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第4.5章 次期龍神は魔剣を手にする

魔剣は次期龍神に固執する

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 けん?県?拳?


 もう頭がくらくらしてきた。全くわからない。男はまたくつくつと笑って私の耳たぶに触れる。


 「剣だよ、つるぎ、かたな………………ここまでいえばわかる?」



 「まったくわからない」


 「そっか」


 「ちょっと、触らな____ッつ!?」



 言い終わる前に、バチン!と耳元で大きな音がした。それと同時に男の触れていた耳朶がヒリヒリする。私は男を突き飛ばして痛い箇所を触るとこつ、と固いものに触れた。



 これって…………………ピアス?




 「はい、これで君は俺を"使える"。簡単さ、ダーインスレイヴ、と呼ぶだけで君専用の俺が出るよ」



 「何勝手なことするのよ!意味わからない!」



 「わからなくても知っておけば便利だよ。さあ、ここから出ようか」




 言われなくてもそうするし!本当に理解できない!何こいつ!?突然現れてガーランドの仲間だとか剣だとかピアスだとか……………凄くムカつく!




 …………って。





 出口に向かう私はぴたり、と足を止める。
 後ろを振り返るとにこにこしたダーインスレイヴが立っていた。試しに1歩踏み出すと、ダーインスレイヴも1歩踏み出す。




 「……………ちょっと!ついてこないでよ!」



 「いやだね、君を待っていたんだから。俺はあの強欲な太陽神にこき使われつつ薄暗いこの牢屋でちゃんと君を待ってたんだよ?


 君とワールドエンドに行く為にね」




 「はぁ??」




 誰か通訳ー!ラフェエルさーん!
 もうだめ、全くわかんない。わかんないまま私達は玉座の間に戻ってきた。そこには太陽神・ドゥルグレがいて。ドゥルグレは私を見るなり苦虫を噛み殺したみたいな顔をした。


『クソ女………………!その後ろの男は俺の供物だ!勝手に連れ出すんじゃねえ!』




 「勝手についてくるのよ、むしろいらないから引き取って」



 「酷いよアルティア、俺は君を守りたいのに」



 「触るな!」



 「まあ、俺はこの子について行くから悪いけどここを出ていくね、ごめんね太陽神様」



『誰が許可するか!!』



 「うるさいな……………………自惚れるなよ、神"如き"が」



『………………!』



 ダーインスレイヴは初めて笑うのをやめてドゥルグレを睨む。ドゥルグレは目を見開いてつう、と額から汗を流した。


 私にでさえ噛み付いてきたのに怖がってる……………?



 「ねえドゥルグレ、なんで私にしたように噛み付かないの?私、別に止めないわよ?寧ろやっちゃってよ」




 「酷いなあ。………………太陽神はね、俺を"使って"火の精霊を殺したから、俺には逆らえないんだ」



 そう言っておどけてみせるダーインスレイヴ。なるほど、傲慢太陽神はわりと逆らえないタイプなのか……………じゃなくて。




 「本当についてこないで。迷惑。これ以上仲間を増やしたくないの」



 「俺は仲間じゃなくて剣だって。君がいくら嫌がってもついてくからね」




 そう言って満面の笑みを向けるダーインスレイヴ。……………わかった、この嫌悪感。喋り方といい強引さといい、ガーランドそっくりなんだ。






 「…………………………はあ」



 この手のタイプの男には何を言っても無駄だと知っている私は溜息をついた。





 ______こうして、自称剣・ダーインスレイヴことダーイン はアルティアパーティに加わった !▽




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