上 下
117 / 270
第5.5章 次期龍神と生贄皇子の再契約

次期龍神と生贄皇子 #1

しおりを挟む
 





 「…………………………………ん」





 再び目を覚ましたら、そこは聖の精霊の聖域・"祈りの間"ではなくセイレーン皇国が用意した自分達の部屋だった。

 どうやら自分は、何があったのかを知ることも無く寝てしまったようだ。


 ラフェエルは身体を起こして、隣のベッドを見る。




 「……………………………すぅ」





 アルティアが寝ている。
 いつもの馬鹿面寝顔にふ、と笑顔が漏れるり



 _____好きだと認識したら、こんなにも愛おしく見えるものなのだろうか。

 ラフェエルは立ち上がり、アルティアの眠るベッドに座る。そして、そ、と頬に触れた。



 ………………アルティアは私にキスをした。
 好きだと言った。


 アルティアも私のことを愛していたのだ。

 それが思いのほか嬉しかった。様々な女に言い寄られ、若い頃から気分で肉体の関係を持った女に抱く感情とは明らかに違う。


 一生大切にしたい、そう思える女。




 そう考えたところで、太陽神・ドゥルグレの言葉を思い出す。



 "テメェはワールドエンドで死ぬ"



 "器になるんだ"




 ____もしそれが本当なのであれば、一生そばにいることはできないだろう。



 だが。





 ……………………この女の為なら命さえも惜しくない。



 どうやら私はすっかり腑抜けたようだ。
 恋は人を盲目にするなどという妄言は、その通りなのだろう。




 "逃げろ"



 _____逃げるなど情けないことはしない。
 命などくれてやる。
 生贄だった頃では考えられない心持ちだ。


 最後の瞬間まで、この女の傍に_____




 私は、寝ているアルティアの唇に自分の唇を重ねた。






 *  *  *







 「んん、………………」




 私は薄く目を開けた。
 ベッドの上に居るようだ。ラフェエルと再契約してそのまんま寝てしまったみたいだ、とぼんやり思いながら身体を起こす。


 「んーっ、…………ふぁ」


 大きく伸びをして、欠伸を一つ漏らす。
 身体が軽い。昨日は夜通しでバタバタしていたから余計そう感じた。




 「…………………………起きたか」



 「うわっ!」




 突然声をかけられびく、と肩が跳ね上がる。もうすっかり聞きなれた声のした方を見ると…………………ラフェエルが本を片手にソファでくつろいでいた。



 それを見て本当に助けられたのだと安堵する。再契約もしたし………………って、再契約した時私キスしたんだ!!!



 思い出した瞬間グァッ、と気恥しさが込み上げてくる。うわーーーー私ってば大胆!昨日の私、なんてことをしてるの!?最初に契約を交わされた時は無理矢理だったから戸惑いしかなかったけど、今度は!自分で!キスをしたんだ!

 唇少し硬かったな…………って、考えるな私、忘れるんだ私!


 色んな感情の激しい波が心に押し寄せるのを必死に制しているけれど、それでもパニック状態の私にラフェエルが近づいてきた。



 「………………どうした?顔が赤いぞ?」



 「ひぇっ!?」




 え、近い近い近い!顔も体も凄く近い!私達こんなに仲良かったっけ!?


 「……………その悲鳴はなんだ?」



 「い、いや、な、なんでもないです」



 「言ってみろ」


 「うう、本当になんでもないよ。それよりラフェエル、無事でよかったね!」


 自分でもわかるくらい投げやりに方向転換をする私。そんな言葉にラフェエルは目を見開いてから、ふ、と笑みをこぼす。



 「心配してくれたのか、アルティア」



 「そ、そりゃあ大事な契約者だし……………?」



 「………………それだけか?」



 「え」





 私の視界は一転した。見上げると、天井ではなくラフェエルの顔。


 押し倒された、と気づくのに少しだけ時間がかかった。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました

あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。 どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。

シテくれない私の彼氏

KUMANOMORI(くまのもり)
恋愛
 高校生の村瀬りかは、大学生の彼氏・岸井信(きしい まこと)と何もないことが気になっている。  触れたいし、恋人っぽいことをしてほしいけれど、シテくれないからだ。  りかは年下の高校生・若槻一馬(わかつき かずま)からのアプローチを受けていることを岸井に告げるけれど、反応が薄い。  若槻のアプローチで奪われてしまう前に、岸井と経験したいりかは、作戦を考える。  岸井にはいくつかの秘密があり、彼と経験とするにはいろいろ面倒な手順があるようで……。    岸井を手放すつもりのないりかは、やや強引な手を取るのだけれど……。  岸井がシテくれる日はくるのか?    一皮剝いだらモンスターの二人の、恋愛凸凹バトル。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

変態王子&モブ令嬢 番外編

咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と 「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の 番外編集です。  本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。 「小説家になろう」でも公開しています。

精霊に転生した少女は周りに溺愛される

紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。 それを見た神様は新たな人生を与える 親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。 果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️ 初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!

破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました

平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。 王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。 ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。 しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。 ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

(完結)辺境伯の一人息子に婚約破棄された美貌の子爵令嬢はスパダリに愛される

青空一夏
恋愛
ここは王都から遠く離れた辺境の地。一年の半分は雪に覆われ空には幻想的な虹のカーテンが降りる厳寒の地である。 だが7歳のソラにとって雪は天空から舞い降りてくる神秘的な白い花びらであった。積もった雪で作る雪兎や雪だるまは貴重な友人であり遊び相手なのだった。ソラは氷や雪でできたものを意のままに動かせる魔法ができこれは秘密であった。 ソラ・マディソン子爵令嬢の容姿は雪の妖精のようであり、プラチナブロンドとバラ色の頬にスミレ色の瞳は宝石のようにきらめき、愛らしい唇は熟れたチェリーのようにみずみずしく赤い。ソラは恵まれた容姿をしながらも両親から愛されない子供であった。ソラの両親は最初から愛し合ってはおらず政略結婚であったし、男子でないソラは家を継ぐ資格がないからである。 そんなソラが恋した相手はスノーホワイト辺境伯家の一人息子ベントレーだった。めでたく婚約者になれたが、ベントレーは王女を娶ってしまうのだった。ソラの恋は悲しく打ち砕かれて・・・・・・ ハッピーエンドで、クズなベントレーよりさらに素敵なダーリンに愛されるヒロイン。気分転換にどうぞ。あまり複雑でなく登場人人物少なめ。おとぎ話風です。ベントレーがゲスなので胸くそ注意。ショートショートの短いお話です。6000文字前後の予定です。異世界中世ヨーロッパ風の魔物がおり魔法ありの世界です。(あくまで予定で変更・追加の可能性あり)

処理中です...