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第5章 聖女、聖の精霊と次期龍神
"聖女宗教国家"・セイレーン皇国
しおりを挟む「…………………………………!」
私は声を失っていた。
理由は_____アレだ。
馬車の後方に広がる国境。大きな黄色の王冠の装飾1つ真上に象り真っ白な国境門、そして___大きく描かれた、白髪の少女。まるで天使のような少女が手を前に組んで、空を見上げている。その頭上に黄色の光が降り注いでいて____1枚の絵画のような、そんな国境壁。
無意識に拝んでた。ここは天国なのでしょうか…………………………?
「ここは天国ではなくセイレーン皇国だ」
「…………………………なんで心の中を読むの?レイヴ、貴方の仕業?」
「いや、俺ではなくお前が自分で言ったんじゃないか」
青紫の長髪、黒い瞳、黒いコート状の着物を着ている男___アルティア専用の魔剣・ダーインスレイヴが呆れたように言う。
ああ、口から漏れていたのか。でもそれぐらい尊かったんだもん。初めてだよ、感動して拝んだの。今世では神にすら手を合わせたことないのに。………いや、別の意味で手合わせはしたけれど。あれ?私今凄く上手いこと言ってない?
そんな馬鹿みたいなことを考えているのはアルティア=ワールド=ドラゴンだ。黒髪に黄金色の瞳を持つ次期龍神で、現在世界各地にいる妖精神を屈服させる旅をしている。
「ねえ!私今いいこと考えたんだけ…………どぅあ!」
言い終わる前に黒い雷が落ちた。黒焦げになりぷすぷすと頭から煙を放つ彼女を見る男___紅銀髪、紅瞳_現在は右目には黒い契約印が出ている_は、次期龍神と契約を交わし教育を施すサクリファイス大帝国の第1皇太子、ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスである。
ラフェエルは静かに言う。
「どうせくだらないことだろう?」
「言う前に罰を落とすな!鬼!鬼畜!理不尽!」
「……………どうやら、まだ足りないようだな?」
「ひぇ…………そ、それより、セイレーン皇国ってどんな場所なのかな?」
黒く光り出す契約印に怯え、慌てて話題を変えた。ふっふっふっ、伊達に長くコイツと顔を合わせてないよ。結構な語りたがり屋なんで、こういう話題は大好物なはずだ…………
案の定、ラフェエルの右目から契約印は消え、紅色の瞳で語り始めた。
「セイレーン皇国は"聖女宗教"の国だ。信仰心が厚く、無意味な殺生を嫌う。グレンズス魔法公国は無法地帯のような治安の悪い国だったが、この国は違う。法律がしっかりあり、国民一人一人教養もある。
1番の特色は"聖女"が居ることだな」
「聖女?」
「そうだ。神に愛され、習得が難しいとされる"聖"の魔力を生まれながらに持つ女が必ず産まれる。その女は身分関係なく、この国を治める天皇が娘として迎え、3日に1度祈らせる………………その祈りがある限り、争い事は起きないとされている。
事実、セイレーン皇国はただの1度も戦争を経験したことがない」
「まあ、実際それは長年サクリファイス大帝国がセイレーン皇国に降り掛かる戦争の火の粉を払っているからだがな。
その代わり、要求しているのは"聖なる祈り"の範囲をサクリファイス大帝国まで広げろ………だったかな」
「…………何故貴様が知っている?」
「俺は5000年前ガーランドと旅をしたんだぜ?この世界の事は知り尽くしてるさ」
「…………………………聖女、聖なる祈り………………… 」
「?どうした、アルティア」
「いや、なんか、………………ヒロインっぽいなぁ、って」
「「?」」
キョトンとする2人をよそにアルティアは再び外を見た。
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