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第3章 森の妖精神と次期龍神

次期龍神、歓迎パーティに出席する

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 「はーーー!やっとベッドーーー!!」




 私はベッドにダイブした。………ここはヴァリアース王城。着くのに半月もかかると聞いていたが、今私は無事ここに居る。



 それは、紛れもなく森の妖精神・リーファのおかげだった。リーファが馬車と従者に転移魔法を使ってくれたのだ。勿論、ヴァリアース王城は騒然となった。


 けれどもリーファ_大きな蝶の姿に化けていた_が『この国を救ったサクリファイス大帝国皇子と婚約者をもてなしなさい』と言ってくれたのだ。



 そうしたらあら不思議、別の意味で騒然とした。あれやこれやともてなされ、やっと泊まる部屋_素朴だけど花が沢山飾られている_に案内され、今に至る。



 久しぶりのちゃんとしたベッドに頬が緩む。このまま寝てしまいたい。



 だがしかし、それは出来ないのだ。


 ぎし、とベッドを鳴らして立ち上がる。メイド_私がアンデッドで作り出した人形_が近づいてくる前に、着替え魔法を使ってドレスを纏う。いつもの黒いドレスではなく、緑と黒レースを基調とした代物だ。所謂"お姫様が着そうなドレス"。



 どうしてこんなものを着るのかというと、この後歓迎パーティがあるのだ。本来歓迎パーティは後日となるのだが、もう妖精神と会ったし長居する意味がないから、明日にはもう出立するのだ。


 だけど、ヴァリアース王城ではサクリファイス大帝国"龍神に認められし第一皇子"ラフェエルとその婚約者(仮)の私を歓迎するパーティの準備が行われていた。それを突っぱねることは立場上出来ない。面倒臭いけれど、これも教育の一環であれば仕方がない。




 諦めも肝心だね…………………………




 そんなことを思いながら、メイドに化粧を施して貰った。







 *  *  *





 「アルティア様は本当にお美しいですわね」


 「綺麗な黒のお御髪ですね」


 「あ、ありがとうございます」




 歓迎パーティにて。現在私は御令嬢様方に囲まれています。


 優しそうな国王と優しそうな王妃_名前は忘れたけれどエリアスさんのご両親_に挨拶し、ワルツを踊り、各お偉方様に挨拶を終えたら次は御令嬢の相手。シースクウェア大国でもやったけどやっぱり慣れないなあ。



 ラフェエルのスパルタ教育のお陰である程度それらしくできたと思う。"それらしく"と表現したのは、ダンスの時に何度かラフェエルの足を踏んだからだ。それはもう気まずい雰囲気だった。ラフェエルは睨み付けてくるしもうほんと、生きた心地はしなかった。明日から休憩時間はずっとダンスの練習だろうな…………………



 で、その大魔王ラフェエルは貴族様達の相手をするために席を外してる。いつもなんだかんだ助けてくれる大魔王が居なくて窮地に立たされています。




 「ラフェエル殿下の婚約者なんて凄く羨ましいですわ」


 「そ、そう………ですか?」



 「そうですよ!あの!"紅銀の貴公子"ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイス殿下は昔から社交界の高嶺の花だったのですから!」



 「あ、えっと…………そうでしたわね」



 「文武両道、頭脳明晰、眉目秀麗…………いいえ、そんな言葉じゃあの御方を言い表せないですわ………………!殿下は女性の憧れの的なのですから……………!」



 「キャサリン様、ローズ様、はしたないですよ。……………ですが、ユートピアの貴族であればラフェエル殿下の事を知らない者などいないですわよね。噂でラフェエル殿下が婚約者を迎えたと聞いた時、わたくしは倒れてしまいました。ですが、今日お会いして納得ですわ。


 こんなにお美しいアルティア様の前では絶世の美女でも霞んでしまいます」




 「…………ありがとうございます」





 私は精一杯笑顔を意識する。じゃないと平静を保てない。



 ………………シースクウェアでもこれ言われたけど慣れないわー。何?紅銀の貴公子って?口を揃えてあの大魔王を褒め讃えるものだから頭が痛くなる。




 ぼかぁそんなこと知らないです。


 貴族どころか人間ですらないんで。


 貴族のパーティどころかゴツゴツとした岩だらけの大空洞、アトランティスから出た事もありません。


 あ、もう無理。しんどい。


 私は即座に前もって準備していた私そっくりの影___ドッペルゲンガーを発現させて姿を消すスケルトを使ってその場を逃げ出す。



 ドッペルゲンガーよ、適当に話を合わせるのだ。優秀な君ならできる。




 私はドッペルゲンガーの肩をぽん、と叩いてテラスに向かった。













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