99 / 270
第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神
手掛かり皆無の"祈りの間"
しおりを挟むアルティアは目を閉じている。
ラフェエルを探しているのだ。契約者の特権として与えられた"力"。神経を尖らせるだけで契約者が何処にいるのかわかるのだ。
だけど…………………今回は役に立たないみたい。
全くと言っていいほどラフェエルの気配はない。先程リーブに用意してもらった地図に手を乗せ、手探りで滑らせる。セイレーン皇国を初め、サクリファイス、シースクウェア、ヴァリアース、グレンズス、行ったことすらない国々まで"視た"。
全神経を集中し私が知っている神や生き物__正確にはその神や生き物の持つ魔力だけど_を探す『特殊魔法・地図読解』の契約者版だ。沢山の魔力を世界中に巡らせるから結構疲れるからほとんどやらない上、今回は手がかりすらないからとにかく魔力を広げた。
けど_____何処にも、ラフェエルの気配はない。私の魔力が及んでない場所にいる?それとも死……………………
「アルティア様!」
「!」
そこまで考えた所でコンコン、というノックと同時に部屋の扉が開いた。目を開け見ると、クリスティド、エリアス、リーブ、ダーインスレイヴが部屋にはいってきていた。
本来であればノックと同時に入るのも、部屋にはいるのも許されないが、今は緊急事態。もっと言えば従者は皇居に入ってはならないけれど、ダーインスレイヴに頼み忍び込ませたのだ。
セイレーン皇国の鎧を身に纏った男3人の男とセイレーン皇国のメイド服を着た女に聞く。
「ラフェエルの情報は?」
「だめだ、兵士達の宿舎でそれらしい噂はありませんでした」
人を誑し込むことに関しては天才な爽やか王子・クリスティドは首を振る。
「えと、………、天皇様をはじめとする大臣の周囲に噂などはございませんでした。
ただ、聖女様であらせられるフラン様の行方がわからない、という報告が………」
オドオドしているけれど、唯一女で容易にメイドに扮せられる姫・エリアスはボソボソとそう言う。
「……………………"この皇居内にはいない"」
幽霊であり何処でも出入り可能な私の魔剣・ダーインスレイヴはどこか含みのある言い方で言う。
ダーインスレイヴは何か知っているっぽいけど、どうやら口を割る気はないらしい。この魔剣が喋らない、ということは"この世界に関すること"である可能性が高い。拷問で無理やり聞き出すことが出来たらそうしただろうが相手は幽霊。そして、話さないと決めたことは絶対話さないから当てにならない。"自分で探せ"ということなのだろう。
こういう所までガーランドに似ているな、と心の中で毒づいていると赤い液体を水玉模様のように張り付けているリーブが静かに口を開いた。
「セイレーン皇国のフラン様専属の兵士から少々手荒に話を聞いたところ、恐らく"祈りの間"にいらっしゃるとの事でした」
「……………祈りの間?なにそれ」
聞きなれない言葉に、私は聞き返す。
いかにもRPGに出てきそうな名前だ。
「"祈りの間"___それは"聖女"様が祈りを捧げる聖域です。聖女以外の者は入れず、その場所すら不明で…………こればかりは兵士さえも知らないらしいです」
リーブは悔しげにそう言った。
……………この中でラフェエルを1番に心配しているのは間違いなく彼だ。幼少期からずっと仕えてきて、この危険な旅にもついてくると自らついて行かせてくださいと頭を下げた程大切な主人が、行方不明なのだから。
聖女しか入れない聖域………………………そう言う設定はよくある。加えて今までの妖精神、精霊との戦いを含めて考えると…………そこに聖の精霊がいてもおかしくないように思う。精霊や妖精神の住処ならそれだけで聖域だと私でもわかった。
こじ開けることは可能だが、そもそもその"場所"が分からないのだから詰んでいる。
考えろ、考えろ……………………
いや、待てよ?相手が精霊絡みなら……………………
私はそこまで考えてクリスティドとエリアスを見た。お通夜のような雰囲気を醸し出している2人に向かって、言った。
「クリスティド、エリアス。
_____ここに、妖精神と精霊を呼べる?」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
【完結90万pt感謝】大募集! 王太子妃候補! 貴女が未来の国母かもしれないっ!
宇水涼麻
ファンタジー
ゼルアナート王国の王都にある貴族学園の玄関前には朝から人集りができていた。
女子生徒たちが色めき立って、男子生徒たちが興味津々に見ている掲示物は、求人広告だ。
なんと求人されているのは『王太子妃候補者』
見目麗しい王太子の婚約者になれるかもしれないというのだ。
だが、王太子には眉目秀麗才色兼備の婚約者がいることは誰もが知っている。
学園全体が浮足立った状態のまま昼休みになった。
王太子であるレンエールが婚約者に詰め寄った。
求人広告の真意は?広告主は?
中世ヨーロッパ風の婚約破棄ものです。
お陰様で完結いたしました。
外伝は書いていくつもりでおります。
これからもよろしくお願いします。
表紙を変えました。お友達に描いていただいたラビオナ嬢です。
彼女が涙したシーンを思い浮かべ萌えてますwww
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる