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第4章 太陽の神と土の精霊と次期龍神
"灼熱の大地"・グレンズス魔法公国
しおりを挟む「ひゃ~~~~!」
国境での持ち物検査等検問を終え、馬車が走り出すとアルティアがまた騒いだ。いつも騒いでいるから常に頭が痛い。次はどうしたと言うんだ?
私はアルティアと同じように外を見た。
太陽を象った装飾の施された橙色1色の大きな門と、太陽をでかでかと描いた国境結界だ。グレンズス魔法公国の象徴する太陽を描くのは勝手だが、品がないなとぼんやり思う。
そんなことを思っていると、緑のフードを被ったしわくちゃな老人が目に入った。国境の兵士が遠くなった所で老人に声をかける。
「……………もうそれをとれ。気色悪い」
「は、はい!」
老人はメガネを外してぺり、と顔の皮を剥いだ。そして___エリアスの顔が顕になる。………………流石に国境の兵士は自国の姫の顔がわかるだろうから、とアルティアが作ったマスクだ。クリスティドの時も使っていたが、これは魔法で作りだしたパックのようなもので、話によると存在さえも脳裏から消滅されるらしい。なんでもありだなアルティアは。
「アルティア様~~!こんな魔法があったらユートピアが犯罪者で溢れ返りますよ!」
「そう思うのだったらまず自国から出ようとしないでくださいますか?私は人間と争いたくないの。いずれ平民として暮らすであろう時の為に………!」
「その時は私の妃になって頂けませんか?」
「冗談はその綺麗すぎる顔だけにしてください」
クリスの言葉にツン、と返すアルティア。
まだ平民になるなどと戯言を言っているのかコイツは。やはり龍神は後継者を間違えている。
「アルティア様、前を見てみてください」
「え?………わぁ!砂漠だ!」
リーブの言葉にアルティアは国境を見るのをやめて前を向いた。黄色い声が鼓膜を突き刺す。
グレンズス魔法公国は"灼熱の大地"と呼ばれている。何度か来たことはあるが、ここまで暑かっただろうか。
「おい、アルティア、クリス」
「なによ」
「なんでしょうか?」
「この国を涼しくする為に水の力を使ってこの国を水浸しにしろ」
「……………………ねえクリス、ラフェエルって偶に頭おかしいこと言うよね。昔から? 」
「ええ。横暴が服を着たような人間なので」
「………………」
「ぎゃぁぁぁ!!なんで私だけぇ?!」
罰を落としてやった。躾…………いや、教育の1種だ。このあと、アルティアの力で馬車内と従者達に水の加護を施して少しだけ涼しくなった。
* * *
「………………………で、これからどうするの?」
水と風を合わせた魔法で空気中を涼しくしながら、ラフェエルに聞いた。シースクウェア、ヴァリアースは運良くラフェエルの知り合いがこれまた運良く妖精神と契約していたからこそスムーズに話が進んだ。グレンズスではどうなるんだろう、と疑問に思ったのだ。
ラフェエルはぺら、と本のページを捲りながらつまらなそうに言う。
「グレンズス魔法公国は王族がいない。神が選んだ人間が王となる。神__つまり、妖精神の事だろう。現王にはもう書簡は送ってある。とりあえずそこに行くつもりだ」
「じゃあ、土の精霊のグランドのことは?」
「土の精霊はこの際どうでもよい」
「は!?いやよ!だめ!」
聞き捨てならない言葉に、私はラフェエルが読んでいた本を取り上げて詰め寄った。ラフェエルが睨みつけてくるけど知った事か。私は神様と同じくらい約束を破るのが大嫌いなんだ。
「いくら雷落としたって私は探すわ!アンタが言うこと聞いてくれないなら私も太陽の妖精神と会わない!屈服もやらない!」
「……………自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「当たり前よ。嘘つきになるくらいなら太陽の妖精神の前で自滅魔法唱える」
幼稚な脅しだけど、何もしないよりはマシだ。暫く睨み返していたら、はぁ、とラフェエルが溜息をついた。
「…………近くに大きな街があるらしい」
「へ?」
「そこで1度街を散策する。その際、土の精霊についての情報を得られなければ…………………諦めろ」
「………………!」
予想外の言葉に、一瞬戸惑った。
けど、すぐに"なんだかんだ考えてくれていたんだ"って思ったら、嬉しくて。
「うんっ!」
アルティアは笑顔で頷いた。
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