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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神

魔剣の物語

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『現龍神……………!?』



『ガーランドさんだー!』



『お、お初にお目にかかります…………』



『……………随分堂々とした登場だな、クソが。クソ女の父親はやはりクソだ』




 神々がざわついている。
 アルティア様の父親ということは………………現龍神なのでしょうか…………………!?




 リーブは唾を飲み込む。
 自分の主人の命を奪おうとした龍神が、この場に居るんだ。


 今、私は"伝説"に遭遇したのだ。
 神々に会い、アルティア様の先程の戦いにも目を剥きましたし、このような場面に毎度立ち会っていたら私は倒れてしまうだろう。つくづくラフェエル様は凄いと思う。




 ……………そうだ、ラフェエル様……………!



 立て続けに起きた騒動で本来の目的を忘れていたリーブはすぐさま浮遊解除魔法で天井のステンドグラスに貼り付けられたラフェエルを救出した。













 *  *  *



 「じゃあ、我はアトランティスに帰る」


 「…………おい、ガーランド。アルティアはまだ目覚めてないぞ」



 軽い調子で帰ろうとするガーランドを、ダーインスレイヴは引き止める。そこに、アルティアと関わるときのような明るい調子はない。しかしガーランドは気にすることなく、やはり軽い調子で答えた。





 「我は元々この旅自体に関わるつもりはなかったんだ」


 「その癖すぐ来たということは監視でもしていたのか」



 「ああ。おかげで聖女が死ぬことを阻止できたのだからいいだろう?……………娘の成長も見れたし、我は満足だ。


 それに____起きた時に我が居たらアトランティスに帰りたい、と言うかもしれないだろう?」



 そう言って、ダーインスレイヴに抱かれたアルティアの頭を撫でる。その手は宝石でも扱うかのように優しいもので。




 …………しばらく見ないうちに、随分丸くなったものだ。5000年前ではありえなかった光景だな。



 「そりゃあ丸くなるさ、こんなに可愛い娘がいればな」


 「心を読むな」 


 「そういうなって………おっと、そろそろ本当に帰らなければアルが目覚めるな。

 アル、我はいつでもお前を見ているぞ」




 ガーランドはちゅ、とアルティアの額に唇を落とした。そして、ダーインスレイヴを見た。



 「ダーイン………ダーインスレイヴ。


 _______頼むぞ」



 ガーランドは真剣な顔でそう言った。
『頼むぞ』……………この言葉には沢山の意味が含まれていることを、ダーインスレイヴは知っている。



 「ああ。____"隠された真実"の全てを知るまで、俺はアルティアと共にある」


 それを聞いてガーランドは嬉しそうに笑ってふ、と消えた。




 「んっ………………………ガーランド?」




 それと入れ替わりのような形でアルティアは目を覚ます。目を擦りながら囁いた言葉にダーインスレイヴは笑顔で答える。


 「やあ、おはよう、我の娘」


 「……………………は?」




 ………………………物凄い嫌な顔をされた。
 傷つくなあ、本当に。


 俺の守るべき主は、生意気で我儘で未熟な、可愛い可愛い"この世界の希望"である。



 ダーインスレイヴはそのあとも『自分が暴走したのをとめたんだ』と言い張っていたのは別の話。









 嗚呼、因みに_____これは、"友"との約束を果たす為に"傍観者"に徹する魔剣の物語でもある…………なんてな。



 ダーインスレイヴはふ、と1人笑った。
















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