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第5.5章 次期龍神と生贄皇子の再契約
次期龍神と生贄皇子 #1
しおりを挟む「…………………………………ん」
再び目を覚ましたら、そこは聖の精霊の聖域・"祈りの間"ではなくセイレーン皇国が用意した自分達の部屋だった。
どうやら自分は、何があったのかを知ることも無く寝てしまったようだ。
ラフェエルは身体を起こして、隣のベッドを見る。
「……………………………すぅ」
アルティアが寝ている。
いつもの馬鹿面寝顔にふ、と笑顔が漏れるり
_____好きだと認識したら、こんなにも愛おしく見えるものなのだろうか。
ラフェエルは立ち上がり、アルティアの眠るベッドに座る。そして、そ、と頬に触れた。
………………アルティアは私にキスをした。
好きだと言った。
アルティアも私のことを愛していたのだ。
それが思いのほか嬉しかった。様々な女に言い寄られ、若い頃から気分で肉体の関係を持った女に抱く感情とは明らかに違う。
一生大切にしたい、そう思える女。
そう考えたところで、太陽神・ドゥルグレの言葉を思い出す。
"テメェはワールドエンドで死ぬ"
"器になるんだ"
____もしそれが本当なのであれば、一生そばにいることはできないだろう。
だが。
……………………この女の為なら命さえも惜しくない。
どうやら私はすっかり腑抜けたようだ。
恋は人を盲目にするなどという妄言は、その通りなのだろう。
"逃げろ"
_____逃げるなど情けないことはしない。
命などくれてやる。
生贄だった頃では考えられない心持ちだ。
最後の瞬間まで、この女の傍に_____
私は、寝ているアルティアの唇に自分の唇を重ねた。
* * *
「んん、………………」
私は薄く目を開けた。
ベッドの上に居るようだ。ラフェエルと再契約してそのまんま寝てしまったみたいだ、とぼんやり思いながら身体を起こす。
「んーっ、…………ふぁ」
大きく伸びをして、欠伸を一つ漏らす。
身体が軽い。昨日は夜通しでバタバタしていたから余計そう感じた。
「…………………………起きたか」
「うわっ!」
突然声をかけられびく、と肩が跳ね上がる。もうすっかり聞きなれた声のした方を見ると…………………ラフェエルが本を片手にソファでくつろいでいた。
それを見て本当に助けられたのだと安堵する。再契約もしたし………………って、再契約した時私キスしたんだ!!!
思い出した瞬間グァッ、と気恥しさが込み上げてくる。うわーーーー私ってば大胆!昨日の私、なんてことをしてるの!?最初に契約を交わされた時は無理矢理だったから戸惑いしかなかったけど、今度は!自分で!キスをしたんだ!
唇少し硬かったな…………って、考えるな私、忘れるんだ私!
色んな感情の激しい波が心に押し寄せるのを必死に制しているけれど、それでもパニック状態の私にラフェエルが近づいてきた。
「………………どうした?顔が赤いぞ?」
「ひぇっ!?」
え、近い近い近い!顔も体も凄く近い!私達こんなに仲良かったっけ!?
「……………その悲鳴はなんだ?」
「い、いや、な、なんでもないです」
「言ってみろ」
「うう、本当になんでもないよ。それよりラフェエル、無事でよかったね!」
自分でもわかるくらい投げやりに方向転換をする私。そんな言葉にラフェエルは目を見開いてから、ふ、と笑みをこぼす。
「心配してくれたのか、アルティア」
「そ、そりゃあ大事な契約者だし……………?」
「………………それだけか?」
「え」
私の視界は一転した。見上げると、天井ではなくラフェエルの顔。
押し倒された、と気づくのに少しだけ時間がかかった。
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