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第4章 太陽の神と土の精霊と次期龍神
次期龍神の気まぐれ
しおりを挟む女性の扱いに慣れているイケメンなラフェエルさんに戸惑いましたが、ラフェエルさんはどこまで言ってもラフェエルさんでした。
その証拠がこちら。
「うぅ………………」
「て、手練………………」
「悪魔だ………………」
きめ細かい砂が赤く染まっている。乱雑に積まれた血だるまになった人の山。その前で自分よりも一回りも2回りも大きな男を片手で持ち上げるラフェエルさん。
「ゴミ虫、特別にもう一度チャンスをやろう。…………知っている事を話せ」
「し、知らねえよ、土の精霊なんて俺たちァ知らねえんだよぉ!!ただ、女の宝石を奪おうとしただけなんだ!ほんの出来心で………け、決して貴方様の恋人を犯そうだなんて…………!」
「そうか。ならば仕方ない。…………死ね」
「ひぎぃっ!!」
ラフェエルは慣れた手つきでもう片手に握られた小さなナイフで首筋を掻っ切った。未だに蠢く芋虫のような人間は、私の座っている死体の山の1部になるようだ。
こんな光景、きっと前世の私が見たら卒倒してただろうな、なんて思う。今こうして静観できるのは、私が龍神だからだろうか。1度死を経験してるからだろうか。なんとも思わない。
それよりも。
私は、死体の山の上からラフェエルを見下ろした。返り血に塗れた全身、冷たい瞳、片手に持ったナイフ____ラフェエルはこうやって生きてきたんだ、と物語っているように思えた。
「……………アルティア」
「……………はぁい」
私はパチン、と指を鳴らした。もう何度目かの血を洗い流す水魔法、全身を乾かす風魔法、新しい服に着替えさせる着替え魔法。最初は上手くいかなかったけど、この短時間でだいぶ上達した。数十回もこんなことしてればなれますって。
私は死体の山から降りて、地面に着地した。
「…………ハズレだね」
「ああ。やはりゴミクズは使えないな」
そう言って吐き捨てるラフェエル。私に寄ってくる男は全員ラフェエルが殺した。だけど、有益な情報はひとつも無い。
「これ以上死体の山を築いたら流石に怪しまれるわ。………もう手遅れでしょうけど」
「ふん。女に言い寄り欲のままに動くゴロツキを減らしてやったんだから感謝の1つされて然るべきだろう。
まあいい。もういい時間だ。オアシスに行くぞ」
「ちょっと、まだ土の精霊についてなんもわかってないわよ!」
「………………約束を忘れたのか?この街で分からなければ諦める、と言ったはずだ」
「_ッ」
一方的な約束の癖に。心の中で毒づく。
しかし、ここで情報を得られないのも事実なわけで。…………とりあえず、ここに居たらこの惨状がバレる。
「……………わかったわよ」
「よし、行くぞ」
私はラフェエルに肩を抱かれて、路地裏を出た。
* * *
「………………………?」
オアシスに着いたのだが、リーブもクリスティドもエリアスも居なかった。私達が一番乗りみたいだけど、なにやら様子が変だ。広間の中心に人集りができている。
「アルティア?」
「ちょっと、ごめん」
私はラフェエルから離れて人ごみを掻き分けて最前列に来た。あったのは___水場。オアシスだろう。それにしては____水たまり程度の水しかない。
人ごみを掻き分けた時、「オアシスが枯れてしまう……」「太陽神様…………」と嘆いている声が聞こえた。どうやら、深刻な事態のようだ。
私には関係の無いこと………………………だけど、水がない生活って、凄く辛いんだっけ。
前世の私の家はしょっちゅう水道が止まった。親が支払いをちゃんと行ってなかったのだ。脱水症状を起こして倒れたら叩かれる。夏場は特にキツかった。川の汚い水を飲んで凌いでた。
……………………………少しくらいなら、いいかな。
私は人ごみを抜け出して、前に出る。
_____水魔法なら、アクアだよね。ちょっと力を借りるよ。
そう願うと、水色の縦線が光った。私はオアシスに触れる。それだけで水が放出された。両手でやるとさらに早く水位は上がっていき、それに合わせて広間にいた全員が黒髪の少女を見た。
_____これくらいあれば充分かな。
ぽちゃん、と水滴を落として手を抜くとワアッ、と歓声が上がった。
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