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第4章 太陽の神と土の精霊と次期龍神
次期龍神はご機嫌ななめ
しおりを挟む『………!………!』
結界の外で太陽神が炎で結界を傷つけている。これくらいの魔力なら破られることは無いだろう。それよりも。
「大丈夫!?」
「アルティア!」
私は急いでグランドと思われる男に近づいた。ラフェエルも自力で私の結界を出てこちらに来た。男は荒い息遣いのまま私の顔を見た。痩せこけた顔が痛々しい。
『はぁ………はぁ…………その見た目___次期龍神、か。このような状況、このような姿で申し訳ない……………』
「そんなのどうだっていいわ!ッ、ラフェエル!この両手足の枷取れない!?」
「任せろ」
ラフェエルは短くそう言って剣を鞘から抜いて、あっという間に両手足の枷を切った。枷は簡単に外れた。そのまま、ラフェエルは崩れ落ちる男の体を支えた。
「あなた、グランド?土の精霊の、グランド?」
『……………ああ。俺は…………土の精霊、グランド、だ』
「…………なぜ、精霊がそのように痩せこけている。なぜ、ここにいる?」
『それは………………………』
男は外で暴れ回る太陽神を見たまま黙ってしまった。そんな暇は正直、ない。私は言葉を紡いだ。
「私達、森の妖精神・リーファに頼まれて貴方を探してたの!リーファは貴方が消えて深く悲しんでいた、草木を枯らす程に!」
『………リーファ、リーファは無事なのか!?』
「え、ええ………!無事よ!証拠にエリアス………はいないのか…………あ、これ!見て!」
私は着替え魔法を使ってお腹の見える服にチェンジした。屈服印を見るなり、グランドの落ちかかっていた目が見開いた。
『これは……………リーファの………!貴方はリーファを傷つけたのか!?』
「傷つけてない!貴方を探す約束の契約としてくれたの!」
『リーファが、私を…………!』
「リーファはさっきも言った通り貴方がいなくて悲しんでいた。なのになんで貴方は帰ってこないの?なんでこんな所に……………………」
私がそう聞くと、グランドは目を伏せリーファの屈服印を撫でながら言う。
『俺は………元々、友であったフレイムが食われたと聞いて………太陽神・ドゥルグレの元へ乗り込んだ。すぐに帰るつもりだったんだ。
だが………………太陽神は、フレイムを食べた為に、常に魔力不足に見舞われていた…………人間を捕らえ、魔力を食らっていたのだ…………
それも許せなかった。それだけじゃない、ドゥルグレは……………リーファを見初めて…………脅そうとしていたんだ。ヴァリアースを襲わない代わりに自分と添い遂げろ、と。俺は………リーファを愛している。
長く対立し___私は敗れた。だが、腐っても俺は土の精霊、リーファを傷つけるのならば死ぬ前にこの国の砂を穢らわしい物に変えると言った。
それをよしとしない太陽神は…………俺を生かし、太陽神にこうして魔力を奪われるだけの存在となったんだ』
「……………………クズだな」
吐き捨てるようにラフェエルが言った。
理不尽大魔王でも人の心はちゃんとあるらしい。そして………………私も同意見だ。
リーファはグランドを愛している…………のだろう。
グランドもリーファを愛している。
お互いの気持ちが、未だに結界を叩いている太陽神に阻まれていたのだ。
全て_____あの、幼稚な太陽神が滅茶苦茶にしたんだ。
……………少々、いや、かなり……………気分が悪い。
今まで、私から人を奪ったから、とか昔の事を思い出したから、とかで動いてきた。屈服は副産物でしかなかった。
けれど。
今、明確に思う。
____屈服させてやりたい。
横暴で我儘な神を、見過ごすことなど____出来ない。
アルティアはすく、と立って2人に背を向けた。
「……………ラフェエル、グランドを守ってくれるかしら?」
「……………今回は特別に力を貸そう」
「ありがとう」
『……!龍神、貴方は何をするおつもりだ?!太陽神を殺したら、太陽が…………………』
「大丈夫、殺しはしないわ。
ただ____死ぬより辛い思いを、させてあげるだけだから」
アルティアはそう言って____冷たい笑みを浮かべた。
私は人間だ、と思っていたけど____ちゃんと、龍神らしい。
そこまで考えて、私は結界を解除した。
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