【完結】転生したらヒロインでも悪役令嬢でもなく世界征服してる龍神の後継者だったのでこの世界の常識をぶっ壊してみようと思います!

Ask

文字の大きさ
上 下
89 / 270
第4.5章 次期龍神は魔剣を手にする

爽やか王子の淡い恋心

しおりを挟む
 





 グレンズス魔法公国のランテット宰相邸から出立して20日目、馬車は未だにグレンズス魔法公国特有の砂漠の上を走っていた。



 私、クリスティド・スフレ・アド・シースクウェアはちらり、と馬車の中を見る。本を読むラフェエルの向かいですやすやと眠る____次期龍神・アルティア様のお姿があった。




 …………寝顔まで愛らしい御方だ。
 ふ、と笑みが零れてしまう。


 私は___アルティア様を、お慕いしている。

 最初からなんて美しい人だ、とは思っていたが、それだけじゃない。とてもお強く、気高く、それでいて配下の者にはお優しい。



 龍神様というのはそもそも尊い生き物だというのは十二分に理解していたつもりだが、彼女を知り、よりその偉大さを強く感じている。


 でも、ふとした時_今の寝顔などもそうだが_少女らしい振る舞いをして、それが胸を締め付ける。触れたい、話したいと思ってしまう。




 不敬な気持ちである。彼女は龍神様であらせられるのに。




 勿論、想いを告げることは無い。
 龍神様は神様だ。人間と関係を持つなどとしないであろうし、……………仮にあったとしても、私では不釣り合いだ。




 しかし。




 私はラフェエルを再び見た。アルティア様に目もくれず只管本を読んでいる。



 ____ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイス。必ず死ぬと言われ続けた第1皇太子でありながらも勉学も鍛錬も社交も全て手を抜かず生を全うしようとしていた男。



 私は彼を人間としてとても尊敬している。

 必ず死ぬと分かっているのに彼は1度も泣きごとを言わなかった。何事にも冷静な判断を下すことの出来る完璧皇子だ。




 _____彼は、彼女のことをどう思っているのだろう?




 仮初ではあるものの、婚約者である。それで契約者でもある。彼女が龍神となるまで唯一叱れる存在であり、また、近づくことを許された人間だ。



 ずっと顔を合わせていたら好きになる、とまでは言わない。けれど、愛着ぐらいは持つだろう。然し彼は容赦なく罰を与える。好きならばそんなことはしない。





 ……………いや、相手は私ではなくラフェエルだ。変に捻くれているから愛情表現なのかもしれない。そうなると、やはり龍神様を好きでいるのだろうか…………………それとなく聞いてみよう。




 「なあ、ラフェエル」



 「従者が気軽に口を聞くな」



 「……………………」



 ピシャリとそう言われ、黙る。
 昔からこういう所は変わらない。
 これ、と決めたらこれを全うする。 



 ラフェエルは私を堅物だと言うけれど、ラフェエルには負ける。……………全てにおいて、劣っているのだが。






 「元気がないな、少年」



 「!」



 不意に後ろから呼ばれた。
 見ると____ふわふわと浮いているダーインスレイヴ様だ。これは魔法ではないらしい。幽霊であり、アルティア様の剣だ。




 不可思議ではあるが、先日その力を見てしまって安易に否定出来なくなった。ダーインスレイヴ様_最初はダーインと呼んでいたが本人が"ダサい"と嫌がった為レイヴ様とお呼びしている_がけたけたと笑った。



 「恋の悩みか?若いねぇ」



 「なっ…………!適当なことを言わないでいただけますか!」



 「そんなことを言うならばお前の心を全て読み上げるぞ?」


 「………………ッ!」



 顔に熱が集中していく。この人?は本当にやる。読心術という人智を超えた力を持つのはやはりずるいと思う。




 「ずるくはないさ。500年も生きれば身につく。3000年経てばそれが五月蝿く感じるぞ」


 「人間はそんなに生きられません!」


 「………………………それも、そうか。

 まあなんにせよ、恋する相手が悪い。王子なのだろう?美しい娘などごまんといるさ」


 「や、やめてください…………私は、お慕いしていたいのです」




 本心だ。こうして遠目から見ているのが丁度いい。雲の上の存在である彼女に召し抱えられるだけでもありがたいのだから。




 レイヴ様はふむ、と言ってから近づいてきた。



 「健気な心だ。お前の治める国は安泰だな。…………………………その純粋な心で、これから先知るであろう"隠された真実"を受け止めろよ。


 それはきっと、"何かを変える"力になるだろう」




 「……………それは、どういう___「ピザァ!!」……!」



 話の途中、大声が馬車からした。急いで覗くと時すでに遅し。アルティア様は黒焦げになっていた。勿論ラフェエルの横顔___右目には契約印が光っている。




 「…………ラフェエル殿下、やりすぎかと」


 「この女にやりすぎる位が丁度いい」



 ____本当に、この2人は……………
 呆れたような、笑いたくなるような気持ちを押さえつつ、私は頭を抱える仕草をしてみせた。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん
恋愛
双子の姉として生まれたエヴィ。双子の妹のリンディは稀な光の魔力を持って生まれた為、体が病弱だった。両親からは愛されているとは思うものの、両親の関心はいつも妹に向いていた。 妹は、病弱だから─と思う日々が、5歳のとある日から日常が変わっていく事になる。 今迄関わる事のなかった異母姉。 「私が、お姉様を幸せにするわ!」 その思いで、エヴィが斜め上?な我儘令嬢として奮闘しているうちに、思惑とは違う流れに─そんなお話です。 最初の方はシリアスで、恋愛は後程になります。 ❋主人公以外の他視点の話もあります。 ❋独自の設定や、相変わらずのゆるふわ設定なので、ゆるーく読んでいただけると嬉しいです。ゆるーく読んで下さい(笑)。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

処理中です...