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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神

コミュ障&拗らせ女子な次期龍神

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 ラフェエルは勝手にしろ、と言って部屋を出ていった後、むくりと起き上がるアルティアの顔は____悲しみの色を帯びていた。




 ……………………………なんで私は、あんなことを言ってしまったのだろう。


 ラフェエルは何かといえば乱暴だ。
 けど、ベッドに押し倒されたのは初めてだった。

 いつもの私なら、乙女展開だ!なんてドキドキしてたのだろうけど__そうならなかったのは、押し倒したラフェエルが、とても苦しそうな顔をしていたから。


 何かを言いたげで、戸惑うような、…………そんな顔。 




 本当は話したかった。


 何があったの?と、聞きたかった。



 けど、それをどう聞けばいいのか………私にはわからなかった。
 だって私、前世でも今世でも誰かを心配したり、思いやったりしたことなんてなかったから。


 圧倒的なコミュ障が気の利いた言葉や励ましの言葉を言えると思う?


 その結果___ラフェエルから無理矢理突き放して、嫌味を言って、布団の中に逃げるという1番可愛くないやり方を選んでしまったわけで。



 何があったの?って、聞いてもよかったのかな。どうしたの?って、なんで聞けなかったのかな。ラフェエルと出会って10年以上経ってるのに、もう10ヶ月も毎日ずっと一緒に居たのに………………………聞きたいこと、ひとつも聞けやしない自分が不甲斐ない。



 …………………少しはラフェエルの事がわかったつもりだった。
 仕草とか、くせとか、性格とか。
 発見する度に私とラフェエルの距離は近づいていると思っていた。

 けれど、それは私の勘違いだったらしい。距離は詰まっていなかった。……………ううん、離れ過ぎて、ラフェエルの姿さえ捉えていないのかもしれない。



 それが悲しくて、悔しくて………………………




 「…………………………はあ」





 私はぎゅう、と枕を抱き締める。
 今頃ラフェエルは聖女・フランと話しているのかな。私よりもいいと言っていたあの子と楽しくお茶しているのかな。



 そう考えるだけで………………心が重くなる。
 いつもみたいにアルティア、と呼んで私をその場に転移してほしい、なんて…………突き放して起きながら都合のいいことを考えてる。



 私、最低。




 ぼふ、とベッドに身体を預ける。



 ____フランは日本語を話していた。
 だとしたら、フランは私と同じ日本人?


 ますます小説じゃないか、そんな展開。



 この現実が小説だとしたら_____ラフェエルは、誰と結ばれるのだろう。



 ………………フランだったら、嫌だな。




 そこまで考えて______目を瞑った。







 *  *  *





 「…………………ん、………………」





 ラフェエルは目を開いた。
 見覚えのない高すぎる天井、青と白を基調としたステンドグラスに光が差し込んでいる。


 ……………………………ここはどこだ?私は、一体……………………



 「あ、目を覚ましましたか?」



 「…………!」



 ひょこ、とフランが目の前に現れる。
 驚いて身体が動いた………ということは、なかった。それどころか全く動けない。



 「動こうとしても無駄ですよ~、麻痺の魔法を施させてもらいました。ちなみに、魔法無効化やその他諸々のデバフ___状態異常をプレゼント!


 だから、今のラフェエル殿下………いえ、ラフェエル様は口すら聞けません」


 「…………!…………!」



 試しに声を出そうと口を開いたが、本当に声が出ない。そんな私に、フランはにっこりと笑った。



 「だから喋れませんって。ふふ、ラフェエル様ってば怒った顔も素敵!まあ、愛しのラフェエル様はどんな顔でも美味しいですけど。


 そのラフェエル様が手に入る今日は、とっても素敵な日になるわ」



 そう言って、フランは私の頬に触れた。










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