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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神
聖女は雄弁に語る
しおりを挟む「よくここがわかりましたね、アルティア様………………………いいえ、"龍神様"?」
フランは私を見下ろしながらくすくすと笑っている。初めて会った時のような極悪面。どこが聖女なのか全く検討がつかない。この世界は私の異世界に対しての期待を見事に裏切ってくれる。
私はぎり、と歯ぎしりをしてから口を開いた。
「"降りてこい"」
「きゃっ!」
言霊呪文を使う。どんなに醜い聖女でも相手は人間だ。しかも女だ。…………なんて、人間らしいことを考えて少し弱めの言霊だ。
「…………驚いた、アンタの命令通りに身体が動くのね、なるほど、とってもチートな能力ね」
「…………悪いけど、お遊びしている暇はないの。痛い目に合いたくないのなら今すぐ聖なる祈りを使ってラフェエルを目覚めさせなさい」
「何故?___ああ、貴方は知らないのね。ラフェエル様はもう貴方の契約者ではないの。私が無理やり解除しちゃったから」
「……………………」
…………無理やり解除した、ということはラフェエルが望んだことじゃないのか。
少しだけ安堵する私に、フランは両手を胸に当てて、言葉を続けた。
「私、聖女でしょう?世界でたった1人、"世界を平和にできる存在"なの。
その私が、そこらのちょっとイケメンな男と結婚するわけには行かないでしょう?いくら平民の出とはいえ、皇族だし?………………で、私に"釣り合う男"はラフェエル様だと思うの。
あなたもそう思わない?」
「………………………」
アルティアは黙っている。黒い綺麗なストレートヘアー、黄金色の瞳、先程会った時に来ていたドレスとはかけ離れた動きやすそうな服____自分より美しい女を前に、フランはいらだちを隠せなかった。
「いい?私はこの物語のヒロインなの!きっとこの世界は転生小説の世界で、私は選ばれた主人公!そして貴方は私の恋路を邪魔する魔王!…………で、向こうで眠るラフェエル様は私の婚約者…………………愛を重ねて、相思相愛になり、結婚するハッピーエンドな物語なの。
それなのに、何故貴方がラフェエル様の婚約者であるの?契約なんかしちゃって、あろうことか旅までして!悪役は悪役らしくモブに徹しなさいよ!」
フランはそう言って聖なる光を纏う。掌には雷によく似た聖魔法、龍神は闇属性だと聖の精霊・カーバンクルが言っていた。なら弱点は聖だ、と言っていた。勿論私も知っている。
何故なら前世で私は____別の世界・"日本"に住んでいた異世界転生者だから!
「轟け聖魔法!!」
私がそう叫ぶと聖なる雷を悪役龍神に______!?
フランは言葉を無くす。
龍神は全力の聖なる雷をぺし、と片手でいなしたから。行き場を無くした聖なる雷は消えていく。
龍神___アルティアは聖なる雷を払った片手でくしゃり、と髪をかきあげて、口を開いた。
「……………_______アンタ、ゼッタイイセカイテンセイシャデショ」
「______!」
フランは愕然とする。
その言葉は_____間違いなく日本人が使う言葉だった。
つまり。
この龍神は私と同じ転生者だということを物語っていて。
嘘、そんな、……………私以外にも転生者がいるというの………………?
しかも、私より可愛くて、強くて、…………そんなの、主人公じゃない!
フランはアルティアを睨みつけた。
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