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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神
聖女は"自称"ヒロイン
しおりを挟む"私を手にする日"?
何を言っているんだこの女は?
「ずーっと好きだったんです、初めての社交パーティで一目見た時、"絶対この人がヒロインの私のヒーローだ"って、遺伝子レベルで感じたというか……………。
紅銀の髪、紅瞳という珍しく美しい顔立ち、スラリとしながらも程よく筋肉のある身体、第1皇子様、クールでなんでもできちゃう完璧なイケメンヒーロー……どれも、私の好みの"キャラ"まんまですわ。
天皇____お父様に夫にしたいと申し出たのに、聞いて下さらなくて。本当に使えない男。
サクリファイス大帝国の第1皇太子は20歳で必ず死ぬ、なんて言っていたのは私を諦めさせる口実だったんでしょうね」
フランはペラペラと訳の分からない言葉を並べる。
何を言っているんだこの女は?
そんな疑問を他所にフランは更に続ける。
「そしたら、カーバンクルが"第1皇太子が生きてて、龍神の契約者になった"と言うんですもの、龍神なんて空想上の人間が作り出した生き物だと思ってましたから大変驚きましたわ。
あ、でも、この国に来ると聞いて飛び上がるほど喜びましたけど………次はカーバンクルが"龍神の契約者だから結婚はできない"って言うんです!
信じられます?私は聖なる力を宿したヒロインですよ?なんで私の思い通りにならない?おかしいですよね?
だから_____私の力でその"契約者の証"を奪ってしまおうと思ったんです」
フランはそう言って私の右目の周りをなぞる。
右目に魔力を込めているから黒い契約印が出ているはずだ。だが、声が出なくて、アルティアを呼べない。
「何を、って顔をしてますね。とっても簡単ですよ。聖女の私と聖の精霊・カーバンクルが力を合わせて聖なる光を右目に当てるだけです。カーバンクルの話だと強い魔力なんで6時間ほど昏睡状態に陥るらしいですけど」
『ち、違います、えと、僕達が"目覚めの儀"を行わないと、起きないです……………』
「……………!」
フランの言葉に合いの手を入れたのは___いつの間にか私の頭上を飛んでいた羽の生えた白いネズミ_いや、リスか?_だった。フランは笑うのをやめてキッ、とリスを睨む。
「カーバンクル!遅いわよ!」
『ご、ごめん、だって、ここ、バレたら、次期龍神が来ちゃうから、ちゃんと結界を張っておかなきゃ……………』
おどおどとそう言うリスはエリアスを連想させた。最も、最近はアルティアの影響を受けて前よりはおどおどしなくなったが。
「別に来たっていいじゃない、私とカーバンクルがいれば最強でしょう?この物語の主人公であろうヒロインの私と聖なる精霊であるアンタがいれば敵なしよ!」
『その油断は……………だ、だめだよ……………だって、水の精霊・アクア、海の妖精神・マリン、森の妖精神・リーファ、太陽神・ドゥルグレ、土の精霊・グランド………………ぜ、全員が屈服させられているんだよ…………?
特にあの太陽神ドゥルグレは誰の言うことも聞かなくて有名なのに…………』
「はー、嫌ね、私の相棒がそんな情けないことを言うなんて。
いい?カーバンクル。主人公であろう私が悪に負けるわけないじゃない。龍神なんていかにも悪役っぽい生き物に!」
フランはふふん、と鼻で笑う。
その姿を見て___怒りを覚えた。
アルティアは悪などではない。
少なくとも、このような誘拐など絶対しない。
「………ふざ、けるな…………………」
「……え!」
「…………!」
気づいたら口が動いてて____声が、出ていた。
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