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第4章 太陽の神と土の精霊と次期龍神
生贄皇子の新たな宿命
しおりを挟むアルティアは勝手に部屋を出ていった。
もう太陽神の屈服も終わらせ、おまけに土の精霊の屈服も終わらせた。もうここには用がない。
なのに、いつ気づいたのかわからない玉座の後ろの扉を開けて行ってしまった。…………まあ、奴のことだ。何があっても大抵自分でどうにかするだろう。
それよりも、先に帰って太陽神や土の精霊から聞いた妖精神、精霊、屈服印の意味………………それについて考えよう。整理する必要がある。
『おい……………人間……………』
「…………………?」
そんなことを思いながら空中に浮かぶ黒い渦の前に来ると、太陽神・ドゥルグレが話しかけてきた。目だけを向ける。ずっと地面に張り付けられていたドゥルグレは漸く立ち上がって、首をコキコキ、と鳴らした。
『テメエは、あのアルティアとかいう龍神のお守りなんだろう?神に有るまじき態度を何故質さねえ?』
「…………………何かを勘違いしているようだが、この世界では龍神だけが"真なる神"だ。
いくら貴様が妖精神を超えた太陽神だろうが、なにも変わらない」
『…………………龍神も生意気だと思ったが、その契約者も大概……………か。
殺すぞ人間』
「やってみろ。私は人間の前に"龍神の契約者"だ。その少ない脳みそで考えろ。…………………この世界が太陽を失い、滅びるぞ」
『……………………………』
そう言うと、ドゥルグレは無言で私に近づいてきた。自然と手は腰に差してある剣に伸びる。が、その手をドゥルグレの手が制した。
『殺さねえよ。…………テメエの脳内を、魂を見たが…………何も知らないようだな。ここまでいくと哀れにさえ思うぞ』
「………………何を言っている?」
『面白い話をしてやろう。____俺が火の精霊を喰らい、太陽神となった。2つのものを1つにするというのは膨大な力を有するんだ』
「……………………!」
ドゥルグレはパチン、と指を鳴らして私を浮かせる。身体をコントロールしてバランスを取る。ドゥルグレは攻撃の素振りをみせず、再び指を鳴らした。
すると、オレンジ色の密室が出来た。急いで壁を叩くものの、固い。魔封じの結界だ。
『手は出さねえよ。………あの女に聞かれるのはつまらねえだろう?これは意趣返しだ。
あの女に力で勝つことができねえなら、別の攻撃をしてやるんだ。
___話を戻すぞ。神というのはな"例外なく1人ではなれない"んだ』
「…………………何がいいたい?」
『俺が神になることが出来たのは___"精霊"を喰らったからだ。じゃあ龍神は龍神になる為に何を喰らうか……………………知りたくはないか?』
ドゥルグレは嘲笑しながら問いかけてきた。___何を言おうとしている?
私は壁に触れるのをやめて、ドゥルグレを見た。ドゥルグレは右腕の1本を前に出し指で3を作る。
『未完成の龍神は、"完全な龍神になる為に"3つの物を喰らう。
1つ、死神・ハデス。
2つ、闇の精霊・ケルベロス。
3つ、未完成の龍神の見出した契約者____つまり人間、貴様を喰らうのだ』
「______!」
言葉を失った。
私が…………………………アルティアに食われる?意味がわからない。
「…………………どういう事だ」
『文字通り、食らうんだよ。死神と闇の精霊、そして___"隠された真実"を受け入れる為にな。
貴様は"器"になるのだ。血と死体と魂と欲に塗れたグラスの受け皿。
………………これ以上は、結界を張ったとはいえ聞かれたら"隠された真実"に殺されてしまうから質問はナシだ』
「…………………………」
『忠告してやろう。人間____否、"器に選ばれしサクリファイス皇子"よ。
______次期龍神から、逃げろ』
「どういう_____ッ!」
飛びつこうとしたらパリィン、と結界が割れ、気づいたら太陽神の住処の入口___ランテット邸の地下にいた。
私はしばらく………………………そこから動けなかった。
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