして素直に見せてくれることは無かった。『自分で治せるよ』なんて強がっていたけど、治癒魔法は"自分以外の誰か"にしか使役できない。 ………特別な力を持つアルティア様がどうなのか知らないけれど、魔法の基本的知識だ。
わたくしは、足でまといだ。
自分で自覚している。クリスティド殿下やリーブ様、ダーインスレイヴ様のように剣を操れないし、最近仲間に加わったフラン様のように聖なる力を宿している訳では無い。
わたくしの価値は治癒魔法しかないのだ。こうしてアルティア様の傷を治して差し上げるのが自分の役目。
でも、最近は………………それだけでは満足出来なくて。
もっとお力になりたいという気持ちが強くなっているのを感じる。
アルティア様はお強い。その証拠に、私の視界_アルティア様のお身体_から、天にまで登る様々な色の魔力が漏れている。こんな膨大な魔力はこの世のどこを探してもいない。アルティア様のお父様も凄かったけれど、アルティア様の魔力はお父様よりはるかに上だ。
それに先日、セイレーン皇国での戦いでは恐ろしい力をこの目で見た。一生忘れることは無いだろう。
そして、それ以上に。
現龍神様しかアルティア様をお止めすることが出来なかった。畏怖を覚えるのと同時に………………とても悔しかったのを覚えている。
私は、強くなりたい。
またアルティア様が暴走してしまった時、お助けできるようになりたい。
「ふう………………ありがとう、エリー。今日も綺麗に傷が治ったわ、痛くもない。
エリーの治癒魔法は凄いわね」
アルティア様はふわり、笑った。
光栄すぎるお言葉だ。…………でも、それだけじゃ足りないです、アルティア様。
「あの、アルティア様」
「ん?何?」
言え。
言うんだ、エリアス・ラピュード・ヴァリアース。
エリアスは震える心を抑えて、アルティアを見つめながら言った。
「わたくし_____アルティア様のように幻獣を召喚できるようになりたいです」
* * *
「え」
思わず声が漏れた。
目の前でエリアスが私を見つめている。いつものような、おどおどした様子は見えない。それどころか、堂々としていて……………真剣な顔だった。
いきなりどうしたんだろう?とかなにかあった?とか…………そういう在り来りな言葉で返してはならない気がした。
真剣には、真剣で返さなきゃ。
「……………本気で言ってるの?」
「ええ。____わたくし、アルティア様のお力になりたい。
わたくしもアルティア様のように………強くなりたいのです」
私の力に?……………もう十分なっているんだけどな…………傷も治してくれるしね。そりゃ、最初は遠慮したよ。エリーは従者と言う肩書きだけど一国のお姫様だもん。自分で治せるよ~なんて誤魔化してたけれど、あまりにも懇願するからしてもらうようになった。エリーの治癒魔法は攻撃ではないけど、不思議な………それこそ、"聖なる力"のような魔法だ。
ぶっちゃけフランよりも聖女っぽい。
そんな聖女らしいエリアスは頭を下げた。
「どうかわたくしに____幻獣の召喚の仕方をお教えください」
"幻獣を下さい"ではなく"召喚の仕方を教えて"、か……………あくまで自分の力でやろうとしているんだ。
その心意気に、好感が持てた。
だから。
「いいよ。___私が手伝ってあげる」
こんなことを言ったんだと思う。
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