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第4章 太陽の神と土の精霊と次期龍神

精霊の屈服印の意味

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 ________精霊の屈服印。



 それは、妖精神が送る屈服印とは意味が違う。
 妖精神が送る屈服印は____沢山の生命を支える自然の神々が『貴方を神と認め、従います』という言わば"誓いの印"なのだ。

 この印が無ければ龍神は龍神と認められず___それ以前に、妖精神に殺されるのだから生きることすらできない。それだけではなく、"ある1神"以外の妖精神の屈服印が無ければ世界の最果てに存在する"幻の孤島"・ワールドエンドは姿すら見せない。



 故に龍神になることと、妖精神の儀式は切り離して考えられない絶対条件なのだ。



 しかし____精霊の屈服印は違う。
 そもそも、"精霊"というのは自然を司る妖精神の補佐であり、ユートピアに存在する魔法の火、水、土、風、氷、聖と龍神と龍神が作りだしたアンデッド、龍神の側近である魔族のみが使えると言われる闇の合計7つの魔法を魔力と引き換えに差し出す、魔法の原動力である。自然に関わる事は多いが勿論妖精神のように神ではないから、精霊の屈服印は必要無い。





 だがしかし、"精霊の屈服印"を持つ龍神はその属性に対しての魔力は大幅に上昇する。龍神は妖精神と比べて魔力を劣るのが通常であるため、歴代の龍神はすすんで精霊の屈服印も集めていた。…………とはいえ、精霊全ての屈服印を得たのは歴代にたったの一体だけ。それだけ難しいことなのだ。





『_____だからこそ、俺の"屈服印"は必ず貴方の役に立つ。


 受け取って頂けないでしょうか?次代の龍神様』


 「……………………………」

 「…………………………………」





 グランドはそう言って恭しく頭を下げた。
 突然屈服印を貰ってくれと言われて頭を下げられ、"妖精神と精霊の屈服印"についての話をされたけれど、やっぱり難しかった。それよりもワールドエンドだとか原動力だとか属性だとかもうRPGにしか思えないワードばかりで頭がクラクラする。



 そんな私を他所に、ラフェエルは顎を擦りながら口を開いた。



 「……………つまり、精霊の屈服印は龍神になること自体には関わってこないが、付与価値として魔法の質と威力、魔力自体が上がる、ということか?」



『そうだ。………見たところ、龍神様は魔法ではない"何か"を使役しているようにも思うが、魔力が増える事は損にならない』




 「うーん」



 確かに、私のはあくまで"想像"の産物だ。魔法とは少し違う。でも、水の精霊であるアクアの屈服印がついてから本物の魔法が使えるようになった気がする。けど、絶対ないと困ると言う訳では無いし………………………




 決めあぐねている私に、グランドは力強く言う。




『俺は____いや、私は貴方の力になりたい。助けて貰った恩もある。……………貴方がこのユートピアの"隠された真実"を知り、どうなっていくのか…………………それを近くで見守りたいのだ。



 自分勝手なことを言っているのは百も承知、だが、どうか………………………』



 「…………………いいだろう」



 「は?」



 返事をしたのは、私ではなくラフェエルだった。ラフェエルは淡々とグランドに言う。



 「私が許可する。アルティア、次はちゃんと口上を言うように」


 「え、え?ちょっと?なんでアンタが色々と決めてるの?」


 「……………私は貴様の契約者であり教育者として、命令する。

 土の精霊の屈服印を身に受けろ」


 「いや、なん___『ありがとう、次期龍神の契約者よ』~ッ!!私の話を聞け~~!!」




 私の声は太陽神の住処に響き渡ったのだった。









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