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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神
次期龍神は手段を選ばない
しおりを挟む『テメェこらクソ女!なんだこれは!?』
黒渦から落ちてきた太陽神・ドゥルグレは大声で怒鳴る。然しアルティアは微動だにせず、足を組みながら見下ろした。
「話があるから呼び出したのよ」
『ふざけ____っがぁ!!』
怒りに任せ、飛びかかろうとするドゥルグレは地べたに叩き落とされた。____この太陽神・ドゥルグレは以前アルティアと手合わせをした時呪術をかけられ"生きた奴隷"にされたのだ。
奴隷は主人に逆らえない。
ちなみに、これは初めて呼ばれた訳では無い。
グレンズス魔法公国の時はもちろん、セイレーン皇国に入ってからも"暑いから太陽の熱を減らせ"などという理不尽極まりない要求をさせる為に高頻度で呼び出される。
しかし。
『今は夜だ……………!太陽の熱もくそもねーだろうが……………ッ!!』
呪いの効果で脳内に響く声に耐えながらドゥルグレは言う。そんなこと露も知らないアルティアは無視して、他の小さな妖精神、精霊に声をかけた。
「………………この馬鹿神はとりあえず放っておいて。
マリン、アクア、リーファ、あとグランドに聞きたいことがあるの」
『なになにー?』
『太陽神がアルティアに屈服したというのは本当のようね。…………いい気味だわ』
『んだとゴルァ…………って!なんで他の妖精神やら精霊やらいんだよ!お前ら下等神と面なんざ合わせられ____「うるさい、黙れ」___っ』
アルティアの一言に、ドゥルグレの4つの手が口を塞ぐ。何度も言うが、『呪術・私の所有物』を使われたドゥルグレはアルティアの命令が絶対なのだ。
その呪術をかけられた事_というかその呪いの存在すら知らない_妖精神、精霊は戸惑う。あの傲慢で我儘な太陽神が…と。そんな恐怖さえ覚えさせる光景に固まる双子神の頭を撫でながら、森の妖精神・リーファが問うた。
「その、知りたいことというのは………………?」
「_____"祈りの間"の在り処、よ。聖女以外の人間が聖域なんでしょう?なら、"人ならざる者"のアンタたちなら知っているんじゃない?
私の予想では、そこに"聖の精霊"が居ると思うのだけど」
『……………………そんなの、アタシが知るわけないじゃない。聖の精霊なんて引きこもりで有名よ。ねえ、アクア』
『うん、カーバンクルは引っ込み思案なんだ!というかあれは病気だよね?聖女に依存するんだよ!』
『聖女は人間でありながら妖精神と同じ地位ですもの、従うのは当然ですわ。……………ですが、"祈りの間"の場所まではわかりません。申し訳ございません』
深深と頭を下げるリーファとキャンキャンどうでもいい情報を漏らすアクアとマリン。アルティアはそれでもリーファに話しかけた。
「グランドは?グランドは何も知らないの?」
『ええと………………聖女の"祈りの間"は聖女が変わる度に入口を変えているから自分の記憶は当てにならない、と申しております』
「定住はしない、か……………」
アルティアは考える。
…………グランドは少なくとも50年もドゥルグレに捕まっていたんだ。その間に"祈りの間"が変わっていたとしたら無駄足になる。…………で、あれば。
そこまで考えて、私は未だに地面と仲良くくっついているドゥルグレに問うた。
「ドゥルグレ、アンタ、妖精神より上位の神よね、何か知らないかしら?」
『ヘッ、誰が……………教えてやるかよ…………!"契約者"が聖女に攫われてそんなに焦ってるのか……………、いい気味だ』
「…………………攫われた?」
『あ』
ドゥルグレはやべ、と漏らして口を塞ぐ。……………太陽神のメッキは会う度に剥がれていくな。ここまで間抜けだと笑える。
けど、今そんな余裕はない。
「ダーインスレイヴ」
アルティアの声に、魔剣のダーインスレイヴが人の形から剣になる。宙に浮くそれを手に取り、ドゥルグレに歩み寄った。
「……………ドゥルグレ、知ってる事を全部話すのと、その邪魔そうな腕1本ずつゆっくり痛みを感じつつ切られるの、どっちがいい?」
『…………………ッ!』
ぴたり、とドゥルグレの肩に当てられた青紫の剣は凍えるほど冷たかった。
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