81 / 270
第4章 太陽の神と土の精霊と次期龍神
生贄皇子の新たな宿命
しおりを挟むアルティアは勝手に部屋を出ていった。
もう太陽神の屈服も終わらせ、おまけに土の精霊の屈服も終わらせた。もうここには用がない。
なのに、いつ気づいたのかわからない玉座の後ろの扉を開けて行ってしまった。…………まあ、奴のことだ。何があっても大抵自分でどうにかするだろう。
それよりも、先に帰って太陽神や土の精霊から聞いた妖精神、精霊、屈服印の意味………………それについて考えよう。整理する必要がある。
『おい……………人間……………』
「…………………?」
そんなことを思いながら空中に浮かぶ黒い渦の前に来ると、太陽神・ドゥルグレが話しかけてきた。目だけを向ける。ずっと地面に張り付けられていたドゥルグレは漸く立ち上がって、首をコキコキ、と鳴らした。
『テメエは、あのアルティアとかいう龍神のお守りなんだろう?神に有るまじき態度を何故質さねえ?』
「…………………何かを勘違いしているようだが、この世界では龍神だけが"真なる神"だ。
いくら貴様が妖精神を超えた太陽神だろうが、なにも変わらない」
『…………………龍神も生意気だと思ったが、その契約者も大概……………か。
殺すぞ人間』
「やってみろ。私は人間の前に"龍神の契約者"だ。その少ない脳みそで考えろ。…………………この世界が太陽を失い、滅びるぞ」
『……………………………』
そう言うと、ドゥルグレは無言で私に近づいてきた。自然と手は腰に差してある剣に伸びる。が、その手をドゥルグレの手が制した。
『殺さねえよ。…………テメエの脳内を、魂を見たが…………何も知らないようだな。ここまでいくと哀れにさえ思うぞ』
「………………何を言っている?」
『面白い話をしてやろう。____俺が火の精霊を喰らい、太陽神となった。2つのものを1つにするというのは膨大な力を有するんだ』
「……………………!」
ドゥルグレはパチン、と指を鳴らして私を浮かせる。身体をコントロールしてバランスを取る。ドゥルグレは攻撃の素振りをみせず、再び指を鳴らした。
すると、オレンジ色の密室が出来た。急いで壁を叩くものの、固い。魔封じの結界だ。
『手は出さねえよ。………あの女に聞かれるのはつまらねえだろう?これは意趣返しだ。
あの女に力で勝つことができねえなら、別の攻撃をしてやるんだ。
___話を戻すぞ。神というのはな"例外なく1人ではなれない"んだ』
「…………………何がいいたい?」
『俺が神になることが出来たのは___"精霊"を喰らったからだ。じゃあ龍神は龍神になる為に何を喰らうか……………………知りたくはないか?』
ドゥルグレは嘲笑しながら問いかけてきた。___何を言おうとしている?
私は壁に触れるのをやめて、ドゥルグレを見た。ドゥルグレは右腕の1本を前に出し指で3を作る。
『未完成の龍神は、"完全な龍神になる為に"3つの物を喰らう。
1つ、死神・ハデス。
2つ、闇の精霊・ケルベロス。
3つ、未完成の龍神の見出した契約者____つまり人間、貴様を喰らうのだ』
「______!」
言葉を失った。
私が…………………………アルティアに食われる?意味がわからない。
「…………………どういう事だ」
『文字通り、食らうんだよ。死神と闇の精霊、そして___"隠された真実"を受け入れる為にな。
貴様は"器"になるのだ。血と死体と魂と欲に塗れたグラスの受け皿。
………………これ以上は、結界を張ったとはいえ聞かれたら"隠された真実"に殺されてしまうから質問はナシだ』
「…………………………」
『忠告してやろう。人間____否、"器に選ばれしサクリファイス皇子"よ。
______次期龍神から、逃げろ』
「どういう_____ッ!」
飛びつこうとしたらパリィン、と結界が割れ、気づいたら太陽神の住処の入口___ランテット邸の地下にいた。
私はしばらく………………………そこから動けなかった。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!
のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、
ハサンと名を変えて異世界で
聖騎士として生きることを決める。
ここでの世界では
感謝の力が有効と知る。
魔王スマターを倒せ!
不動明王へと化身せよ!
聖騎士ハサン伝説の伝承!
略称は「しなおじ」!
年内書籍化予定!

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい
千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。
「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」
「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」
でも、お願いされたら断れない性分の私…。
異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。
※この話は、小説家になろう様へも掲載しています
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした
まほりろ
恋愛
【完結済み】
公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。
壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。
アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。
家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。
修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。
しかし仔猫の正体は聖獣で……。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。
・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。
2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます!
誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!!
アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる