58 / 270
第3章 森の妖精神と次期龍神
次期龍神、歓迎パーティに出席する
しおりを挟む「はーーー!やっとベッドーーー!!」
私はベッドにダイブした。………ここはヴァリアース王城。着くのに半月もかかると聞いていたが、今私は無事ここに居る。
それは、紛れもなく森の妖精神・リーファのおかげだった。リーファが馬車と従者に転移魔法を使ってくれたのだ。勿論、ヴァリアース王城は騒然となった。
けれどもリーファ_大きな蝶の姿に化けていた_が『この国を救ったサクリファイス大帝国皇子と婚約者をもてなしなさい』と言ってくれたのだ。
そうしたらあら不思議、別の意味で騒然とした。あれやこれやともてなされ、やっと泊まる部屋_素朴だけど花が沢山飾られている_に案内され、今に至る。
久しぶりのちゃんとしたベッドに頬が緩む。このまま寝てしまいたい。
だがしかし、それは出来ないのだ。
ぎし、とベッドを鳴らして立ち上がる。メイド_私がアンデッドで作り出した人形_が近づいてくる前に、着替え魔法を使ってドレスを纏う。いつもの黒いドレスではなく、緑と黒レースを基調とした代物だ。所謂"お姫様が着そうなドレス"。
どうしてこんなものを着るのかというと、この後歓迎パーティがあるのだ。本来歓迎パーティは後日となるのだが、もう妖精神と会ったし長居する意味がないから、明日にはもう出立するのだ。
だけど、ヴァリアース王城ではサクリファイス大帝国"龍神に認められし第一皇子"ラフェエルとその婚約者(仮)の私を歓迎するパーティの準備が行われていた。それを突っぱねることは立場上出来ない。面倒臭いけれど、これも教育の一環であれば仕方がない。
諦めも肝心だね…………………………
そんなことを思いながら、メイドに化粧を施して貰った。
* * *
「アルティア様は本当にお美しいですわね」
「綺麗な黒のお御髪ですね」
「あ、ありがとうございます」
歓迎パーティにて。現在私は御令嬢様方に囲まれています。
優しそうな国王と優しそうな王妃_名前は忘れたけれどエリアスさんのご両親_に挨拶し、ワルツを踊り、各お偉方様に挨拶を終えたら次は御令嬢の相手。シースクウェア大国でもやったけどやっぱり慣れないなあ。
ラフェエルのスパルタ教育のお陰である程度それらしくできたと思う。"それらしく"と表現したのは、ダンスの時に何度かラフェエルの足を踏んだからだ。それはもう気まずい雰囲気だった。ラフェエルは睨み付けてくるしもうほんと、生きた心地はしなかった。明日から休憩時間はずっとダンスの練習だろうな…………………
で、その大魔王ラフェエルは貴族様達の相手をするために席を外してる。いつもなんだかんだ助けてくれる大魔王が居なくて窮地に立たされています。
「ラフェエル殿下の婚約者なんて凄く羨ましいですわ」
「そ、そう………ですか?」
「そうですよ!あの!"紅銀の貴公子"ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイス殿下は昔から社交界の高嶺の花だったのですから!」
「あ、えっと…………そうでしたわね」
「文武両道、頭脳明晰、眉目秀麗…………いいえ、そんな言葉じゃあの御方を言い表せないですわ………………!殿下は女性の憧れの的なのですから……………!」
「キャサリン様、ローズ様、はしたないですよ。……………ですが、ユートピアの貴族であればラフェエル殿下の事を知らない者などいないですわよね。噂でラフェエル殿下が婚約者を迎えたと聞いた時、わたくしは倒れてしまいました。ですが、今日お会いして納得ですわ。
こんなにお美しいアルティア様の前では絶世の美女でも霞んでしまいます」
「…………ありがとうございます」
私は精一杯笑顔を意識する。じゃないと平静を保てない。
………………シースクウェアでもこれ言われたけど慣れないわー。何?紅銀の貴公子って?口を揃えてあの大魔王を褒め讃えるものだから頭が痛くなる。
ぼかぁそんなこと知らないです。
貴族どころか人間ですらないんで。
貴族のパーティどころかゴツゴツとした岩だらけの大空洞、アトランティスから出た事もありません。
あ、もう無理。しんどい。
私は即座に前もって準備していた私そっくりの影___ドッペルゲンガーを発現させて姿を消すスケルトを使ってその場を逃げ出す。
ドッペルゲンガーよ、適当に話を合わせるのだ。優秀な君ならできる。
私はドッペルゲンガーの肩をぽん、と叩いてテラスに向かった。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
変態王子&モブ令嬢 番外編
咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と
「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の
番外編集です。
本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。
「小説家になろう」でも公開しています。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
闇黒の悪役令嬢は溺愛される
葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。
今は二度目の人生だ。
十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。
記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。
前世の仲間と、冒険の日々を送ろう!
婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。
だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!?
悪役令嬢、溺愛物語。
☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
(完結)辺境伯の一人息子に婚約破棄された美貌の子爵令嬢はスパダリに愛される
青空一夏
恋愛
ここは王都から遠く離れた辺境の地。一年の半分は雪に覆われ空には幻想的な虹のカーテンが降りる厳寒の地である。
だが7歳のソラにとって雪は天空から舞い降りてくる神秘的な白い花びらであった。積もった雪で作る雪兎や雪だるまは貴重な友人であり遊び相手なのだった。ソラは氷や雪でできたものを意のままに動かせる魔法ができこれは秘密であった。
ソラ・マディソン子爵令嬢の容姿は雪の妖精のようであり、プラチナブロンドとバラ色の頬にスミレ色の瞳は宝石のようにきらめき、愛らしい唇は熟れたチェリーのようにみずみずしく赤い。ソラは恵まれた容姿をしながらも両親から愛されない子供であった。ソラの両親は最初から愛し合ってはおらず政略結婚であったし、男子でないソラは家を継ぐ資格がないからである。
そんなソラが恋した相手はスノーホワイト辺境伯家の一人息子ベントレーだった。めでたく婚約者になれたが、ベントレーは王女を娶ってしまうのだった。ソラの恋は悲しく打ち砕かれて・・・・・・
ハッピーエンドで、クズなベントレーよりさらに素敵なダーリンに愛されるヒロイン。気分転換にどうぞ。あまり複雑でなく登場人人物少なめ。おとぎ話風です。ベントレーがゲスなので胸くそ注意。ショートショートの短いお話です。6000文字前後の予定です。異世界中世ヨーロッパ風の魔物がおり魔法ありの世界です。(あくまで予定で変更・追加の可能性あり)
精霊に転生した少女は周りに溺愛される
紅葉
恋愛
ある日親の喧嘩に巻き込まれてしまい、刺されて人生を終わらせてしまった少女がいた 。
それを見た神様は新たな人生を与える
親のことで嫌気を指していた少女は人以外で転生させてくれるようにお願いした。神様はそれを了承して精霊に転生させることにした。
果たしてその少女は新たな精霊としての人生の中で幸せをつかめることができるのか‼️
初めて書いてみました。気に入ってくれると嬉しいです!!ぜひ気楽に感想書いてください!
悩んでいる娘を励ましたら、チアリーダーたちに愛されはじめた
上谷レイジ
恋愛
「他人は他人、自分は自分」を信条として生きている清水優汰は、幼なじみに振り回される日々を過ごしていた。
そんな時、クラスメートの頼みでチアリーディング部の高橋奈津美を励ましたことがきっかけとなり、優汰の毎日は今まで縁がなかったチアリーダーたちに愛される日々へと変わっていく。
※執筆協力、独自設定考案など:九戸政景様
高橋奈津美のキャラクターデザイン原案:アカツキ様(twitterID:aktk511)
※小説家になろう、ノベルアップ+、ハーメルン、カクヨムでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる